消防救助機動部隊 消防救助機動部隊の概要

消防救助機動部隊

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/08 22:04 UTC 版)

東京消防庁 消防救助機動部隊(2015年4月28日、台湾台北市

発足

出初式にて救助活動中

東京消防庁では1969年より各消防署に特別救助隊(通称:レスキュー隊、愛称:東京レスキュー)を設置しホテルニュージャパン火災日本航空機羽田沖墜落事故地下鉄サリン事件など都内の災害、北海道南西沖地震阪神・淡路大震災など国内の大規模災害、国際消防救助隊として海外の災害にも応援出場し現地で救助活動に当たっていた。

しかし、1995年平成7年)1月17日に発生した阪神・淡路大震災では、従来の消防特別救助隊(レスキュー隊)と救助資機材だけでは対応できない状況となった。この教訓を踏まえて、東京消防庁では、1996年(平成8年)12月17日に災害時に機動力を発揮する特別な技術・能力と重機や人命探査装置など高度救助資機材を装備し高度な救出救助能力を持った部隊「消防救助機動部隊(通称:ハイパーレスキュー)」を発足した。当初は第二消防方面本部第八消防方面本部震災対応部隊として設置された[1]

その後、松本サリン事件・地下鉄サリン事件・東海村JCO臨界事故・アメリカの同時多発テロの教訓からNBCテロの発生に備え2002年4月1日第三消防方面本部NBC災害対応部隊、さらに福知山線脱線事故の発生や近年多発する都市型水害へ対応するために2007年4月25日には第六消防方面本部に震災及び大規模水害(水面上の水難救助)対応部隊が発隊した。

さらに、2011年3月11日東北地方太平洋沖地震に伴う東日本大震災及び福島第一原子力発電所事故の対応で都内の部隊が手薄になったことから2013年3月30日第九消防方面本部に新たに福島第一原子力発電所事故のようなNBC災害から首都直下地震のような震災災害まで対応する他、ヘリポートを完備しヘリコプターで被災地投入される部隊が創設された。

2016年1月6日に陸上からでは消火や救助が難しい災害や首都直下地震に対応するために航空隊に空の消防救助機動部隊「航空消防救助機動部隊(通称:エアハイパーレスキュー)」が発隊。都内の東西2カ所に消防ヘリコプター各4機と人員総勢45名で隊員約10名でつくる専門部隊を3班編成して、山岳救助水難救助に対応するほか、新たに救助用のゴンドラや消火装置等を装備して高層建物火での消火と救助、土砂災害や大雪で孤立した地区での救出活動に対応する[2][3]。隊記号はAHR。

2023年4月1日に地域特性を考慮した消防救助機動部隊の再編成に伴いNBC部隊が第九消防方面本部から第八消防方面本部へ配置換え[4]。これに伴い第八本部と第九本部で一部の車両の入れ替えが行われた。

部隊概要

先頭が消防救助機動部隊、真中が国際消防救助隊、最後尾が特別救助隊
  • 大規模災害のみに出動するわけではなく通常は他の救助隊と同様に一般災害に出場して救出救助活動を行っている[5]
  • 都内の救助活動に加えて、国内で大規模災害が発生した際には緊急消防援助隊、海外で大規模災害が発生した際には国際緊急援助隊救助チームの国際消防救助隊(IRT)として派遣する体制を常にとっており、東京消防庁派遣隊員は同部隊中心の人選になる事が多い。
国際消防救助隊(IRT)については当番の消防本部から派遣されるが同部隊のみは常に派遣する体制である[6]
救助に支障をきたす障害物があればコンクリート破砕器作業主任者の有資格者によるコンクリート破砕器を使った爆破まで行う事も可能[9]
  • 隊員は任務によって機動救助隊、機動救急救援隊、機動特科隊、機動科学隊に分けられている。
  • 第八消防方面本部消防救助機動部隊は、立川広域防災基地内に配置されており、航空救助連携隊として同じく所在する東京消防庁航空隊のヘリコプターと連携した救助・救急活動にも対応している[10]。そのために山岳救助に出場する機会も多い。なお、第八本部以外の消防救助機動部隊も全部隊が航空連携降下指定隊及び機動航空連携隊として航空隊のヘリコプターと連携した救助・救急活動にも対応している[11]。2016年には航空隊に空からの救助を専門に行う航空消防救助機動部隊(エアハイパーレスキュー)を創設し、高層建物火災や孤立地域での救助活動に対応する。
  • 第三消防方面本部はNBC災害専門部隊であり隊員のほとんどが化学災害などの資格者であり、第六消防方面本部においては水難救助隊資格者を配置し都市型の大規模水害やスイフトウォーターレスキュー(急流救助)など水面上の水難救助活動も担当している。山岳地域を管轄する第九消防方面本部もスイフトウォーターレスキューを担当している。第八消防方面本部は2023年4月より九本部からNBC部隊の配置換えの形でNBC災害対応部隊となっている。
  • 各隊にJPTECを受講し、特定行為の訓練を受けた救急救命士[11] を配置することで、医療機関に搬送する以前に可能な限り救急処置を行い、傷病者が早期に社会復帰できるよう考慮している[12]。大規模災害時には膨張テントを建てて応急救護所を設置する。
  • 上記のように救助に支障がある障害物に対して重機などによる除去や開拓から、応急救護所を設置して多数の負傷者に応急処置を施すまで一連の流れをすべて行える自己完結型の部隊である。
  • 2004年に発生した新潟県中越地震では、緊急消防援助隊として派遣され、崩落現場において埋没車両から地震発生から92時間後に、生存者(当時2歳の幼児)を救出した。この活躍によりハイパーレスキューは一躍有名になった[13][14]
  • 総務省消防庁は、新潟県中越地震JR福知山線脱線事故などの教訓や、新潟県中越地震での消防救助機動部隊の活躍から、消防救助機動部隊と同様な高度な救出救助能力と装備を持つ部隊が全国的に必要と考え、2006年4月1日に全国の中核市消防本部等に「高度救助隊」を、特別区(東京都が該当)及び政令指定都市消防本部等に「特別高度救助隊」を整備する事を決定した(東京都も設置基準のために消防救助機動部隊は特別高度救助隊の位置付けとなる)。全国版ハイパーレスキュー隊と言える[15]
各消防局は消防救助機動部隊を参考としたためにこれらの部隊には「スーパーレスキュー」や、「ハイパーレスキュー隊」などの通称名が付けられている。名古屋市消防局特別消防隊(名古屋市の特別高度救助隊)、北九州市・広島市・浜松市・岡山市消防局の特別高度救助隊の通称名は消防救助機動部隊と同じ「ハイパーレスキュー」である。
  • 2011年に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う東日本大震災では被害が甚大であった宮城県気仙沼市岩手県陸前高田市などで消火・捜索・救助活動を行ったほか、地元消防本部からの要請で千葉県市原市のコンビナート火災、政府からの要請で福島第一原子力発電所事故で冷却機能が失われた使用済み核燃料プールへの放水活動を行った(ともに最終的に緊急消防援助隊として活動)。派遣撤退後も福島原発に屈折放水塔車や特殊災害対応車、スーパーポンパーなどの車両を東電に寄付している。
  • 東京消防庁の特別救助隊(レスキュー隊)はオレンジ色(橙色)の活動服(救助服)の左肩と救助車にホースと筒先で囲まれたスイスで救助犬として活躍したセントバーナード犬バリー号が描かれた青色の紋章を付けているのに対して、消防救助機動部隊はオレンジ色の(救助服)と救助車には重機を意味するフック付きワイヤーで囲まれたセントバーナードが描かれたゴールドの紋章が付けられている。
ただしNBC災害に対応する第三方面及び第八方面本部(令和5年3月までは九本部)の消防救助機動部隊はオレンジ色の活動服左肩のセントバーナードの紋章は他の消防救助機動部隊と同じであるが、三本部の全車両と八本部のNBC対応車両の紋章は化学防護衣にセントバーナードが描かれた紋章となる。これにより特別救助隊と消防救助機動部隊の見分けがつく[16]
  • 消防救助機動部隊はベテラン隊員が中心に選抜されているために平均年齢が30代半ばと特別救助隊と比べて高い。
  • 航空消防救助機動部隊(エアハイパーレスキュー)の詳細については航空消防救助機動部隊を参照。

  1. ^ 消防救助機動部隊(ハイパーレスキュー)の誕生
  2. ^ エアハイパーレスキュー創設へ 東京消防庁が来年度
  3. ^ 英語しか使えない「英語村」開設、空の「ハイパーレスキュー」創設も 東京都が長期ビジョン策定
  4. ^ 東京消防庁>第八消防方面本部>機動部隊トップページ”. 東京消防庁>第八消防方面本部>機動部隊トップページ (2023年4月1日). 2023年4月1日閲覧。
  5. ^ 機動救助隊
  6. ^ 国際消防救助隊出動体制編成計画PDF(消防本部名や編成は当時のもの)
  7. ^ 機動特科隊
  8. ^ a b 高度な救助資器材
  9. ^ 東京消防庁ハイパーレスキュー隊
  10. ^ 東京消防庁 第八本部 第八本部消防救助機動部隊 - ヘリコプターとの連携
  11. ^ a b 東京消防庁救急業務懇話会答申書 - 東京都
  12. ^ 救助のスペシャリストで編成。ハイパーレスキュー徹底分析!
  13. ^ 東京消防庁消防救助機動部隊(ハイパーレスキュー)について
  14. ^ 魂の仕事人 消防救助機動部隊隊長 宮元隆雄
  15. ^ 2 高度な救助体制の全国的整備
  16. ^ 災害防除
  17. ^ 東京消防庁 広報とうきょう消防(第8号)
  18. ^ 第二消防方面本部消防救助機動部隊 機動救助隊
  19. ^ 6HR 機動救助隊
  20. ^ 第二消防方面本部消防救助機動部隊 機動救急救援隊
  21. ^ 6HR 機動救急救援隊
  22. ^ 第二消防方面本部消防救助機動部隊 機動特科隊
  23. ^ 6HR 機動特科隊
  24. ^ 機動科学隊
  25. ^ 機動科学隊
  26. ^ 緊急消防援助隊の主な活動状況
  27. ^ 特集 緊急消防援助隊と国民保護法制-国家的視野に立った消防の新たな構築
  28. ^ 東日本大震災関連情報一覧
  29. ^ 過去の国際緊急援助活動実績






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