PDZタンパク質
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 16:27 UTC 版)
PDZドメインを持つタンパク質はPDZタンパク質と呼ばれる。PDZドメインは既知の数千種類のタンパク質に存在する。PDZタンパク質は真核生物と真正細菌では広くみられるが、古細菌タンパク質にはきわめてわずかな例しか存在しない。PDZドメインは多くの場合他のタンパク質ドメインと関係しており、こうした組み合わせによって特異的機能が発揮される。PDZタンパク質として最もよく記載されている3つのタンパク質として、ここではPSD-95、GRIP(英語版)、HOMER(英語版)を取り上げる。 PSD-95は脳のシナプスタンパク質で、3つのPDZドメインを持つ。そのそれぞれが独特な性質と構造を持ち、PSD-95の多様な機能を可能にしている。一般的に、最初の2つのPDZドメインは受容体と相互作用し、3番目のものは細胞骨格関連タンパク質と相互作用する。PSD-95が結合する主な受容体はNMDA受容体である。PSD-95の最初の2つのPDZドメインはNMDA受容体のC末端に結合し、受容体を神経伝達物質放出部位の膜に固定する。最初の2つのPDZドメインはShaker(英語版)型カリウムチャネルとも同様に相互作用する。PSD-95とnNOS、シントロフィン(英語版)との結合は2番目のPDZドメインを介して行われる。3番目のPDZドメインはCRIPT(英語版)と結合し、PSD-95と細胞骨格との結合を可能にする。 GRIPは、PSD-95とNMDA受容体との間の相互作用と類似した形で、AMPA受容体との相互作用を行うシナプス後タンパク質である。AMPA受容体とNMDA受容体のC末端の構造的相同性が発見された際、NMDA受容体と同様にAMPA受容体とPDZを介した相互作用を行うタンパク質の探索が行われた。酵母ツーハイブリッド法からGRIPの7つのPDZドメインの発見が導かれ、そのうちの2つ(ドメイン4、5)がGluR2と呼ばれるAMPAサブユニットへのGRIPの結合に必須であることが明らかにされた。この相互作用は、記憶の保管に大きな役割を果たしているAMPA受容体を適切に局在させるために重要である。また、GRIPのドメイン6と7はEph受容体と呼ばれる受容体型チロシンキナーゼファミリーとGRIPとの連結を担っていることが発見された。これらの受容体は重要なシグナル伝達タンパク質である。臨床研究によって、フレイザー症候群(英語版)と呼ばれる重度の奇形を伴う常染色体劣性症候群は、GRIPの変異によって引きこされる場合があることが結論付けられている。 HOMERは、GRIPやPSD-95などの既知の多くのPDZタンパク質とは大きく異なる。GRIPやPSD-95などのようにイオンチャネルとの相互作用を媒介するのではなく、HOMERは代謝型グルタミン酸受容体(英語版)シグナル伝達に関与している。HOMERの独特な他の点は、PDZドメインを1つしか持たないという点である。このドメインはHOMERとmGluR5(英語版)との相互作用を媒介している。HOMERに唯一存在するGLGFリピートはmGluR5のC末端のアミノ酸に結合する。HOMERはラットの胚発生時に高レベルで発現していることから、発生に重要な機能を持っていることが示唆される。
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