比留木忠治
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/27 20:10 UTC 版)
ひるき ちゅうじ 比留木 忠治 | |
---|---|
生誕 |
1931年 長崎県南松浦郡 |
死没 | 2021年11月15日 |
居住 |
日本 カナダ |
研究分野 | 生物学 |
研究機関 |
日本専売公社 アルバータ大学 |
出身校 | 九州大学農学部卒業 |
主な業績 |
無病種子ジャガイモ 生産システムの構築に成功 特異的に発生する 牧草ウイルスの発見 |
主な受賞歴 |
日本植物病理学会賞(1990年) 長崎新聞文化賞(2005年) 在カルガリー総領事表彰(2017年) 瑞宝小綬章(2018年) |
プロジェクト:人物伝 |
日本専売公社秦野たばこ試験場での勤務を経て、アルバータ大学農生命環境学部教授、アルバータ大学マッカラ研究教授、アルバータ大学特別全学教授、International Society for Plant Pathology会計役などを歴任した。
概要
長崎県出身の生物学者である[2]。無病種子ジャガイモの生産システムの構築や[3]、牧草ウイルスの新発見といった業績で知られている[3]。長年に渡ってカナダのアルバータ大学で教鞭を執るなど[3]、後進の育成に力を注いだ。のちにカナダ王立協会の会員にも選出されている[3][4]。国際植物病理学会においては会計役を務めるなど[5][6]、執行部の一員として活動した[5][6]。また、長崎県五島市の名産であるツバキの国際的な普及に力を注いでおり[3]、五島の椿と自然を守る会の理事長や[3]、国際ツバキ協会の副会長などを歴任した[2][7]。五島市への国際ツバキ会議の誘致に尽力したことでも知られている。
来歴
生い立ち
1931年生まれ[8]、長崎県南松浦郡出身[2][註釈 1]。九州大学に進学し[2]、農学部にて学んだ[2]。この頃はタバコモザイクウイルスの研究に従事しており、のちに博士論文「タバコモザイクウイルスの系統および変異に関する研究」[9]を執筆し、1963年3月18日に農学博士の学位を取得した[9]。
研究者として
日本専売公社に採用され、秦野たばこ試験場にて勤務した。
その後、カナダに渡航し、アルバータ州エドモントン市に所在するアルバータ大学にて教鞭を執ることになった[3]。1966年から1996年にかけてアルバータ大学で教授を務め[3]、後進の育成に力を注いだ。なお、学内では農生命環境学部に所属した。その間の業績を讃え、アルバータ大学よりアーサー・マッカラの名を冠した「マッカラ研究教授」の呼称が与えられた[3][10]。1991年には、アルバータ大学より「特別全学教授」の呼称が与えられた[3]。なお、1990年にはカナダの国立科学アカデミーである「カナダ王立協会」の会員に選出されている[3][4]。のちにアルバータ大学を退職する際には、アルバータ大学より名誉教授の称号が贈られた[2][3][11]。
アルバータ大学退職後は日本に戻り[3]、特定非営利活動法人である「五島の椿と自然を守る会」の理事長を務めるなど[3]、精力的に活動している。
研究
専門は生物学であり、特に植物病理学に関する研究に従事した[3]。具体的には、無病種子ジャガイモの生産システムの構築に取り組んだ[3]。この業績が評価され、アルバータ科学技術リーダーシップ賞を受賞している[3]。また、研究を通じて、新たな牧草ウイルスを発見している[3]。この業績が評価され、国際植物病理学会グランプリを受賞している[3]。そのほか、ウロイドに着目してその研究に取り組むとともに[12]、ファイトプラズマの同定や診断に取り組んだ[12]。比留木らにより命名されたファイトプラズマのカンディダートゥスとしては、「Candidatus Phytoplasma japonicum」[13]や「Candidatus Phytoplasma trifolii」[13]が挙げられる。これら一連の「植物ウイルス・ウロイド及びMLOの同定と診断に関する研究」[12]が評価され、1990年度の日本植物病理学会賞を受賞している[12]。
さらに、故郷である長崎県五島市の名産がツバキであることから[3]、ツバキによる地域おこしや日本国外へのツバキの普及に力を注いだ[2][3]。国際ツバキ協会においては、副会長など要職を歴任した[2][7]。五島市への国際ツバキ会議の誘致にも尽力した。加えて、五島市椿園が「国際優秀椿園」として認定されるよう尽力するなど[2]、地域活性化に力を尽くした。これらの活動が評価され、2005年に長崎新聞文化賞を受賞している[2]。また、2017年には在外公館である在カルガリー総領事館の長である在カルガリー総領事より在外公館長表彰を受けている[3]。
学術団体においては、2009年に日本植物病理学会より「永年会員」の称号を授与されている[14]。また、国際植物病理学会においては長年にわたって執行部の一員に名を連ねており[5][6]、1998年から2003年にかけて会計役を務め[5]、会長のピーター・スコットらを支えた[5]。2003年から2008年にかけて再び会計役を務め[6][15]、会長のリチャード・ファルーンらを支えた[6]。2008年に新会長のロドヴィカ・グリノらによる執行部が発足すると[16]、それに伴い会計役を退任することになり、後任のトーマス・エヴァンスに引き継いだ[15]。
註釈
出典
- ^ “Chuji Hiruki”. 2021年12月1日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k 「講演者紹介」『環境省_西海国立公園_ニュース&トピックス_自然公園法制定50周年記念行事 「五島の椿の観察会」開催のお知らせ』九州地方環境事務所。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z 「比留木忠治・元アルバータ大教授に対する在外公館長表彰」『比留木忠治・元アルバータ大教授に対する在外公館長表彰 : 在カルガリー日本国総領事館』在カルガリー日本国総領事館、2017年7月31日。
- ^ a b c "Fellows of the Royal Society of Canada", Fellows of the Royal Society of Canada - University of Alberta, University of Alberta.
- ^ a b c d e f "ISPP Executive Committee (1998 - 2003)", ISPP, International Society for Plant Pathology.
- ^ a b c d e "ISPP Executive Committee (2003 - 2008)", ISPP, International Society for Plant Pathology.
- ^ a b "ICS officers", ICS Officers, International Camellia Society.
- ^ a b 「比留木, 忠治」『比留木, 忠治 - Web NDL Authorities (国立国会図書館典拠データ検索・提供サービス)』国立国会図書館。
- ^ a b 「書誌事項」『CiNii 博士論文 - タバコモザイクウイルスの系統および変異に関する研究』国立情報学研究所。
- ^ "McCalla Professorships", McCalla Professorships - Centre for Teaching and Learning, University of Alberta.
- ^ "Chuji Hiruki", Chuji Hiruki - Faculty of Agricultural, Life & Environmental Sciences, University of Alberta.
- ^ a b c d e 「学会賞一覧」『Phytopathological Society of Japan :: 授賞』日本植物病理学会。
- ^ a b "Names of Plant Pathogenic Bacteria, 1864-2004 -- 'Candidatus' Plant Pathogenic Bacteria", ISPPweb Plant Pathology Online, International Society for Plant Pathology.
- ^ a b 「永年会員一覧」『Phytopathological Society of Japan :: 功績者』日本植物病理学会。
- ^ a b "ISPP Executive and Secretariat 2003-2008 and 2008-2013", ISPP, International Society for Plant Pathology.
- ^ "ISPP Executive Committee 2008 - 2013", ISPP, International Society for Plant Pathology.
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