ミレニアム生態系評価 ミレニアム生態系評価の概要

ミレニアム生態系評価

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/01 21:04 UTC 版)

ナビゲーションに移動 検索に移動

生態系・生態系サービス[1]の変化が人間生活に与える影響を評価するため、それらの現状と動向・未来シナリオ作成・対策選択肢の展望について分析を行っている。

ミレニアム・エコシステム・アセスメントミレニアム・エコシステム評価地球生態系診断とも表記される[2]。以下では主に略語MAの表記を用いる。

概要

2000年当時のアナン国連事務総長が国連総会で行った演説の趣旨に沿って、2001年6月よりMAが開始された[3]。世界95カ国から約1,360人の専門家が参加し[4]、日本からは国立環境研究所が参加した[2]

MAの目的は、生態系の変化が人間生活に与える影響を評価すること、および「生態系の保全」・「持続的利用」・「生態系保全と持続的利用による人間生活の向上」に必要な選択肢を科学的に示すことにある[4][5]。MAの利用法としては、政策決定者・民間団体・一般市民の行動[6]の優先順位を決定するツールなどが想定されている[5]

MAの結果は15の報告書に纏められている[5]。MAプロジェクトは、地球上の生態系および生態系サービスの劣化が増大しており、その劣化がミレニアム開発目標達成への障害となっていること、未来の変化についてのシナリオによっては劣化がある程度回復できることを示した[7]。また、生態系の劣化を防ぐための対策選択肢の提示も行っている[8][9]

MA予算は1,700万アメリカドルであり、物資による700万アメリカドル以上の出資と併せて、総額2,400万アメリカドル以上がMA遂行に使われた。それらは地球環境ファシリティ世界銀行UNEPなどから提供された[5]

分析対象

MAでは相互に作用する要因として次のものを取り上げて分析している[4]

  • 人間の福利(食糧などの基本物資・健康・安全・選択と行動の自由・良好な社会関係)
  • 生態系サービス(およびその基盤となる生物多様性
  • 変化の要因
    • 変化の間接的要因(人口・経済・社会政策・科学技術・文化および宗教)
    • 変化の直接的要因(土地利用方法の変化・生物種移入および絶滅・科学技術の使用・肥料や灌漑などの外部から導入・火山活動や進化など自然現象)

検討課題

明確にするべき5つの問題から検討すべき課題を導いた。

問題[4]
1.生態系・生態系サービス・人間の福利の現状と動向。
2.上記1.の未来変化の予測。
3.上記2.を改善するための選択肢の検討、およびその選択肢の長所と短所。
4.効率的意思決定を阻害する不確定要素。
5.上記1-4についての評価におけるMA方法論の有効性。
検討課題[10]
過去から現在までの生態系と生態系サービスの変化
生態系の変化が人間の福利に与えた影響
生態系改変における最も重要な要因
生態系・生態系サービスの将来シナリオ
地域規模(サブグローバル)と世界規模(グローバル)での違い
生態系変化の時間尺度・慣性および非線形性
持続的な生態系管理のための選択肢
意思決定を阻害する不確定要素



  1. ^ ミレニアム生態系評価では生態系サービスを次の4種類に分類する。
    * 供給サービス - 食糧・水・木材などの提供
    * 調整サービス - 気候維持・洪水予防・廃棄物分解など
    * 文化的サービス - レクレーション・精神的な恩恵
    * 基盤サービス - 栄養塩循環・光合成など
  2. ^ a b EICネット "ミレニアム・エコシステム・アセスメント"
  3. ^ Millennium Ecosystem Assessment 「原著序文」『国連ミレニアム エコシステム評価』vii
  4. ^ a b c d e f Millennium Ecosystem Assessment 「緒言」『国連ミレニアム エコシステム評価』xiii-xviii
  5. ^ a b c d e 国連大学高等研究所『ミレニアム生態系評価概要』
  6. ^ 『ミレニアム生態系評価概要』では関連する国際条約として、生物多様性条約(CBD)・砂漠化対処条約(CSD)・ラムサール条約移動性野生動物種の保全に関する条約(CMS)が例示されている。
  7. ^ a b Millennium Ecosystem Assessment 「意志決定者のための要約」『国連ミレニアム エコシステム評価』1-44ページ。
  8. ^ Millennium Ecosystem Assessment 「生態系を持続的に管理するためにはどのような選択肢があるか?」『国連ミレニアム エコシステム評価』156-173ページ。
  9. ^ Millennium Ecosystem Assessment 「付録B 対策の有用性」『国連ミレニアム エコシステム評価』208-218ページ。
  10. ^ Millennium Ecosystem Assessment 「目次」『国連ミレニアム エコシステム評価』xxi-xxii
  11. ^ 詳細な個別の対策は参考資料『国連ミレニアム エコシステム評価』35-36ページ「特定部門に対する有望かつ効果的な対策の例」および208-218ページ「付録B 対策の有用性」を参照されたい。


「ミレニアム生態系評価」の続きの解説一覧




ミレニアム生態系評価と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ミレニアム生態系評価」の関連用語

ミレニアム生態系評価のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ミレニアム生態系評価のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのミレニアム生態系評価 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS