WKB近似とは? わかりやすく解説

WKB近似

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/22 08:32 UTC 版)

物理学、特に量子力学において、WKB近似(WKBきんじ、: WKB approximation)、またはWKB法とは、シュレディンガー方程式半古典論的な近似解法の一つ[1][2]プランク定数古典力学と量子力学を結びつける摂動パラメーターとみなした摂動であり、古典力学と量子力学の対応関係を説明する新たな観点を与える。WKBの名は、量子力学の研究の中で理論の発展に寄与した3人の物理学者ウェンツェル英語版(Wentzel)、クラマース(Kramers)、ブリルアン(Brillouin)らの頭文字に因むものである。なお、応用数学者で地球科学者であるジェフリーズ(Jeffreys)も独自にこの手法を考案し、多くの問題に適用したことから、その名を加え、WKBJ近似とも呼ばれる。WKB近似は最高階の導関数に摂動パラメーターが乗じられた特異摂動問題を扱う手法の一つであり、シュレディンガー方程式のみならず、より一般的な線形微分方程式の特異摂動問題にも応用される[3]


  1. ^ L. D. Landau and E.M. Lifshitz (1981), chapter.VII
  2. ^ 猪木、河合(1994), 第10章
  3. ^ 柴田(2009).
  4. ^ N. Froeman and O. Froeman(2002), chapter.1
  5. ^ Francesco Carlini, Ricerche sulla convergenza della serie che serva alla soluzione del problema di Keplero, Milano.(1817)
  6. ^ Joseph Liouville, "Sur le développement des fonctions et séries," Journal de Mathématiques Pures et Appliquées, 1 pp. 16–35 (1837)
  7. ^ Green, George and others (1838). “On the motion of waves in a variable canal of small depth and width”. Transactions of the Cambridge Philosophical Society 6: 457-462. https://ui.adsabs.harvard.edu/abs/1838TCaPS...6..457G/abstract. 


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WKB近似

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/25 09:27 UTC 版)

トンネル効果」の記事における「WKB近似」の解説

波動関数を以下のようにある関数指数関数取って表わすものとする。 Ψ ( x ) = e Φ ( x ) {\displaystyle \Psi (x)=e^{\Phi (x)}} Φ ″ ( x ) + Φ ′ ( x ) 2 = 2 m ℏ 2 ( V ( x ) − E ) . {\displaystyle \Phi ''(x)+\Phi '(x)^{2}={\frac {2m}{\hbar ^{2}}}\left(V(x)-E\right).} Φ ′ ( x ) {\displaystyle \Phi '(x)} は実部虚部分けることができる。 Φ ′ ( x ) = A ( x ) + i B ( x ) {\displaystyle \Phi '(x)=A(x)+iB(x)} ここで、A(x) および B(x) は実値関数とする。 上の第二式にこれを代入し、左辺虚部となる必要があることを用いると、次を得る。 A ′ ( x ) + A ( x ) 2 − B ( x ) 2 = 2 m ℏ 2 ( V ( x ) − E ) {\displaystyle A'(x)+A(x)^{2}-B(x)^{2}={\frac {2m}{\hbar ^{2}}}\left(V(x)-E\right)} . この方程式を半古典近似用いて解くには、各関数を ℏ {\displaystyle \hbar } の羃級数展開するこの方程式実部満たすためには、羃級数少なくとも ℏ − 1 {\displaystyle \hbar ^{-1}} から始まる必要があることがわかる。古典極限振舞い良くするためにはプランク定数次数はなるべく高い方がよいので、次のように置くこととする。 A ( x ) = 1 ℏ ∑ k = 0 ∞ ℏ k A k ( x ) {\displaystyle A(x)={\frac {1}{\hbar }}\sum _{k=0}^{\infty }\hbar ^{k}A_{k}(x)} B ( x ) = 1 ℏ ∑ k = 0 ∞ ℏ k B k ( x ) {\displaystyle B(x)={\frac {1}{\hbar }}\sum _{k=0}^{\infty }\hbar ^{k}B_{k}(x)} また、低次の項については次のような拘束課せられるA 0 ( x ) 2 − B 0 ( x ) 2 = 2 m ( V ( x ) − E ) {\displaystyle A_{0}(x)^{2}-B_{0}(x)^{2}=2m\left(V(x)-E\right)} A 0 ( x ) B 0 ( x ) = 0 {\displaystyle A_{0}(x)B_{0}(x)=0} ここで、二つ極端な場合について考察するCase 1 振幅変化位相比べて遅い場合A 0 ( x ) = 0 {\displaystyle A_{0}(x)=0} および B 0 ( x ) = ± 2 m ( E − V ( x ) ) {\displaystyle B_{0}(x)=\pm {\sqrt {2m\left(E-V(x)\right)}}} は古典的運動相当する次の次数までの項を解くと、次を得る。 Ψ ( x )C e id x 2 m ℏ 2 ( E − V ( x ) ) + θ 2 m ℏ 2 ( E − V ( x ) ) 4 {\displaystyle \Psi (x)\approx C{\frac {e^{i\int dx{\sqrt {{\frac {2m}{\hbar ^{2}}}\left(E-V(x)\right)}}+\theta }}{\sqrt[{4}]{{\frac {2m}{\hbar ^{2}}}\left(E-V(x)\right)}}}} Case 2 位相の変化振幅比べて遅い場合B 0 ( x ) = 0 {\displaystyle B_{0}(x)=0} および A 0 ( x ) = ± 2 m ( V ( x ) − E ) {\displaystyle A_{0}(x)=\pm {\sqrt {2m\left(V(x)-E\right)}}} はトンネリング相当する次の次数までの項を解くと、次を得る。 Ψ ( x ) ≈ C + e +d x 2 m ℏ 2 ( V ( x ) − E ) + C − e − ∫ d x 2 m ℏ 2 ( V ( x ) − E ) 2 m ℏ 2 ( V ( x ) − E ) 4 {\displaystyle \Psi (x)\approx {\frac {C_{+}e^{+\int dx{\sqrt {{\frac {2m}{\hbar ^{2}}}\left(V(x)-E\right)}}}+C_{-}e^{-\int dx{\sqrt {{\frac {2m}{\hbar ^{2}}}\left(V(x)-E\right)}}}}{\sqrt[{4}]{{\frac {2m}{\hbar ^{2}}}\left(V(x)-E\right)}}}} どちらの場合でも、近似解分子見れば古典的折り返しE = V ( x ) {\displaystyle E=V(x)} 付近破綻することが瞭然だろう。このポテンシャルの丘から遠いところでは、粒子自由に振動する波と類似の振る舞いを示す。ポテンシャルの丘のふもとでは、粒子振幅指数関数的に変化する。これらの極限における振る舞い折り返し点を考慮すると、大域解を得ることができる。 はじめに古典的折り返し点を x1 とし、 2 m ℏ 2 ( V ( x ) − E ) {\displaystyle {\frac {2m}{\hbar ^{2}}}\left(V(x)-E\right)} を x1 周り羃級数展開する2 m ℏ 2 ( V ( x ) − E ) = v 1 ( x − x 1 ) + v 2 ( x − x 1 ) 2 + ⋯ {\displaystyle {\frac {2m}{\hbar ^{2}}}\left(V(x)-E\right)=v_{1}(x-x_{1})+v_{2}(x-x_{1})^{2}+\cdots } この初項のみを採れば線形性保証される2 m ℏ 2 ( V ( x ) − E ) = v 1 ( x − x 1 ) {\displaystyle {\frac {2m}{\hbar ^{2}}}\left(V(x)-E\right)=v_{1}(x-x_{1})} この近似用いると、x1 近傍について次の微分方程式を得る。 d 2 d x 2 Ψ ( x ) = v 1 ( x − x 1 ) Ψ ( x ) {\displaystyle {\frac {\mathrm {d} ^{2}}{\mathrm {d} x^{2}}}\Psi (x)=v_{1}(x-x_{1})\Psi (x)} これはエアリー関数用いて解くことができる。 Ψ ( x ) = C A A i ( v 1 3 ( x − x 1 ) ) + C B B i ( v 1 3 ( x − x 1 ) ) {\displaystyle \Psi (x)=C_{A}Ai\left({\sqrt[{3}]{v_{1}}}(x-x_{1})\right)+C_{B}Bi\left({\sqrt[{3}]{v_{1}}}(x-x_{1})\right)} この解を全ての古典的折り返し点について用いることで、上の極端な場合の解を繋ぐ大域解を得ることができる。古典的折り返し点の片側2つ係数与えられれば、逆側の2つ係数はこの局所解を用いてそれらを繋ぐことで決定することができる。 したがってエアリー関数解は適切な極限の元で sin, cos 関数指数関数漸近する。 C , θ {\displaystyle C,\theta } , C + , C − {\displaystyle C_{+},C_{-}} の関係式次のように得られる。 C + = 1 2 C cos ⁡ ( θ − π 4 ) {\displaystyle C_{+}={\frac {1}{2}}C\cos {\left(\theta -{\frac {\pi }{4}}\right)}} C − = − C sin ⁡ ( θ − π 4 ) {\displaystyle C_{-}=-C\sin {\left(\theta -{\frac {\pi }{4}}\right)}} これらの係数決まれば、大域解が得られる。したがって一つポテンシャル障壁トンネリングする粒子透過係数英語版)は以下のように得られる。 T ( E ) = e − 2 ∫ x 1 x 2 d x 2 m ℏ 2 [ V ( x ) − E ] {\displaystyle T(E)=e^{-2\int _{x_{1}}^{x_{2}}\mathrm {d} x{\sqrt {{\frac {2m}{\hbar ^{2}}}\left[V(x)-E\right]}}}} ここで、x1, x2 はポテンシャル障壁にある二つ古典的折り返し点である。 矩形障壁場合は、この式は次のように簡単化できる。 T ( E ) = e − 2 2 m ℏ 2 ( V 0 − E ) ( x 2 − x 1 ) = V ~ 0 − ( x 2 − x 1 ) {\displaystyle T(E)=e^{-2{\sqrt {{\frac {2m}{\hbar ^{2}}}(V_{0}-E)}}(x_{2}-x_{1})}={\tilde {V}}_{0}^{-(x_{2}-x_{1})}}

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WKB近似

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近似法」の記事における「WKB近似」の解説

ϵ {\displaystyle \epsilon } を微小パラメータとする2階常微分方程式 ϵ 2 d 2 y d x 2 = A ( x ) y ( x ) {\displaystyle \epsilon ^{2}{\frac {d^{2}y}{dx^{2}}}=A(x)y(x)} は、 A {\displaystyle A} の変化ゆっくりとみなせるならば、指数関数型の解 y ( x )exp ⁡ ( ± 1 ϵ A ( x ) ) {\displaystyle y(x)\sim \exp \left(\pm {\frac {1}{\epsilon }}{\sqrt {A(x)}}\right)} により近似できる。この考察に基づく常微分方程式漸近級数解の理論はWKB近似として知られる。これはもともとジョゼフ・リウヴィルらによって19世紀から用いられていたが、量子力学においてシュレディンガー方程式近似解法としてWentzelらによって用いられたことからWKB近似として知られるようになった。また光学幾何光学物理光学)における幾何光学近似あるいは物理光学近似とも対応している

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