ガソリン 工業ガソリン

ガソリン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/29 05:00 UTC 版)

工業ガソリン

塗料洗浄油脂抽出ドライクリーニングなど、燃料以外の用途に用いられるガソリンである。

日本産業規格では、JIS K 2201によって、次の5種類に分類される。

  • 1号 : ベンジン - 洗浄用
  • 2号 : ゴム揮発油 - ゴム用溶剤・塗料用
  • 3号 : 大豆揮発油 - 抽出
  • 4号 : ミネラルスピリット英語版 - 塗料用(油絵具溶剤のペトロール等)(また、軟膏等に使われるワセリンもミネラルスピリット)
  • 5号 : クリーニングソルベント - ドライクリーニング用・塗料用 (「ソルベント:Solvent」とは英語で有機溶剤のこと。)。

これらは引火点や蒸留性状によって分類されている。例えば、1号は初留温度30℃以上・終点150℃以下のものを、5号は初留温度150℃以上・終点210℃以上で、引火点が38℃以上のものをいう。

ガソリンの管理

各国の規制

日本

日本では消防法第2条第7項に定義される危険物に該当し、第4類危険物の第1石油類に分類されている[1]。また、政令や火災予防に関する市町村の条例によって取り扱いには規制が設けられている[1]

  • ガソリンを運搬する場合は、消防法令に適合した容器(性能試験において基準に適合した金属製容器のガソリン携行缶)を使用する必要がある[1]。車両への直接給油以外でガソリンを携行缶に入れて購入する場合は法改正により「使用目的の申告」と「身分証の提示」が求められ、携行缶へのガソリン給油は店員(危険物取扱資格を有する者)しかできない。乗用車等による運搬には容量にも規制がある[1]
  • ガソリンの保管可能量も厳重に規制されている(40L以上のガソリンを保管する場合、少量危険物としてみなされるため、所轄消防署へ「消防法に基づく事前届け出」が必要)。

また、労働安全衛生法施行令の別表第6の2において有機溶剤にも掲げられている。

アメリカ合衆国

米国では民間団体の全米防火協会(NFPA)が標準的な防火基準を定めており多くの州でこれを引用しており、ガソリンスタンド及び天然ガススタンドに係る規格としてNFPA30A及びNFPA52が定められている[21]。また、米国保険業者安全試験所(UL)の給油設備の規格であるUL87の運用では、ガソリンディスペンサーは天然ガスディスペンサーから5フィート(1.5m)の離隔距離が必要とされている[21]

誤給油

時折、軽油灯油を求められてガソリンを販売してしまう(あるいは、その逆の)誤給油のトラブルが発生することがある。

保管中の品質低下

ガソリンは、長期間の保管により劣化したり、不純物が混入したりといった、品質の低下が発生する場合がある。

長期間の放置や極端な温度条件下での保管により、成分が変質し劣化してしまい、俗に「ガソリンが腐る」とも言われる。ガソリンにはアルケンが含まれており、空気中の酸素と徐々に化学反応(酸化)することで、蟻酸酢酸に変化し[22]、独特の刺激臭を放つようになる。これらの酸は、金属製の容器や機器の部品を腐食する。あるいは、揮発しやすい成分だけが抜けて、流動性が悪く粘着質のワニスガム質と呼ばれる残渣が残り、ガソリン流路を詰まらせる場合がある。

ガソリン税制

ヨーロッパの税制

日本の税制

自動車用ガソリン

ガソリン税(ガソリンぜい)とは、正式には「揮発油税及び地方揮発油税」のこと。これらの税額は、地方揮発油税は当分の間ガソリン1キロリットルあたり5,200円、揮発油税は1キロリットルあたり24,300円であるが、揮発油税については租税特別措置法の規定により倍額され、1キロリットル当たり48,600円となっている。なお、同法(租税特別措置法)は、ガソリン国会中の2008年4月1日から同年4月30日の間、一時的に失効された。また、沖縄県については沖縄の復帰に伴う特別措置に関する法律(昭和46年法律第129号)、沖縄の復帰に伴う国税関係法令の適用の特別措置等に関する政令(昭和47年政令第151号)に基づき、揮発油税は42,277円となっている。

なお、ガソリンの小売価格は、ガソリン本体価格とガソリン税相当額の合計に消費税が課された金額であり、伝票にも「内ガソリン税@53.8」と記載されることから、ガソリン税にさらに消費税を課しているように見えるため、二重課税であるとされることがあるが、国税庁の見解では「ガソリン税は販売者が負担するものであり、納税義務者が異なるため二重課税にはあたらない」としている。一方で軽油の小売価格については、軽油本体価格にのみ消費税が課せられるが、これは小売価格に含まれる軽油引取税が揮発油税とは異なり、その名の通り引取について課せられる税金であり、納税義務者が消費者であるため、その金額に納税義務者が同じく消費者である消費税を課すると、二重課税になってしまうからである。

脱税(不正利益)目的で、ガソリンに灯油が混入される事例が発生している[23]。これは当然ながら違法行為であり、またこのような燃料油はガソリンエンジンを故障させる。

航空用ガソリン

航空ガソリンの税金は、購入時には消費税のみ支払い、航空機燃料税は後日申告のうえ納付する仕組みをとっている。なお、航空機燃料税の税率は揮発油税より高いが、租税特別措置法(2倍掛け)が適用されていないので、実質的には安価なものとなっている。

  • 揮発油税と地方揮発油税(53.8円/L)に対して航空機燃料税(26円/L)

航空機への給油時には必ず4枚1組の免税用紙を用意して、航空機へ給油したことを証明することになっている。証明できない場合には別途揮発油税地方揮発油税を請求される。

自動車用ガソリンの方が安価な国もあるため、一部の航空機エンジンには自動車用ガソリン(ハイオク)対応を謳っているモデルが存在する[24]


  1. ^ a b c d e f g h i 危険物ガソリンについて! (PDF) 小林物産
  2. ^ 身近な危険物の火災、その消火方法 (PDF) - 消防庁
  3. ^ 元科学捜査官「ガソリンで短時間に高温か 逃げるのは困難」 - NHK
  4. ^ 工藤章, 「三国同盟と人造石油 : 日独経済・技術協力をめぐって」『社会経済史学』 55巻 5号 1989年 p.555-580,712, doi:10.20624/sehs.55.5_555
  5. ^ a b c 藤元薫, 「合成ガスから液状炭化水素の合成」『有機合成化学協会誌』 41巻 6号 1983年 p.532-544, doi:10.5059/yukigoseikyokaishi.41.532
  6. ^ a b c d e 乾智行, 「秘話人造石油 : 鉄からゼオライトへ(化学への招待)」『化学と教育』 37巻 3号 1989年 p.282-285, doi:10.20665/kakyoshi.37.3_282
  7. ^ 三輪宗弘, 「海軍の技術選択の失敗 : 航空機用ガソリンと石炭液化」『第5回シンポジウム「日本の技術革新―経験蓄積と知識基盤化―」研究論文発表会論文集』 特定領域研究「日本の技術革新―経験蓄積と知識基盤化―」総括班 2010年 p.27-30, NAID 120006654598
  8. ^ 大塚博, 富田宣, 「(233)フィッシャー法合成ガソリンの成分分析に就て」『工業化学雑誌』 44巻 9号 1941-1942年 p.746-747, doi:10.1246/nikkashi1898.44.9_746
  9. ^ 三井啓策, 「旧海軍燃料廠におけるベルギウス法の研究と結果」『燃料協会誌』 54巻 10号 1975年 p. 846-856, doi:10.3775/jie.54.10_846,
  10. ^ 石川勇, 「石炭液化反応器へのRI技術の応用」『RADIOISOTOPES』 45巻 5号 1996年 p.349-350, doi:10.3769/radioisotopes.45.349
  11. ^ 乾智行, 萩原隆, 武上善信, 「修飾したメタノール合成触媒とZSM-5ゼオライトからなる複合触媒による合成ガスからの選択的炭化水素合成」『石油学会誌』 27巻 3号 1984年 p.228-235, doi:10.1627/jpi1958.27.22
  12. ^ 藤元薫, 「稼動を始めたニュージーランド合成ガソリンプラント」『燃料協会誌』 66巻 1号 1987年 p.2-12, doi:10.3775/jie.66.2
  13. ^ a b 石油の種類について (PDF) 沖縄県
  14. ^ a b c ロバート・ボッシュ著、小口泰平監修『ボッシュ自動車ハンドブック第2版』シュタールジャパン、2003年、235頁
  15. ^ 猛暑、燃料商社に恩恵/ガソリンの体積が膨張/入荷時よりかさ増え利益 『日本経済新聞』朝刊、2018年8月16日(マーケット商品面) 2018年8月16日閲覧。
  16. ^ a b c d e 米国におけるガソリンの需給動向 (PDF) 一般財団法人日本エネルギー経済研究所 2004年10月
  17. ^ a b c ロバート・ボッシュ著、小口泰平監修『ボッシュ自動車ハンドブック第2版』シュタールジャパン、2003年、236頁
  18. ^ a b 燃料油の品質規制と対応の経緯 (PDF) コスモ石油
  19. ^ セスナ172P | Alpha Aviation
  20. ^ セスナ172型ディーゼル・エンジン搭載機耐空検査に合格 | Alpha Aviation
  21. ^ a b 国際先端テスト関連資料 (PDF) 総務省消防庁 2013年6月
  22. ^ 特許庁ホームページ - 鉛-錫合金めっき代替の鉛フリーめっき
  23. ^ 不正ガソリン製造・販売で罰金 三重の業者、灯油混ぜる」『日本経済新聞日本経済新聞社、2016年2月15日。
  24. ^ 多用途での活躍が期待される新型双発機 - JGAS AVIATION BLOG






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