NOSS 4 の可能性のある新規衛星
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「アメリカ海軍広域海上監視システム」の記事における「NOSS 4 の可能性のある新規衛星」の解説
2017年3月1日の NOSS 3-8 (INTRUDER 8) ペアの打上げから約5年のブランクの後に、2022年4月17日に、ヴァンデンバーグ空軍基地から Falcon 9 ロケットを用いて、機密衛星 USA-327 (NRO所属、NROL-85) が打ち上げられ、従来の NOSS 衛星の典型的な軌道である、近地点高度 1008 km、遠地点高度 1207 km、軌道傾斜角 63.4°の軌道に投入されたことがアマチュア観測者の打上げ約7時間後の観測で確認されたが、衛星は1基であり、2基目の衛星は見い出せなかった。 アマチュア観測者達などは最初この衛星を NOSS 3-9 (INTRUDER 9) と考えていたが、その後の観測でも2基目の衛星は見い出せず、この衛星は単独衛星であり、NOSS 3 のようなペア衛星ではないことが明らかになった。打上げに用いられた Falcon 9 の低軌道(LEO)へのペイロード打上げ能力は22.8トンに達するので(Falcon 9 FT の場合)、単独衛星の USA-327 はこの程度の質量を持つことになる。これは推定される NOSS 3 衛星1基の質量の4倍の質量であり、かなり大質量の衛星であることになる。 USA-327 は単独衛星ではあるが、従来の NOSS 衛星の典型的な軌道に入っていることから、用途は従来の NOSS 衛星と同様の軍艦の位置特定用のELINT衛星であるか、少なくともこれと密接な関係を持った衛星であることは間違いないと考えられる。 この衛星が単独衛星である理由としては、現時点では次のような仮説が考えられる。 (1) 本来は従来の NOSS 3 と同様のペア衛星であったが、1基は軌道投入に失敗して結果的に単独衛星となった。ただし、NOSS シリーズの失敗事例は、1980年12月9日の NOSS 1 の失敗1件のみであり、米国の衛星技術から考えても、この可能性はごく小さいと考えられる。 (2) 従来の NOSS 衛星と同様の軍艦の位置特定用のELINT衛星であるが、技術の進歩により単独衛星での位置測定が可能となった。例えば、他の軌道を飛ぶ同様の衛星と、水素メーザー原子時計を用いて厳密に時刻同期を行い、TDOA観測を行う。この場合、この衛星単独ではTDOA観測は行えないので、同様の衛星が別に打ち上げられると予測される。しかし、この仮説は USA-327 が従来の NOSS 3衛星の4倍の質量であることを説明するには無理があるだろう。 (3) 従来の NOSS 衛星と同様の軍艦の位置特定用のELINT衛星であり、実際にはペア(あるいはトリプレット)衛星であるが、技術の進歩により観測の基線長を短くできるため(例えば数百メートル)、2つ(あるいは3つ)に分離して見えていない。テザーなどを介して連結している可能性もある。あるいは、現在は単独であるが、今後2基以上に分離する。この仮説は USA-327 が従来の NOSS 3衛星の4倍の質量であることを、かなりうまく説明できる。 (4) これ自身は ELINT衛星ではなく、NOSS衛星を中国などのキラー衛星の攻撃から防御する戦闘衛星であるか、または、NOSS衛星と用途、軌道が競合する中国の遥感衛星を攻撃するためのキラー衛星である。この場合、攻撃対象の衛星に接近するためには大規模なマニューバーが必要であり、そのために大量の燃料を消費することになる。衛星の質量が従来の NOSS 3衛星と比べて4倍も重いのは、大量の燃料を搭載しているためと考えれば辻褄が合う。 (2)または(3)の場合、この衛星は NOSS 3 (INTRUDER) とは異なる、NOSS 4 の初号機ということになる。
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