母音体系
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/09 15:27 UTC 版)
現代日本語の母音体系は5つの音素からなるが、上代日本語においては万葉仮名の分析から、現代日本語でイ段の「キ・ヒ・ミ」、エ段の「ケ・ヘ・メ」、オ段の「コ・ソ・ト・ノ・モ・ヨ・ロ」にあたる各音とその濁音がそれぞれ2種類に書き分けられていたことが知られている。このことから、上代日本語の母音体系にはi, e, o の各母音がそれぞれ2種類ずつ使い分けられており、一子音につき合計8種の音節が使い分けられていたと考えられる。また中古早期と同様ア行のエ(e)とヤ行のエ(ye)に区別があり、中古と同様ワ行のヰ・ヱ・ヲ(wi, we, wo)とア行のイ・エ・オ(i, e ,o)も対立があった。 松本克己に代表されるオ甲乙を条件異音とする現代と同じ5母音(7対立)説もかつてはあったが、院政期アクセントをも含んだ最小対の存在からもはや受け入れられていない。上代特殊仮名遣の音価の推定は上代日本語の音韻論を記述する上でさして重要ではないので、詳しくは上代特殊仮名遣を参照のこと。 上代特殊仮名遣の主な転写法としては、以下があげられる。(甲類でも乙類でもないものを森博達に倣って一類と呼ぶ。英語では neutral などと呼ばれる) 上代特殊仮名遣の主な転写法甲乙イェールフレレスヴィッグ & ホイットマン大野修正マティアス・ミラー下付き数字仮名表記イ甲 yi i i î i₁ 片仮名 イ乙 iy wi ï ï i₂ 平仮名 イ一 i i i i i 片仮名 エ甲 ye ye e ê e₁ 片仮名 エ乙 ey e ë ë e₂ 平仮名(ヘは変体仮名) エ一 e e e e e 片仮名 オ甲 wo wo o ô o₁ 片仮名 オ乙 o̱ o ö ö o₂ 平仮名 オ一 o o o o o 片仮名
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