山岸凉子 山岸凉子の概要

山岸凉子

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/27 01:46 UTC 版)

山岸 凉子
生誕 (1947-09-24) 1947年9月24日(76歳)
日本北海道
職業 漫画家
ジャンル 主に 少女漫画
代表作アラベスク
天人唐草
日出処の天子
妖精王
舞姫 テレプシコーラ
『レベレーション(啓示)』
受賞 講談社漫画賞
手塚治虫文化賞マンガ大賞
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1969年、「レフトアンドライト」でデビュー。1971年から連載されたバレエ漫画『アラベスク』で注目され、1980年から連載された『日出処の天子』は1983年度第7回講談社漫画賞を受賞した。1977年から連載された『妖精王』は1988年にアニメ化。2000年から『舞姫 テレプシコーラ』の連載を開始し、同作で2007年度第11回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞した。

来歴

北海道上砂川町出身の両親の元に生まれる[2]。2歳上の兄と、1歳下の妹がいる[1]三井鉱山の社員であった父親の転勤に伴い、2歳で函館、小学校3年生で小樽、中学2年生で札幌に転居する[3]。札幌に転居後、母親が大病を患い入院する[4]

市立札幌旭丘高校2年生のとき、妹がたまたま買ってきた漫画雑誌に掲載されていた里中満智子のデビュー作をみて、自分と同じ年齢の人がデビューしていることに衝撃を受け漫画家を志す[5]。高校3年生のときに母親が死去する[6]

1968年3月、北海道女子短期大学美術科を卒業、4月からアルバイトを始め、貯めたお金で東京に行き原稿をもって出版社を回る[7]。最後に持ち込んだ『りぼん』編集部の目にとまり、『りぼんコミック』1969年5月号掲載の「レフトアンドライト」でデビューする[8]。1969年10月、上京し、杉並区下井草四畳半のアパートに入居する[9]。お風呂がなかったため、一駅隣りの鷺ノ宮に住んでいた同郷の大和和紀忠津陽子と連絡を取り合って一緒に銭湯へ行っていたという[10]。そこで一年少々過ごしたのち、阿佐谷の新築アパートに転居、上京してきた妹も同居するようになった[11]

1971年からりぼんにて連載開始された『アラベスク』は、少女漫画界初の本格バレエ漫画として人気を得た。1972年秋には萩尾望都竹宮惠子らと長期の海外旅行に出かけ、ソ連で本場のバレエを鑑賞してきた[12]

1974年から花とゆめに場を移して描かれた『アラベスク』第二部では、華麗なイラスト的表現を、また、少女である主人公が大人の女性へと成長する様子を描くなど、当時は前人未到であった手法やテーマを積極的に開拓していった。

妹が婚約したことにより同居生活を解消し、その後、千葉県の我孫子ひばりが丘と転居、原稿締め切り前の追い込みではアシスタントが8人ほど来て騒がしくなるためアパート住まいでは限界を感じ、1979年国分寺に2階建ての一軒家を新築する[13]

1980年、『LaLa』で代表作『日出処の天子』を連載開始する。主人公である聖徳太子が超能力及び霊能力者であり、また生育環境が原因の同性愛者であるという設定は当時センセーションを巻き起こした。1983年度第7回講談社漫画賞を受賞した。

2000年ダ・ヴィンチにて『アラベスク』から約30年ぶりとなるバレエ漫画『舞姫 テレプシコーラ』の連載を開始する。同作で2007年度第11回手塚治虫文化賞マンガ大賞受賞。2011年をもって連載終了した。

2011年ダ・ヴィンチにて『ケサラン・パサラン』の連載を開始、2012年10月号で終了した。2014年に『モーニング』にて、百年戦争を題材としたジャンヌ・ダルクを主人公とした『レベレーション(啓示)』の隔月連載を開始し、2020年10月に完結した。

2016年弥生美術館にて展覧会「山岸凉子展 「光 -てらす-」 ―メタモルフォーゼの世界―」が開催された[14]。翌年には京都国際マンガミュージアムでも開催された[15]2019年には生まれてから2歳まで過ごした北海道上砂川町でトークショーを開催した[16]

漫画の電子書籍版は発売されていなかったが、2021年10月4日にKADOKAWAと講談社から初めて発売されることになった[17]

作風

  • 幼い頃からオーブリー・ビアズリーの絵を好み、ビアズリーのように細くはっきりと描けたらと思っていたという。
  • 漫画はほとんど読んでいなかったが、高校2年の頃に白土三平の「カムイ伝」に影響を受け、漫画家になろうと決意する。白土の作品姿勢と美しいシャープな描線を目標にして漫画家になれるまでの苦しい4年間を頑張り抜いた。[18]
  • デビューから数作は編集部の意向で丸顔の可愛い絵柄であったが、1971年発表の「雨とコスモス」でがらっと変更したところ「野獣のような顔」と非常に不評であった[19]水野英子は山岸との対談において、山岸の描く細い線は衝撃的であったと言い、「漫画史的に言うと、あれで手塚タッチから解放された」と述べている[20]
  • 登場人物のセリフを納めるいわゆるふきだしを四角く独特のスタイルで描いている事も特徴的だが、当初は一般的な楕円タイプを用いていた。変えた理由は、文字数を見誤る事が多かったのが、四角にしたところ写植がスムーズに入り、具合がいいためにそうなったと語っている[21]
  • ホラー作品を数多く手がけ、クオリティの高さとその恐ろしさには定評がある。また、霊感モチーフを採り入れて運命や業の深さを追及する作品も多い。
  • 造詣の深いギリシア神話の登場人物やストーリーをモチーフとして採り入れた作品が多いことから、安彦良和監督によるギリシア神話世界を舞台にしたアニメーション映画『アリオン』(1986年)では、安彦の依頼を受けオリンポスの神々の衣装デザインとキャラクターデザインの一部[注釈 1]を手がけた。
  • 1972年の『ゲッシング・ゲーム』は、少女漫画雑誌初の男性同性愛の話である。

注釈

  1. ^ 「ガイア」(アリオン内の登場人物の項を参照のこと)を担当。
  2. ^ a b c d 創刊号
  3. ^ 1975年1月より月2回刊

出典

  1. ^ a b 「家」の履歴書 2022, p. 97.
  2. ^ 自信のなさや心の傷が作品を描かせてくれた──山岸凉子が“最初で最後の”トークショーで語ったこと”. 文春オンライン (2020年2月16日). 2023年1月7日閲覧。
  3. ^ 「家」の履歴書 2022, p. 97-98.
  4. ^ 「家」の履歴書 2022, p. 98.
  5. ^ 「家」の履歴書 2022, p. 102-103.
  6. ^ 「家」の履歴書 2022, p. 100.
  7. ^ 「家」の履歴書 2022, p. 103.
  8. ^ 「家」の履歴書 2022, p. 103-104.
  9. ^ 「家」の履歴書 2022, p. 104.
  10. ^ 「家」の履歴書 2022, p. 104-105.
  11. ^ 「家」の履歴書 2022, p. 105.
  12. ^ 「家」の履歴書 2022, p. 106.
  13. ^ 「家」の履歴書 2022, p. 106-107.
  14. ^ 山岸凉子展 「光 -てらす-」 ―メタモルフォーゼの世界―”. 弥生美術館・竹久夢二美術館. 2021年9月25日閲覧。
  15. ^ 山岸凉子展「光-てらす-」-メタモルフォーゼの世界-”. 京都国際マンガミュージアム. 2021年9月25日閲覧。
  16. ^ 【画業50周年記念】 山岸凉子初のトークショーが、いよいよ今週末10/6(日)開催。故郷・北海道上砂川町の体育センターにて。”. モーニング (2019年10月4日). 2023年1月11日閲覧。
  17. ^ 山岸凉子作品ついに電子書籍解禁!! 伝説的傑作『日出処の天子』や最新連載作ほか10/4発売、9/17より予約開始!”. ダ・ヴィンチweb (2021年9月19日). 2023年1月11日閲覧。
  18. ^ 「コミック'94 春号」 - わが心のまんが山岸凉子が心の師と仰ぐ白土三平の『カムイ伝』
  19. ^ 『Otome continue Vol.6』(太田出版、2011年、ISBN 978-4778312596)萩尾望都との対談
  20. ^ 『舞姫 テレプシコーラ』第4巻、メディア・ファクトリー、2003年、ISBN 978-4840104913、198頁
  21. ^ 『だっくす』1978年9,10月号 特集 山岸凉子 「とりとめもなくささやかに少女マンガを語ること 山岸凉子 樹村みのり ささやななえ」参考。
  22. ^ a b 北海道新聞、2010年9月23日朝刊1面「北海道ひと紀行 - ヒットメーカー」
  23. ^ 山岸凉子、有吉京子さん 30年ぶりバレエ漫画:本よみうり堂:YOMIURI ONLINE - ウェイバックマシン(2006年2月12日アーカイブ分)
  24. ^ 「恐怖の甘い物一家」より


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