日本の政治 立法

日本の政治

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/25 09:02 UTC 版)

立法

日本国憲法は、国会を「国権の最高機関」であり「国の唯一の立法機関」と定める。国会は、衆議院参議院からなる(二院制)。いずれも国民から直接選挙され、全国民を代表する国会議員で構成される。衆議院議員と参議院議員を兼ねることはできない。

国会議員

衆議院議員の任期は4年だが、衆議院が解散された場合には任期前に資格を失う。衆議院解散は内閣が決定し、天皇が行う。衆議院解散の実質的決定権については論争はあるが[6]、今日、内閣は天皇の国事行為に助言と承認を行う立場(日本国憲法第7条)にあることから、実務上、天皇の国事行為に責任を負う内閣が実質的決定権を有するとされる[7]内閣不信任決議が可決されて10日間に内閣総辞職をしない場合は衆議院解散をしなければならないが(日本国憲法第69条)、それ以外でも内閣は憲法7条に基づいてその裁量により衆議院を解散できると解されている。なお、衆議院解散の実質的決定権という点については学説に争いがあるものの、少なくとも衆議院解散の形式的宣示権は憲法上天皇にあり(日本国憲法第7条3号)[8]、今日、解散詔書の文言については日本国憲法第69条により内閣不信任決議が可決あるいは内閣信任決議が否決された場合か否かを問わず「日本国憲法第七条により、衆議院を解散する。」との表現が確立している。これは衆議院解散は詔書をもって行われるが、詔書の直接の根拠は日本国憲法第7条にあり、また、この文言は解散の理由を問わないため、一般的には、いかなる場合の衆議院解散についても適用しうるものと解されているためである[9][10]。詳細については衆議院解散を参照。

衆議院の解散または衆議院議員の任期満了に伴う選挙を、すべての議員が選ばれるため「総選挙」という。参議院議員の任期は6年で、3年ごとに半数が改選される。参議院議員の任期満了に伴う選挙を通常選挙という。

衆議院の総選挙は小選挙区制比例代表制(拘束名簿式)からなる小選挙区比例代表並立制が採用され、参議院の通常選挙は選挙区制(大選挙区制中選挙区制)と比例代表制(非拘束名簿式)が併用されている。定数は、衆議院が465(小選挙区選出議員289、比例代表選出議員176)、参議院が242(選挙区選出議員146、比例代表選出議員96)[11][11]

国会の種類・会期

国会は毎年1回の召集が義務づけられており、これを常会(通常国会)という。また、内閣が自ら、あるいは一定数の国会議員の要求により、内閣が臨時に国会の召集を決定することもでき、これを臨時会(臨時国会)という。1992年(平成4年)以降は例年1月に常会が召集され、9月頃に臨時会が召集される。衆議院議員総選挙後には特別会(特別国会)が召集され、内閣総理大臣を指名する。

国会は会期制が採られており、会期不継続の原則と一事不再議の原則が定められている。会期不継続の原則とは、会期独立の原則ともいわれ、継続審議の議決がなされない限り、会期中に議決に至らなかった議案は廃案(消滅)となる原則である。一事不再議の原則とは、一度議決された議案は、同一会期中に再度提出できないという原則である。

常会の会期は150日間で、延長は1回のみ可能。臨時会と特別会の会期はその都度両院一致の議決で定め、延長は2回まで可能。会期の決定及び延長については衆議院の優越が認められ、衆参の議決が不一致の場合及び参議院が議決をしない場合は衆議院の議決による。

立法過程

法律案(法案)は、各々の国会議員、および内閣により提出される。国会議員から提出された法案を議員立法あるいは衆法(衆議院議員が提出した法案)・参法(参議院議員が提出した法案)といい、内閣から提出された法案を内閣提出法案(政府提出法案)あるいは閣法という。現在、1会期における提出法案のうち、おおむね30%が議員立法で、70%が内閣提出法案となっている。成立率(提出された法案のうち成立したものの割合)は、議員立法が20%程度で、内閣提出法案は80%以上。したがって、成立する法律のほとんどは内閣が提出したものである。これは、国会から内閣総理大臣を選出し、その内閣総理大臣が内閣を組む議院内閣制を採っていることの帰結である。内閣総理大臣を輩出する与党と内閣は、協働して内閣提出法案の成立に努める。

内閣提出法案の成立過程

  1. 内閣提出法案の原案は、それを所管する各省庁が「第一次案」を作成し、関係省庁や与党との意見調整、審議会への諮問、公聴会での意見聴取などが行われる。
  2. 法律案提出の見通しがつくと、主管官庁は法文化作業を行い、法律案の「原案」を作成する。
  3. 主管官庁で法律案の原案ができると、原案は内閣法制局の予備審査を受ける。内閣法制局では、憲法や他の法令との整合性、法文の配列や用語などについて審査する。
  4. 予備審査が終わると、主任の国務大臣から内閣総理大臣に対し、国会提出について閣議請議の手続を行う。閣議請議の窓口である内閣官房は、受け付けた「請議案」を内閣法制局に送付する。内閣法制局は最終的な審査を行い、必要に応じて修正し、内閣官房に回付する。
  5. 閣議請議された請議案は、閣議において、内閣法制局長官からその概要の説明が行われる。異議なく閣議決定されると、正式な「法律案」となる。この法律案は、内閣総理大臣から国会(衆議院または参議院)に提出される。

議員立法の成立過程

  1. 議員は、法律案の策定にあたって、公設秘書・私設秘書、政策担当秘書議院法制局国立国会図書館の職員、関係省庁や地方公共団体の職員、その他のブレーン、民間企業や団体、一般国民など、多くのスタッフと協議する。特に、議院法制局は、立法技術の専門的な見地から、憲法や他の法令との整合性調査、法律案要綱の作成、法律案の条文化などを行い、法律案の局内審査と法制局長決裁を行う。
  2. 議院法制局の審査を経た法律案は、依頼者である議員に手交され、所属政党内の法案審査手続きにかけられる。
  3. 議員が議案を発議するには、衆議院においては議員20人以上、参議院においては議員10人以上の賛成を要する。ただし、予算を伴う法律案を発議するには、衆議院においては議員50人以上、参議院においては議員20人以上の賛成を要する。
  4. 議院法制局の審査を経て、所定の賛成者をそろえた法律案は、議長に提出される。

国会に提出された法律案の過程

  1. 提出された法律案は、提出された議院(先議の議院)の議長により、適当な委員会に付託される。
  2. 法律案を付託された委員会では、まず、主任の国務大臣が法律案の提案理由説明を行い、審査に入る。審査は、議員から国務大臣・副大臣・大臣政務官その他の公務員などに対し、法律案に関する質疑応答の形式で行われる。委員会での質疑、討論が終局したときには、委員長が終局を宣言し、表決に付す。
  3. 委員会における法律案の審査が終了した後、法律案の審議は本会議に移される。本会議では、法律案を付託された委員長から委員会での審査について報告が行われる。必要に応じて討論として、法律案に反対の立場からの演説、賛成の立場からの演説が行われる。討論の後、議長から委員会表決の結果報告が告知され、採決に入る。
  4. 本会議で法律案が可決されると、議長から他の議院に法律案が送付される。送付を受けた議院においても、委員会の審査、本会議の審議を経て、採決が行われる。
  5. 法律案は、憲法に特別の定めのある場合(地方自治特別法など)を除き、衆議院および参議院の両議院で可決したとき「法律」となる(日本国憲法第59条1項)。
  6. 法律が成立したときは、後議の議院の議長から、内閣を経由して天皇に奏上される。奏上された案文は天皇が決裁(自筆の署名をし、御璽を押印)し、内閣に戻される。
  7. 法律は、奏上された日から30日以内に公布されなければならない。法律の公布に当たっては、主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署する。法律は官報に掲載することで公布される。
  8. 公布された法律は、附則に定められた日に施行される。施行日は、「公布の日から起算して○年を超えない範囲内において政令で定める日」と附則に定めることもできる。

注釈

  1. ^ [1] 民主主義指数はエコノミスト誌系列の調査研究所エコノミスト・インテリジェンス・ユニットが発表している。2020年版において日本は10点満点のうち8.13と数値化され、「完全な民主主義」の下層に位置づけられている。

出典

  1. ^ CPI 2015 table”. Transparency International. 2016年1月28日閲覧。[リンク切れ]
  2. ^ Democracy Index 2022 – Economist Intelligence Unit”. EIU.com. 2023年2月4日閲覧。
  3. ^ 田中浩 2016, p. 「元首」.
  4. ^ 芦部信喜 2016, p. 47.
  5. ^ 長野和夫 2006, p. 170.
  6. ^ 佐藤幸治編 『要説コンメンタール 日本国憲法』 三省堂、1991年、58-59頁
  7. ^ 松澤浩一著 『議会法』 ぎょうせい、1987年、341頁
  8. ^ 佐藤幸治編 『要説コンメンタール 日本国憲法』 三省堂、1991年、58頁
  9. ^ 浅野一郎・河野久著 『新・国会事典―用語による国会法解説』 有斐閣、2003年、35頁
  10. ^ 芦部信喜編 『演習憲法』 青林書院、1984年、513-514頁
  11. ^ a b 総務省|選挙の種類”. 総務省. 2023年3月25日閲覧。
  12. ^ Net Official Development Assistance In 2004 (PDF, 32.9 KiB) [リンク切れ], Organisation for Economic Co-operation and Development, 11 April 2005. Retrieved 14 May 2006.






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