上越国境 上越国境の概要

上越国境

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/08 10:14 UTC 版)

特徴

谷川岳山頂・オキの耳(標高1,977m)。谷川岳周辺は大規模な岩場が多く、ロッククライミングの名所である。

上越国境の山々は標高が2,000m前後とさほど高くはないが、中央分水嶺にあるため日本海側と太平洋側の空気がぶつかり合い、気候の変化が激しく日照時間が短い。このため、夏・冬ともに降水量が多く、集中豪雨、豪雪、雪崩などが多発し、もともと傾斜が急な山々が激しく浸食されて急峻で複雑な地形となっている。このような気候の厳しさと地形は、交通だけでなく登山などのレジャーにおいてもたびたび脅威となっている。とくに谷川岳では統計が開始された1931年(昭和6年)以降、2005年(平成17年)までに781名の死者が出ており、この数は世界的に見ても多い。

また、森林限界となる標高が低く、比較的低いところで高山植物がみられる。

国境越えの歴史

上越国境を超える道には主に清水峠ルート(群馬県利根郡みなかみ町 - 新潟県南魚沼市)と三国峠ルート(みなかみ町 - 新潟県南魚沼郡湯沢町)があり、上野国と越後国を最短で結ぶため、両者とも古来より利用されてきたが、急峻な地形に加え、夏の集中豪雨、冬の豪雪雪崩など土砂災害が多発する難所であった。清水峠ルートには上杉謙信を始めとする越後の戦国大名上杉氏の行軍の際に使用された十五里尾根があり、謙信尾根とも呼ばれた。江戸時代には、三国峠ルートである三国街道が整備され、清水峠ルートは長年にわたって使われなくなった。

明治時代に入り清水峠ルートの距離の短さが注目され、1885年(明治18年)には馬車が通行可能な緩勾配の新道が整備された。この新道は国道の指定を受けたが、その年のうちに豪雨や豪雪により馬車の通行が不能となった。特に荒廃のひどかった新潟県側の区間にはその後、居坪坂と呼ばれる徒歩道が整備されたため、取って代わられ使われなくなった区間は放棄され、現在では道路の痕跡すらほとんど残っていない。一方、群馬県側は徒歩のみではあるが現役の道である。なお、1970年(昭和45年)に群馬県前橋市から新潟県柏崎市に至る国道291号が指定された際に、その放棄された区間がルートに組み込まれたが、依然として現在まで廃道同然となっている。

昭和時代に入ると、1931年(昭和6年)には清水峠付近(直下ではなく、少し離れた谷川岳付近)に鉄道上越線)の清水トンネル(9,702m、単線)が開通し、川端康成が越後湯沢を訪れるようになり、その経験をもとに『雪国』が執筆された。その冒頭の「国境の長いトンネル」とは、開通したばかりの清水トンネルだとされる。

1957年(昭和32年)には三国峠の直下に車道(国道17号)の三国トンネル(1,218m)が開通し、初めて自動車で上越国境を越えられるようになった。開通から50年以上を経ての老朽化や、コンクリートの追加でただでさえ狭い断面がさらに狭くなってきたことから、2022年3月に新三国トンネルへ付け替えられ、これが上越国境を越える唯一の一般道となっている。

その後、清水トンネル付近には1967年(昭和42年)に上越線の複線化のために新清水トンネル(13,490m、単線)が開通し、こちらが下り(新潟方面)専用に、清水トンネル側は上り(東京方面)専用となった。1982年(昭和57年)には上越新幹線大清水トンネル(22,221m、竣工当時世界一、複線)が開通した。そして1985年(昭和60年)には関越自動車道関越トンネル(上り線11,055m、道路用としては日本一)が開通したが、このトンネルは危険物積載車両は通行禁止であるため、そのような車両は三国トンネルを通ることとなった。(2022年3月以降は新三国トンネル)

国境上の位置関係

関越トンネルを新潟県側から撮影。
三国山脈の主峰、谷川岳。その地下には幾筋ものトンネルが走る。
十五里尾根側から清水峠JR東日本送電線監視所とその奥に小さく見える避難小屋を望む。背後に朝日岳が見える。

※西の方から順に




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