ILOのベーシック・ニーズ・アプローチ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/05/17 06:48 UTC 版)
「適正技術」の記事における「ILOのベーシック・ニーズ・アプローチ」の解説
適正技術を社会的・文化的な面で地域に適合しているか否かという基準について、その基準を「ベーシック・ニーズ・アプローチ(基本的欲求の充足)」に置こうというのが、国際労働機関(ILO)の考え方であった。ILOは、1976年の世界雇用会議において行動原理を採択した。ここで、ベーシック・ニーズ(基本的欲求)として、以下の生産物とサービスを定義した。 まず第1に、それは家族の個人消費の最低の要求、すなわち十分な食料、家、衣料およびある種の家具や器具の充足である。第2に、社会全体に供給される必要サービス、すなわち安全な飲料水、衛生、公共運輸施設、病院、教育および文化施設などである。 — ILO 、Employment, Incomes and Equality:A Strategy for Increasing Productive Employment in Kenya これまでの経済理論では、消費者がある生産物に対して金を払って購入するという事実があるならば、その生産物は「適切」であるとみなしていた。一方、ILOのベーシック・ニーズという考え方では、適切な生産物とは、所得制約の条件下で、代替物との比較において消費者の選択の行為によって選ばれた商品またはサービスのうち特定のベーシック・ニーズをもっともよく満たすものを指す、とした。 これまでの技術選択の議論が、常に生産技術を対象として捉えてきたが、最終生産物である商品の適正さを問題とし、その適正な生産物を能率的に供給しうる技術を「適正技術」であると考える、という考え方がここで登場した。 またILOの適正技術論の特徴は、途上国政府が所得分配を重視した開発政策をとることによって、低所得者層に適切な生産物を供給する技術が奨励され、そのことがまた低所得者層の所得を引き上げるような産業を創設することになるであるところを主張したところにあった。つまり政府の所得再配分政策が、適正技術を媒介に達成することを想定したものであった。
※この「ILOのベーシック・ニーズ・アプローチ」の解説は、「適正技術」の解説の一部です。
「ILOのベーシック・ニーズ・アプローチ」を含む「適正技術」の記事については、「適正技術」の概要を参照ください。
- ILOのベーシック・ニーズ・アプローチのページへのリンク