便宜供与
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/14 22:06 UTC 版)
通常、企業別労働組合は従業員の代表機関としての地位に伴い、様々な便宜供与が行われる。代表的なものとして、組合事務所の貸与がある。便宜供与は法的には使用者の義務ではなく、交渉により任意に定める事項であるが、第2条に抵触しない最小限度の供与であれば、労使関係を円滑にする基盤となる。 任意とはいっても、併存組合の一方にのみ貸与して他方には貸与しないことは、不当労働行為とされることがある。また正当事由があれば使用者は明渡しを請求できるが、事前の説明や代替事務所などの交渉手続きを踏まなければ、支配介入としてやはり不当労働行為とされることがある。 労働組合による企業の物的施設の利用は、本来使用者との合意に基づいて行われるべきものであって、組合または組合員において利用の必要性が大きいことの故に利用権限を取得し、使用者において右利用を受忍しなければならない義務を負うものではないから、使用者の許諾を得ず企業の物的施設を利用して組合活動を行うことは、これらの者に対しその利用を許さないことが使用者の権利濫用に当るような特段の事情ある場合を除き、職場環境を適正良好に保持し規律ある業務の運営態勢を確保するように物的施設を管理利用する使用者の権限を侵害し、企業秩序を乱すものであって、正当な組合活動として許容されない(国労札幌運転区事件、最判昭和54年10月30日)。 厚生労働省「平成28年労働組合活動等に関する実態調査」によれば、組合事務所としての企業施設の供与の有無をみると、「供与を受けている」74.8%(平成23年調査80.9%)、「供与を受けていない」22.7%(同17.8%)となっている。また、供与を受けている労働組合の供与の形態をみると、「無料で供与を受けている」79.0%(同74.0%)、「有料で供与を受けている」21.0%(同26.0%)となっている。また、組合活動のために企業施設の供与を要求した場合、「要求した場合には常に利用できる」と回答した割合を使用目的別にみると、「定期の会合」89.8%(同82.3%)、「臨時の会合」85.9%(同80.3%)、「闘争準備等のための活動」73.7%(同67.9%)、「その他の日常活動」84.5%(同77.5%)となっており、すべての目的において、前回調査結果を上回っている。
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