初期のヒト属による火の利用 火の使用の始まり(前期旧石器時代)

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > 初期のヒト属による火の利用の解説 > 火の使用の始まり(前期旧石器時代) 

初期のヒト属による火の利用

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/05/20 00:28 UTC 版)

火の使用の始まり(前期旧石器時代)

アフリカと中近東

クラシーズ河口洞窟
カランボフォールズ
ゲシャー・ベノット・ヤーコヴ
関係地図

イスラエルベノット・ヤーコヴ橋英語版の河岸にあるゲシャー遺跡では、ホモ・エレクトスかホモ・エルガステルが79万から69万年前に火を使っていた証拠がある[23]。焼けたオリーブ、大麦、ブドウの種や、木、火打石が残されており、火を使った確実な証拠としては、これが世界最古のものと見られている[18]:88

南アフリカのハーツ洞窟には紀元前20万から70万年前、モンタギュー洞窟には紀元前5万8千から20万年前、クラシーズ河口洞窟英語版には12万から13万年前のものと見られる跡がある[2]

ザンビアカランボフォールズ英語版にも、焦げ跡、炭、赤く変色した土、燃えた植物、焼き固めた木の道具など、人類が火を使った証拠がいくつも見つかっている。放射性炭素年代測定アミノ酸ラセミ化反応年代測定法により、年代は紀元前6万1000から11万年のものと見られている[2]

スティルベイ英語版文化のもとでは、火はシルクリート英語版石器の加熱処理にも使われていた[24][25][26][27]。発見された石器は紀元前7万2千年前のものだが、加熱処理自体は16万4千年前から行われていた可能性がある[25]

イスラエルのテルアビブから12km東にあるケセブ洞窟英語版では、更新世後期である紀元前38万から20万年前に火を日常的に使っていた跡が残っている。強い火で加熱された骨や土の塊から、火の近くで獣を殺して解体したことを示唆している[28]

ヨーロッパ

ベルテスゾロス
トラルバ
アンブロナ
サン・エステーヴ・ジョンソン
ビーチズ・ピット
シェーニンゲン
関係地図

ヨーロッパでもホモ・エレクトスによる火の使用の跡と見られる遺跡が見つかっている。

ハンガリーベルテスゾロス英語版で見つかった遺骨、通称サム英語版の住んだ遺跡で、炭は見つからなかったものの、約50万年前の地層から[7]:96焼けたような骨が見つかっている。

また、イギリスのウェスト・ストーにあるビーチズ・ピット(Beeches Pit)には、直径約1メートルにわたって黒く変色し、周囲に赤い堆積物が残っている遺跡があり、少なくとも40万年前のものと見られる[18]:86。ただしこれを火の使用の証拠とする見解には異論もある[19]:209

また、ドイツのシェーニンゲン英語版の40万年前のものと見られる遺跡からも、投槍、食糧と見られる馬22頭分の遺体と共に、火打石や 炉と見られるものが見つかっている[18]:86

また、スペインのトラルバ英語版アンブロナ英語版では、紀元前50万から30万年前の炭と木が、アシュール文化の石器と共に見つかっている[2]。フランスのサンテステーヴ・ジャンソン英語版では20万年前の炉が5つと赤土がエスカーレ洞窟の中で見つかっている[2]

アジア

周口店
西侯渡
元謀
トリニール
関係地図

中国の周口店には、いわゆる北京原人による紀元前23万から46万年頃に火が使われた跡が残っている[4]。約78万年前とも考えられている[29]。周口店第1地点の第10層には、焼けた骨、焼かれた小石の加工品、炭、灰、炉、ホモ・エレクトスの化石と思われる証拠が残されている[2][8]。周口店第1地点から見つかった骨のマンガン変色は、古くなってできたものではなく、加熱した痕と判明した。破片の赤外分光スペクトルも骨が酸化していることを示していた。また、見つかった無変色の骨を研究所で加熱したところ、変色した骨と同じものができた。ただし、この加熱は人類によるものではなく、自然加熱された可能性もある[8]。この層からはケイ素、アルミニウム、鉄、カリウムなどの酸化物は見つかっているが、木を燃やしたときに発生する珪酸化合物は見つかっていない。

中国の山西省にある西侯渡英語版では、燃やされて黒や灰、灰緑に変色した哺乳類の骨が見つかっている。雲南省元謀県でも、元謀原人による焼かれた骨が残っている[2]。この年代は古地磁気の研究から約70万年前のものと見られる[29][30]

ジャワ島トリニール英語版でも焼かれた骨と炭と見られる跡が残っている[2](いわゆるジャワ原人の遺跡)。これは50万年前のものと見られている[31]


  1. ^ a b c Price, David. “Energy and Human Evolution”. 2007年11月12日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o James, Steven R. (February 1989). “Hominid Use of Fire in the Lower and Middle Pleistocene: A Review of the Evidence”. Current Anthropology (University of Chicago Press) 30 (1): 1–26. doi:10.1086/203705. 
  3. ^ JAXA 人類
  4. ^ a b First Control of Fire by Human Beings--How Early?”. 2007年11月12日閲覧。
  5. ^ "Fire was used by Homo erectus in northern China more than 400,000 years ago, and there is sketchy evidence suggesting that it may have been used long before that (Gowlett, 1984, pp. 181-82)." Price, David. “Energy and Human Evolution”. 2007年11月12日閲覧。
  6. ^ Stone, Linda; Paul F. Lurquin, Luigi Luca Cavalli-Sforza (2007). Genes, Culture, And Human Evolution: A Synthesis. Blackwell Publishing. p. 33 
  7. ^ a b c 『人類誕生の考古学』
  8. ^ a b c Weiner, S.; Q. Xu, P. Goldberg, J. Liu, O. Bar-Yosef (1998). “Evidence for the Use of Fire at Zhoukoudian, China”. Science 281 (5374): 251–253. doi:10.1126/science.281.5374.251. PMID 9657718. 
  9. ^ Eisley, Loren C. (1955). “Fossil Man and Human Evolution”. Yearbook of Anthropology (University of Chicago Press): 61–78. 
  10. ^ What evidence is there that Homo erectus used fire? Why did they use it?”. 2007年11月12日閲覧。
  11. ^ a b Gibbons, Ann (June 15, 2007). “Food for Thought” (pdf). Science 316 (5831): 1558. doi:10.1126/science.316.5831.1558. PMID 17569838. http://www.sciencemag.org/cgi/reprint/316/5831/1558.pdf 2007年11月12日閲覧。. 
  12. ^ a b Stahl, Ann Brower (April 1984). “Hominid Dietary Selection Before Fire”. Current Anthropology (University of Chicago Press) 25 (2): 151–168. doi:10.1086/203106. 
  13. ^ William R. Leonard. “Food for Thought: Into the Fire”. Scientific american. 2008年2月22日閲覧。
  14. ^ Wrangham R, Conklin-Brittain N. (2003 Sep). “Cooking as a biological trait”. Comp Biochem Physiol a Mol Integr Physiol 136 (1): 35–46. doi:10.1016/S1095-6433(03)00020-5. PMID 14527628. オリジナルの2005年5月19日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20050519215539/http://anthropology.tamu.edu/faculty/alvard/anth630/reading/Week%208%20Diet%20tubers/Wrangham%20and%20Conklin-Brittain%202003.pdf. 
  15. ^ Lambert, Craig (May-June 2004). “The Way We Eat Now”. Harvard Magazine. http://harvardmagazine.com/2004/05/the-way-we-eat-now.html 
  16. ^ Viegas, Jennifer (2005年11月22日). “News in Science - Homo erectus ate crunchy food - 22/11/2005”. http://www.abc.net.au/science/news/stories/2005/1514032.htm 2007年11月12日閲覧。 
  17. ^ Early Human Evolution:  Homo ergaster and erectus”. 2007年11月12日閲覧。
  18. ^ a b c d e f g 『火の賜物』
  19. ^ a b c d e 『石器時代文明の驚異』
  20. ^ AGAZI NEGASH GEOCHEMICAL PROVENANCE OF OBSIDIAN ARTEFACTS FROM THE MSA SITE OF PORC EPIC, ETHIOPIA
  21. ^ Somalipress.com Historical Sites In Ethiopia
  22. ^ Renfrew and Bahn (2004). Archaeology: Theories, Methods and Practice (Fourth Edition). Thames and Hudson. Page 341.
  23. ^ Rincon, Paul (2004年4月29日). “Early human fire skills revealed”. BBC News. http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/3670017.stm 2007年11月12日閲覧。 
  24. ^ サイエンスジャパン 古代の石器作製では火を利用していた
  25. ^ a b Brown KS, Marean CW, Herries AI, Jacobs Z, Tribolo C, Braun D, Roberts DL, Meyer MC, Bernatchez J. (2009). Fire As an Engineering Tool of Early Modern Humans. Science, 325: 859-862. doi:10.1126/science.1175028
  26. ^ Webb J. Domanski M. (2009). Fire and Stone. Science, 325: 820-821. doi:10.1126/science.1178014
  27. ^ Callaway. E. (13 August 2009) Earliest fired knives improved stone age tool kit. New Scientist, online
  28. ^ Karkanas P, Shahack-Gross R, Ayalon A, et al. (August 2007). “Evidence for habitual use of fire at the end of the Lower Paleolithic: site-formation processes at Qesem Cave, Israel”. J. Hum. Evol. 53 (2): 197–212. doi:10.1016/j.jhevol.2007.04.002. PMID 17572475. http://www.tau.ac.il/humanities/archaeology/info/ran_barkai/HabitualUseofFireJHE2007.pdf. 
  29. ^ a b 人類学関連新聞記事紹介 2000年-2009年
  30. ^ 兵頭政幸ら 中国元謀およびアジアにおける他の地域の原人の古地磁気年代、2000年
  31. ^ Knox College Early Hominids





英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「初期のヒト属による火の利用」の関連用語

初期のヒト属による火の利用のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



初期のヒト属による火の利用のページの著作権
Weblio 辞書情報提供元は参加元一覧にて確認できます。

  
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの初期のヒト属による火の利用 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2021 GRAS Group, Inc.RSS