志摩町御座 歴史

志摩町御座

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/18 23:58 UTC 版)

歴史

近世まで

縄文時代弥生時代遺跡が各地で発見され、地蔵遺跡からはシカの角でできた小刀や刀装が出土している[13]。『神宮雑例集』には、「胡座」として記録が残る。ただし、これ以外に「胡座」に関する記述は残っておらず、詳しいことは分からない[14]文和4年8月(ユリウス暦:1355年9月)の『二見御厨村主末継言上書』には「御坐清厚氏女」の字が見える[2]。「城山」と呼ばれる地域には御座源四郎が居城を構えていたと伝わる[14]

江戸時代には御座村として志摩国英虞郡鵜方組に属し、鳥羽藩の配下にあった[14]。村高は185石余だった[14]初鰹を献上していたほか、代銀を受け取って鰹節エビサザエなども納めていた[13]廻船や御城米積船の破損時の救助の任を負い、鳥羽藩主の内藤忠政参勤交代する際に船を出していた[13]。当時の御座村に掲げられたキリシタン制札が残されており[13]、志摩市指定有形文化財として志摩市歴史民俗資料館が保管している[15]

近代以降

ござむら
御座村
廃止日 1954年12月1日
廃止理由 新設合併
御座村和具町布施田村片田村越賀村志摩町
現在の自治体 志摩市
廃止時点のデータ
日本
地方 東海地方近畿地方
都道府県 三重県
志摩郡
市町村コード なし(導入前に廃止)
面積 2.75 km2
総人口 1,213
(『志摩町史』、1953年)
隣接自治体 志摩郡越賀村
御座村役場
所在地 三重県志摩郡御座村
座標 北緯34度16分32.3秒 東経136度45分55.3秒 / 北緯34.275639度 東経136.765361度 / 34.275639; 136.765361 (御座村)
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町村制が施行されると、御座村は単独で村制を敷き、昭和の大合併・平成の大合併を経て、現在まで大字として存続している[14]1885年(明治18年)、福地復一は御座村を訪れ、そこで見聞した地域の風習について『東京人類學會報告第2巻』に書き留めている。福地は「住民ノ生業風俗ハ頗ル奇異ニシテ人類學研究ノ材料トモナルベキモノ」として、海女がイソオケ(磯桶)と呼ばれるをもって潜水し、石花菜(テングサ)や鹿角菜(フノリ)、和布(ワカメ)、鰒(アワビ)を採取していると記している[16]。更に、赤ちゃんを育てることは、海女として一家を支える女性にとって負担となるので、家族の半数は他の地方から10歳前後の子を養子として迎えている[注 1]ことや、女性が戸主であるため女性の権利が強く、夫に服従することなく、夫は忙しいに代わって炊事・掃除・洗濯を行うとも報告している[17]

1935年(昭和10年)の国勢調査によれば男性100人に対する女性の人口は123人で、漁業地理学者の青野壽郎は「海女といふ職業が、女子を郷土に定住せしめる有力な経済的要因となつてゐることに基く結果の人口現象であると解せられる。」と分析した[18]1945年(昭和20年)4月7日に御座村は空襲を受け、被害者は対岸の浜島にあった浜島町立診療所へ運ばれ、多くの人命が救われたという[19]

1950年(昭和25年)の統計では、漁業人口は農業人口をわずかに上回る程度であった[7]。その2年後の1952年(昭和27年)には農業人口が25%の大幅な減少を示した[20]1967年(昭和42年)、御座と浜島を結ぶ奥志摩フェリーが開設され、自動車を利用した英虞湾の周遊ルートが完成した[21][注 2]1968年(昭和43年)2月、近畿日本鉄道海水浴客を誘致することで鉄道旅客の増加を図るべく、伊勢志摩国立公園協会に遊泳可能な海浜を持つ地域に民宿を開設するよう要請、鳥羽市相差町、阿児町国府と並び、御座が候補地として選ばれ、5軒の民宿が開かれた[22]

2010年(平成22年)2月27日に発生したチリ地震では、津波によって潮流が速くなり、水産物に被害が発生した[23]

沿革

地名の由来

御座とは「爪切不動尊のいらっしゃるところ」の意味であると考えられる[24]。また爪切不動尊の祭事を司る役人が5人であったことから五座→御座となった、爪切不動尊の縁日に出店するの権利が5つあったことから五座→御座となったとの説も提示されている[25]


注釈

  1. ^ 福地は、海女が自ら子を出産し、養育するときは乳児浜辺に残して潜水し、乳児は波に洗われながら野性的に育ち、海女は海から戻ると子に授乳していると書いている[17]
  2. ^ 奥志摩フェリーは1989年(平成元年)に運行を休止し[WEB 6]、2012年現在は自動車の積載ができない渡船が運航されている。

WEB

  1. ^ a b 志摩市の人口について”. 志摩市 (2019年7月31日). 2019年8月28日閲覧。
  2. ^ a b 志摩町御座の郵便番号”. 日本郵便. 2019年8月15日閲覧。
  3. ^ 市外局番の一覧”. 総務省. 2019年6月24日閲覧。
  4. ^ a b 大口秀和. “2014年1月1日 京路山(きょうろうざん)”. 志摩市. 2014年1月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年1月8日閲覧。
  5. ^ 歌詞検索j-lyric.net"鳥羽一郎 志摩半島 歌詞"(2014年1月8日閲覧。)
  6. ^ a b 英虞湾自然再生協議会"英虞湾年表"<ウェブ魚拓>志摩市農林水産部里海推進室(2012年11月11日閲覧。)
  7. ^ a b 平成17年国勢調査の調査結果(e-Stat) - 男女別人口及び世帯数 -町丁・字等”. 総務省統計局 (2014年6月27日). 2019年8月16日閲覧。
  8. ^ a b 平成22年国勢調査の調査結果(e-Stat) - 男女別人口及び世帯数 -町丁・字等”. 総務省統計局 (2012年1月20日). 2019年8月16日閲覧。
  9. ^ a b 平成27年国勢調査の調査結果(e-Stat) - 男女別人口及び世帯数 -町丁・字等”. 総務省統計局 (2017年1月27日). 2019年8月16日閲覧。
  10. ^ 学校通学区”. 志摩市. 2019年8月28日閲覧。
  11. ^ 学校通学区”. 志摩市教育委員会事務局学校人権教育課. 2014年3月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年8月6日閲覧。
  12. ^ a b c 三重県農林水産部水産基盤整備課"御座漁港"(2012年11月11日閲覧。)
  13. ^ 志摩マリンレジャー"あご湾定期船"(2012年11月11日閲覧。)
  14. ^ 浜島〜御座〜賢島定期航路(浜島航路)の廃止について』(PDF)(プレスリリース)志摩マリンレジャー、2021年3月26日。 オリジナルの2021年3月27日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20210327051325/https://shima-marineleisure.com/manage/wp-content/uploads/2021/03/news-release.pdf2021年3月27日閲覧 
  15. ^ 郵便番号簿 2018年度版” (PDF). 日本郵便. 2019年6月10日閲覧。

出典・文献

  1. ^ a b 志摩町役場企画課(2004):95ページ
  2. ^ a b c d e 志摩町史編纂委員会編 2004, p. 249.
  3. ^ a b c d 志摩町役場企画課(2004):68ページ
  4. ^ a b c d e f g h 「角川日本地名大辞典」編纂委員会 1983, p. 1422.
  5. ^ 南川(1990):70ページ
  6. ^ 吉川(1949):218ページ
  7. ^ a b 大島(1955):106ページ
  8. ^ 村松(1943):420ページ
  9. ^ 大喜多(1973):350ページ
  10. ^ a b c d 「角川日本地名大辞典」編纂委員会 1983, p. 455.
  11. ^ 西城(2012):16ページ
  12. ^ a b 「角川日本地名大辞典」編纂委員会 1983, p. 511.
  13. ^ a b c d 平凡社地方資料センター 1983, p. 700.
  14. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 「角川日本地名大辞典」編纂委員会 1983, p. 490.
  15. ^ 議会広報特別委員会 編 2019, p. 14.
  16. ^ 服地(1886):16ページ
  17. ^ a b 服地(1886):17ページ
  18. ^ 青野(1936):32ページ
  19. ^ 浜島町史編さん委員会 編(1989):670ページ
  20. ^ 大島(1955):107ページ
  21. ^ 淡野(1986):15ページ
  22. ^ 淡野(1985):26ページ
  23. ^ 今井ほか(2010):1351, 1355ページ
  24. ^ 中村精貮 1951, p. 50.
  25. ^ 中村精貮 1951, p. 51.
  26. ^ a b c d 志摩町役場企画課(2004):96ページ
  27. ^ 三重県教育委員会(2014):21ページ
  28. ^ 山田(1956):525ページ
  29. ^ 森ほか(2006):454ページ
  30. ^ 志摩町史編纂委員会編 2004, p. 249-250.
  31. ^ 「角川日本地名大辞典」編纂委員会 1983, p. 491.
  32. ^ ワークス 編(1997):101ページ
  33. ^ a b 講談社MOOK 2011, p. 61.





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