HOモデルの定理の計量経済学的テスト
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/18 10:26 UTC 版)
「ヘクシャー=オリーン・モデル」の記事における「HOモデルの定理の計量経済学的テスト」の解説
ヘクシャーとオリーンは、要素価格均等化定理は、計量経済学的に成功を収めていると考えていた。なぜなら、19世紀終わりと20世紀はじめに多量の国際貿易と財と生産要素の価格の収束は符合していたからである。 しかし、現代の計量経済学的推定によれば、HOモデルは実証的にほとんど支持されない。生産技術がどこでも同じであるという仮定の修正が必要であることが示唆されてきた(この修正を行えば、純粋なHOモデルを放棄することになる)。 1954年、ワシリー・W・レオンチェフが行った、HOモデルの計量経済学的テストによれば、米国は、資本豊富国であるにも関わらず、労働集約財を輸出し、資本集約財を輸入する傾向があった。この問題は「レオンチェフの逆説」として知られている。代替的な貿易モデルや逆説に対する様々な説明が現れた。そうした貿易モデルの1つが、リンダー仮説である。リンダー仮説は、供給側の要因の違いよりむしろ似ている需要に基づいて財の貿易がなされると主張している。 レオンティエフ以降にも多くの計量経済学的検証が行なわれた。その多くは、HOモデルを一般化したHOVモデル(Heckscher-Ohlin-Vanekモデル)に基づいている。1984年にE. Leamerは、11種類の生産要素と10種類に分類された貿易データとをつき合わせて、要素賦存が貿易パターンを驚くほどよく説明していると主張した。しかし、おなじLeamerは、1987年の共著論文においてより詳しい検証を行ない、要素賦存理論は支持されないという結論を導いた。1990年代には、D. Trefler がより詳しい検討を行い、次の3つの結論を導いた。①(HO定理を含む)HOV定理と要素価格均等化定理は経験的史実により棄却される。②技術の国際的な差異を考慮するならば、諸国間の要素価格の相違をよく説明できる。③(貧しい国ほど多くの生産要素が豊富になるという)「要素賦存パラドックス」が成立する。HOモデルおよびHOVモデルが十分な予測力を持たないことは、21世紀になっても踏襲されている。
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