国際協同組合同盟
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/12 18:03 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動世界105ヶ国[13]から、農業、消費者、信用、保険、保健、漁業、林業、労働者、旅行、住宅、エネルギーなどさまざまな協同組合[1][2][14]の全国組織301組織が加盟しており[13]、傘下協同組合の組合員総数は10億人を超える[1][13]。また、国際連合のグレードAのオブザーバーとなっており[15]、経済社会理事会をはじめ[1][15][16]、FAO・ILO・UNIDO・UNCTAD・ユニセフ・ユネスコで議案提案権のある一般カテゴリーの諮問機関である[17]。
組織
2年に1度開催される総会が最高議決機関であり、特に必要な場合には大会が開催される[18]。総会では、各会員組織から1名ずつ(ただし1国の代議員数は全体の15%を超えてはならないとされている)の代議員が参加し、前回総会からの活動報告の承認、次回総会までの方針や事業計画の決定、理事の選出などを行う[6]。日常的な業務は会長以下16名の理事会が担い[9]、専務理事が責任者として本部事務所に常駐する体制を採っている[19][20]。また、分野別の9つの専門機関と課題別の4つの専門委員会を設置している[21]。
さらに、専務理事の下、世界を4つの地域に分けてそれぞれ地域事務局を置き[20]、総会が開催されない年には地域総会が開催されている[9]。地域事務局には、それぞれ事務局長が配置され、地域協議会が支援・助言している[20]。
- 地域事務局
- 専門機関
- 国際農業協同組合機構(ICAO)
- 国際漁業協同組合連合(ICFO)
- 国際協同組合保険連合(ICMIF)
- 国際保健協同組合機構(IHCO)
- 国際協同組合銀行連盟(ICBA)
- 国際協同組合住宅機構(ICA Housing)
- 国際労働者生産協同組合連合(CICOPA)
- グローバル生活協同組合委員会(CCW)
- 国際旅行協同組合(TICA)
- 専門委員会
- 男女共同参画委員会
- 人的資源開発委員会
- 調査委員会
- コミュニケーション委員会
活動
原則の制定と改訂
設立以来、国際協同組合同盟の主たる活動は、「協同組合とは何か(ある組織を協同組合と呼べるかどうかの判断基準は何か)」を明確にする協同組合原則を制定し、時代に即して改訂することであった[22][23]。1921年の第10回バーゼル大会でロッチデール原則が定式化され[24][25]、それを現代的に見直す形で1937年の第15回パリ大会で協同組合7原則が採択された[24][26][27]。その後、1966年の第23回ウィーン大会、1995年の第31回マンチェスター大会で改訂されている[27][28]。
現在適用されている1995年の第31回マンチェスター大会で採択された原則は次の通りである[29]。
- 定義
- 協同組合は、人びとの自治的な組織であり、自発的に手を結んだ人びとが、共同で所有し民主的に管理する事業体をつうじて、共通の経済的、社会的、文化的なニーズと願いをかなえることを目的とする。
- 価値
- 協同組合は、自助、自己責任、民主主義、平等、公正、連帯という価値を基礎とする。協同組合の創設者たちの伝統を受け継ぎ、協同組合の組合員は、正直、公開、社会的責任、他者への配慮という倫理的価値を信条とする。
- 原則
- 協同組合原則は、協同組合がその価値を実践するための指針である。
- 第1原則「自発的で開かれた組合員制」
- 第2原則「組合員による民主的管理」
- 第3原則「組合員の経済的参加」
- 第4原則「自治と自立」
- 第5原則「教育、研修および広報」
- 第6原則「協同組合間の協同」
- 第7原則「地域社会(コミュニティ)への関与」
情報の発信と国際機関への働きかけ
1895年の設立時に掲げた協同組合間での情報の交換を実現するという目標に従って[30]、翌1896年から各種統計の収集が始まり[31]、1908年には『国際協同組合情報』(後の『協同組合レビュー』)が創刊された[32]。2006年からは、各国政府や国際機関に協同組合等の重要性を広めることと、協同組合間での成功モデルや革新的アプローチの共有を目的に[33]、世界の主要な協同組合等の売上高上位300のランキング「グローバル300リスト」の公表をはじめた[33]。
こうした情報の収集と発信だけでなく、大会・総会をはじめとした各種会議の開催を通じても各国の協同組合の相互理解は促進され[22]、さらに各国政府や国際機関に対しても協同組合セクターの存在を認識させる役割を果たしている[22]。また、日常的なロビー活動によって、国際連合や国際労働機関などで、協同組合の果たす役割を積極的に評価する決議が度々なされている[23]。
1995年には、国連によって国際協同組合デーが認められ、事務総長がこれを支持する演説を行った[23]。
世界平和への取り組み
国際協同組合同盟は、すでに第1回協同組合大会で国際平和を希求していた[34]。第一次世界大戦の足音が近づいてきた1913年の第9回グラスゴー大会では「平和が協同組合の発展に不可欠であり、協同組合の発展が世界平和の保証でもある」旨の平和決議が満場一致で採択されている[35][36][37]。その後、時に対象国の加盟組織から激しい反発を受けながらも[37]、時々に戦争反対と世界平和を求める決議を採択してきた[37]。
日本の産業組合中央会は日中戦争に対する非難に晒されて脱退した[38][39][40][41][42]が、戦後復帰した全国指導農業協同組合連合会と日本生活協同組合連合会は、1954年の第19回パリ大会で唯一の被爆国として原水爆実験禁止を訴え、平和決議として採択されている[40]。
- ^ a b c d e f g 鈴木俊彦 『協同組合再生の時代』 農林統計出版、2008年、132頁。
- ^ a b c 富沢賢治 『非営利・協同入門』 同時代社、1999年、63頁。
- ^ a b c 大谷正夫 『協同組合の持続可能な発展を願って』 コープ出版、1998年、521頁。
- ^ a b c 杉本貴志・鈴木岳 「国際協同組合運動略年表」『21世紀の協同組合原則-ICAアイデンティティ声明と宣言』イアン・マクファーソン著、日本協同組合学会訳・編、日本経済評論社、2000年、140頁。
- ^ 今井義夫 『国際協同組合運動と基本的価値』 日本経済評論社、1990年、331頁。
- ^ a b 古桑実 「国際協同組合同盟」『新版 協同組合事典』協同組合事典編集委員会編、家の光協会、1986年、279頁。
- ^ a b 協同組合経営研究所 『新 協同組合とは<改訂版>-そのあゆみとしくみ』 協同組合経営研究所、2007年、25頁。
- ^ 前掲 大谷 (1998)、656頁。
- ^ a b c ジョンストン・バーチャル 『国際協同組合運動-モラル・エコノミーをめざして』 都築忠七監訳、家の光協会、1999年、70頁。
- ^ a b 前掲 大谷 (1998)、658頁。
- ^ 前掲 今井 (1990)、332頁。
- ^ 前掲 今井 (1990)、332-333頁。
- ^ a b c d e f 日本協同組合連絡協議会・2012国際協同組合年全国実行委員会 『第89回国際協同組合デー記念資料』 日本協同組合連絡協議会、2011年、1頁。
- ^ 前掲 今井 (1990)、331-332頁。
- ^ a b 前掲 バーチャル (1999)、62頁。
- ^ 栗本昭 「国連と協同組合の関わり」『ILO・国連の協同組合政策と日本』日本協同組合学会編訳、日本経済評論社、2003年、82-83頁。
- ^ 前掲 今井 (1990)、336頁。
- ^ a b c d e f g h i j 前掲 協同組合経営研究所 (2007)、140頁。
- ^ a b 前掲 今井 (1990)、333頁。
- ^ a b c d 前掲 古桑 (1986)、280頁。
- ^ “International Co-operative Alliance” (英語). 2008年5月27日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2010年12月12日閲覧。
- ^ a b c 前掲 バーチャル (1999)、65頁。
- ^ a b c 前掲 バーチャル (1999)、71頁。
- ^ a b c d 前掲 大谷 (1998)、537頁。
- ^ 堀越芳昭 「ICA大会における協同組合の資本に関する議論-協同組合原則と協同組合の資本の性格」『協同組合の基本的価値』白井厚監修・農林中金研究センター編、家の光協会、1990年、115頁。
- ^ a b 前掲 堀越 (1990)、121頁。
- ^ a b c d e 前掲 協同組合経営研究所 (2007)、55頁。
- ^ a b c 前掲 バーチャル (1999)、67頁。
- ^ イアン・マクファーソン 『21世紀の協同組合原則-ICAアイデンティティ声明と宣言』 日本協同組合学会訳・編、日本経済評論社、2000年、16-22頁。
- ^ a b 前掲 バーチャル (1999)、49頁。
- ^ 前掲 バーチャル (1999)、50頁。
- ^ a b c d 前掲 杉本・鈴木 (2000)、142頁。
- ^ a b c 日本協同組合連絡協議会 『第88回国際協同組合デー記念資料』 日本協同組合連絡協議会、2010年、10頁。
- ^ 中川雄一郎 「協同組合運動のアイデンティティとは何であったのか-第1回国際協同組合大会が求めたもの」『協同組合の国際化と地域化-21世紀の協同組合像を展望する』白石正彦監修・農林中金総合研究所編、筑波書房、1992年、40頁。
- ^ a b c 前掲 古桑 (1986)、281頁。
- ^ 前掲 バーチャル (1999)、53頁。
- ^ a b c 前掲 大谷 (1998)、535頁。
- ^ a b c d 前掲 杉本・鈴木 (2000)、147頁。
- ^ a b c d e f g 白石正彦 「協同組合の国際化と地域化」『協同組合の国際化と地域化-21世紀の協同組合像を展望する』白石正彦監修・農林中金総合研究所編、筑波書房、1992年、16頁。
- ^ a b c d e f g h i j 前掲 古桑 (1986)、284頁。
- ^ a b c d e 白井厚 「ICAの動向と『協同組合の基本的価値』」『協同組合の基本的価値』白井厚監修・農林中金研究センター編、家の光協会、1990年、34頁。
- ^ a b c 前掲 今井 (1990)、237-238頁。
- ^ a b 前掲 協同組合経営研究所 (2007)、21頁。
- ^ 前掲 協同組合経営研究所 (2007)、24頁。
- ^ a b 前掲 マクファーソン (2000)、52頁。
- ^ 前掲 協同組合経営研究所 (2007)、19頁。
- ^ a b 前掲 バーチャル (1999)、25頁。
- ^ a b 前掲 マクファーソン (2000)、53頁。
- ^ 前掲 協同組合経営研究所 (2007)、19-20頁。
- ^ 前掲 協同組合経営研究所 (2007)、20-21頁。
- ^ a b 前掲 マクファーソン (2000)、54頁。
- ^ 前掲 バーチャル (1999)、42-43頁。
- ^ 前掲 杉本・鈴木 (2000)、137頁。
- ^ a b c 前掲 大谷 (1998)、522頁。
- ^ 前掲 中川 (1992)、32頁。
- ^ a b c 前掲 バーチャル (1999)、43頁。
- ^ a b c d e f g h i j k 伊東勇夫 「協同組合原則の形成と展開」『新版 協同組合事典』協同組合事典編集委員会編、家の光協会、1986年、65頁。
- ^ 前掲 杉本・鈴木 (2000)、139頁。
- ^ 前掲 中川 (1992)、34頁。
- ^ 前掲 バーチャル (1999)、43-44頁。
- ^ a b c d e 前掲 バーチャル (1999)、45頁。
- ^ a b c 前掲 中川 (1992)、37頁。
- ^ a b 前掲 大谷 (1998)、523頁。
- ^ a b c d e f 前掲 大谷 (1998)、524頁。
- ^ 前掲 中川 (1992)、38頁。
- ^ a b c d 前掲 バーチャル (1999)、46頁。
- ^ 前掲 大谷 (1998)、524-525頁。
- ^ 前掲 杉本・鈴木 (2000)、138頁。
- ^ a b 前掲 大谷 (1998)、525頁。
- ^ 前掲 大谷 (1998)、659頁。
- ^ a b c 前掲 大谷 (1998)、526頁。
- ^ a b 前掲 大谷 (1998)、660頁。
- ^ a b c d e f g 前掲 中川 (1992)、39頁。
- ^ 前掲 バーチャル (1999)、47頁。
- ^ a b c d e f g 前掲 バーチャル (1999)、48頁。
- ^ a b c d e 中川雄一郎 「国際協同組合運動とICA原則-ICA一〇〇年の歩み」『新原則時代の協同組合-持続的改革に向けて』白石正彦監修・農林中金総合研究所編、家の光協会、1996年、30頁。
- ^ a b c d e f 前掲 中川 (1992)、40頁。
- ^ 前掲 中川 (1996)、30-31頁。
- ^ 前掲 中川 (1992)、42頁。
- ^ 前掲 中川 (1992)、55頁。
- ^ 前掲 中川 (1992)、51頁。
- ^ a b c d 前掲 杉本・鈴木 (2000)、144頁。
- ^ a b 前掲 大谷 (1998)、664頁。
- ^ a b c 前掲 杉本・鈴木 (2000)、145頁。
- ^ a b c 前掲 杉本・鈴木 (2000)、151頁。
- ^ a b c 前掲 杉本・鈴木 (2000)、154頁。
- ^ a b 前掲 杉本・鈴木 (2000)、156頁。
- ^ a b c d 前掲 杉本・鈴木 (2000)、141頁。
- ^ a b 前掲 杉本・鈴木 (2000)、143頁。
- ^ a b 前掲 杉本・鈴木 (2000)、146頁。
- ^ a b c 前掲 杉本・鈴木 (2000)、148頁。
- ^ a b 前掲 杉本・鈴木 (2000)、149頁。
- ^ a b 前掲 杉本・鈴木 (2000)、150頁。
- ^ a b 前掲 杉本・鈴木 (2000)、152頁。
- ^ 前掲 杉本・鈴木 (2000)、153頁。
- ^ 前掲 杉本・鈴木 (2000)、155頁。
- ^ 花盛繁 「今、求められる協同組合での一致した取り組み-ICAシンガポール総会報告」『生活協同組合研究』第385号 生協総合研究所、2008年、60-62頁。
- ^ 天野晴元 「『世界的危機・協同組合の好機』を討議したICAジュネーブ総会」『生活協同組合研究』第408号 生協総合研究所、2010年、61-64頁。
- ^ 全国大学生活協同組合連合会 国際・平和活動
- ^ 2013 ICO Global Conference and General Assembly 国際協同組合同盟公式サイト(英語)
- ^ ICO General Assembly 国際協同組合同盟公式サイト(英語)
- ^ 「国際協同組合同盟(略称:ICA)総会がマレーシアで開催されました」日本生活協同組合連合会(2017年11月27日)
- ^ a b 前掲 白井 (1990)、32頁。
- ^ a b c 前掲 今井 (1990)、238頁。
- ^ 前掲 今井 (1990)、335頁。
- 1 国際協同組合同盟とは
- 2 国際協同組合同盟の概要
- 3 歴史
- 4 日本の加盟団体
- 5 参考文献
- 国際協同組合同盟のページへのリンク