ワイドスター 概要

ワイドスター

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/09 02:31 UTC 版)

概要

1996年平成8年)3月29日に、海岸の基地局を利用した船舶電話を置き換える目的でサービスが開始された。2011年(平成23年)12月末時点の契約数は、41,300契約である。N-STARの初号機は、1995年(平成7年)にN-STAR-aが打ち上げられた(現在は役目を終えている)。衛星通信の場合、春分点および秋分点前後に、地上局=衛星=太陽が一直線に並び、太陽雑音による通信品質の劣化が避けられないが、経度の異なる位置に2機の衛星を配置することにより、その影響を最小限にとどめている。サービス当初はN-STAR a/bの2機体勢であったが、現在は後述のN-STAR c/dの2機体制に移行している。

スカパーJSAT保有のN-STARc(2010年(平成22年)6月まではNTTドコモ保有、東経136度)とJCSAT-5A(NTTドコモにおける呼称はN-STARd、東経132度)の2機の静止衛星を用いて、日本の領海・領土・200海里水域向けのサービスとして提供しており、衛星が見通せる地点ならば、海上・陸上・空中を問わず利用可能。なお民間旅客機向けの衛星航空機電話サービスは、2004年(平成16年)3月に終了した。

赤道上空35,786kmの静止衛星から、4つのビーム(東日本ビーム・西日本ビーム・沖縄ビーム・小笠原ビーム)で、陸上と海上の通信サービスを提供している。使用している周波数は、降雨減衰に強い2.660〜2.960GHz(送信)・2.505〜2.535GHz(受信)。日本から衛星までの距離は緯度経度にも依存するが約3万6000kmであり、電磁波の速さは光速とほぼ同じ約30万km/秒であるため、往復で約7万2000km÷約30万km/秒≒約0.24秒前後の伝送の遅延が発生する。

一般にも利用される代表的なものでは、長距離フェリー(ただし最近は減少傾向にある)や高山にある売店山小屋などに設置してあるワイドスターII簡易公衆電話がある。自衛隊気象庁および海上保安庁職員のみが駐在している硫黄島南鳥島でも、日本列島本局との電話回線に、ワイドスター電話が使われている。

なお、後述する後継サービスの『ワイドスターII』がサービスを開始しているため、従来のワイドスターは2011年(平成23年)9月30日をもって新規受付を終了し、2014年(平成26年)3月31日に、提供サービスを終了した。

災害対策用通信としての利用

大規模災害に備えて公共施設にも設置されている。地震などの大災害が発生すると、通常の電話回線は多くの通話が殺到して輻輳状態になるほか、有線通信の実態として、電話回線が損傷すると通信そのものが不可能になる。

その点、衛星電話は地上設備が比較的少なく、設備損傷のリスクが少ないと考えられるため、地方自治体警察消防用の緊急電話回線(一般用とは別系統の災害時優先電話ワイドスター電話端末)が設置されている。また企業でも災害対策用として導入が進んできている。しかしながら、回線数は有限であるため、極端に輻輳が発生した場合においてはPDCと同様に「しばらくお待ちください」と表示されることもある。

東北地方太平洋沖地震東日本大震災)においては、携帯電話基地局や一般固定回線が設備の破損により使えなくなった地域の避難所などに、複数台のワイドスターが特設公衆電話として配備され利用された[1]

使用している周波数帯が、マイクロ波(都市雑音や電離層の影響を受けない1GHz以上で、降雨減衰の少ない10GHz以下の周波数帯)の一種であるSバンド(端末 - 衛星間)およびCバンド(衛星 - 地上局間)であるため、降雨減衰が少なく、天候による障害が起こりにくいのも特徴である。

電話番号体系

日本のNTTドコモが行っているサービスであるため、電話番号は携帯電話と同じく090の電話番号が割り振られる。そのため発着信のダイヤル方法は、通常の携帯電話と同一である。なお陸上用(第1種衛星電話)は通常の携帯電話と同じ電話番号帯の中から割り当てられるが、第2種衛星電話の衛星船舶電話・航空機電話(廃止)・衛星航空機電話(廃止)には専用の電話番号帯がある[4]。このうち衛星船舶電話は通話料金が通常の携帯電話と異なることから、一部のIP電話から発信することができない。

法人営業部門のあるドコモショップ等で端末の購入が可能である。また同様に、故障修理等の保守もドコモショップで可能である。

ごく一部のドコモショップでは契約・解約ができない。

地上局

ワイドスター用の地上局は小夜戸衛星通信所群馬県みどり市東町)と揚枝方衛星通信所茨城県北茨城市)の2か所にある。これは片方の局が地震等で被災してもインフラを維持するためのリスク分散。また地上局と衛星間の通信においては、Cバンド(送信 6.345〜6.425GHz、受信 4.120〜4.200GHz)を利用して通信を行っている。


  1. ^ 東北地方太平洋沖地震の影響による携帯電話のつながりにくい状況について
    6.衛星携帯電話の配備について以下の避難所に衛星携帯電話を配備いたしました。(3月19日 午後1時現在)
  2. ^ フレッツ「ひかり電話サービスからNTTドコモ衛星船舶電話への接続開始について」『NTT西日本』 2009年9月3日、西日本電信電話
  3. ^ 「光でんわオフィス/お仕事ピカラ光でんわ 光でんわ 通話可能な接続先」『株式会社STNet』 STNet
  4. ^ かつて割り当てられていた、030-02-xxxxxに由来。衛星船舶電話は090-302-20xxx〜41xxx、090-302-43xxx〜47xxx、090-302-57xxx〜63xxx、090-302-66xxx〜67xxxの4ブロック[2]。廃止された航空機電話・衛星航空機電話は090-300-42xxx、090-302-01xxx、090-302-42xxx、090-302-55xxxの4ブロック[3]
  5. ^ NTTドコモ報道発表資料「衛星電話次期サービスの開発」
  6. ^ WIDESTAR II 衛星可搬端末 01
  7. ^ ワイドスターII 衛星船舶・車載端末 01 | ドコモビジネス|NTTコミュニケーションズ 法人のお客さま”. www.ntt.com. 2023年9月16日閲覧。
  8. ^ モバイルWi-Fiルーター(ワイドスターII専用) | ドコモビジネス|NTTコミュニケーションズ 法人のお客さま”. www.ntt.com. 2023年9月16日閲覧。
  9. ^ NTTドコモ報道発表資料 「衛星パケットサービス」の終了について
  10. ^ 報道発表資料 : 衛星電話サービス「ワイドスターII」を利用した「簡易公衆電話サービス」を提供開始 | お知らせ | NTTドコモ”. www.docomo.ne.jp. 2023年9月16日閲覧。
  11. ^ サービス・ソリューションのお知らせ ワイドスター通信サービス「64kb/sデータ通信モード」の提供終了について”. www.ntt.com. 2023年9月16日閲覧。
  12. ^ 衛星電話サービス(ワイドスターII)のサービス中断の可能性について”. www.ntt.com. 2023年9月16日閲覧。
  13. ^ 衛星電話サービス「ワイドスターIII」を提供開始”. 株式会社NTTドコモ (2023年9月20日). 2023年9月21日閲覧。
  14. ^ ドコモが提供する衛星電話サービス「ワイドスターⅢ」の取り扱いを開始”. www.ntt.com. 2024年1月15日閲覧。






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