Doctor Fishとは? わかりやすく解説

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ドクターフィッシュ

(Doctor Fish から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/12/08 04:15 UTC 版)

ドクターフィッシュ
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
: コイ目 Cypriniformes
: コイ科 Cyprinidae
亜科 : コイ亜科 Cyprininae
: ラベオ族 Labeonini
: アゴヒラ属 Garra
: ガラ・ルファ G. rufa
学名
Garra rufa (Heckel1846)
英名
doctor fish

ドクターフィッシュ英語: doctor fish)とは、コイ亜科の魚のガラ・ルファ(学名:Garra rufa)を指す。淡水魚である。

呼称について

Garra rufa

ドクターフィッシュとは、あくまでも通称である[1]。この魚が食べ物の少ない環境で棲息している水中に、ヒトが手足などを入れると、その表面の古い角質層を食べるために集まって来る。古い角質を安全に除去できるため美容や治療に役立つとされる。

角質を食べる刺激が神経を活性化するともいわれ、こうした性質を医者になぞらえて、ドクターフィッシュと呼ばれる。なお皮膚病などにより、大量の角質層、特に鱗屑が生成される箇所に好んで寄って行く。

ただし、傷口を水中に漬けた場合には、かさぶたを剥がされたり感染症にかかる危険があるため、傷口付近は避けるべきである。

分布

トルコイランイラクシリアレバノン周辺の西アジア地域の淡水域に棲息する。

生態

西アジアの河川域に生息する淡水魚で、成体の全長はおよそ10cm程度。水温・水質どちらの適応範囲も非常に広い丈夫な魚である。37程度の高い水温でも生存できるため、トルコなどの温泉にも棲息可能だが、通常は淡水の河川や池沼に棲息する。

餌を求める時は活発に動き回るのに対して、普段は石などの上や陰で微動だにしないことが多い。食性は雑食性。吸盤状の口で、水中の石や岩などに付着した藻類を舐めるようにして食べる。さらに、水底にいる微生物昆虫幼虫なども食べる。

繁殖は卵生であり、水草やコケを産卵床として利用し、直径2mmから3mmの卵を産む。孵化までの期間は、水温により異なるものの、25℃前後の水温ならば、おおむね3日から5日程度で、体長5mm前後の稚魚が孵化する。未成魚のころは群れで生活する。ヒトの角質層を食べる時期は、生後2ヶ月から2年半ごろまで。成長したオスは縄張りを持つようになり多少攻撃的な性格に変化する。なお、寿命はだいたい7年である。

ヒトとの関係

ヒトの角質を食べる理由

温泉に棲むガラ・ルファがヒトの角質を食べる理由は、温泉に他の生物があまり棲息せず、ほかに良い食べ物がないためと考えられる[2]。食べ物が豊富な河川などの環境下では、ヒトの角質をあまり食べないため、非常に珍しい生態学的適応の例である[2]。食べ物のプランクトンや藻が充分に育たない温泉内へ物理的に隔離されたガラ・ルファは、河川よりも餌不足なため生育が悪くなる。しかし、トルコでは夏場に観光客が温泉に足を漬けるため、足の表面の角質を栄養源として利用できる[2]。トルコの生物学者は「ヒトの皮膚はドクターフィッシュにとって、肉のようなごちそう」だとたとえた[2]

トルコではガラ・ルファが自然に湧出している水温34℃の温泉と河川を行き来していたが、1950年代に実施された開発により、河川から温泉が魚群ごと隔離され、ヒトの角質を食糧とする非常に珍しい生態学的適応が始まった[2]。トルコの生物学者は、隔離された魚群が数千年後に別種に分化する可能性もあると指摘している[2]

ヒトによる利用

真偽は不明だが、ガラ・ルファを「世界の三大美女の1人に数えられるクレオパトラが愛用していた」と信じる者がいる[3]。ただ、ガラ・ルファには歯がなく、皮膚を吸い取るようについばむ習性を有するため、充分に健康な肌であれば傷付けることもない。

ガラ・ルファに皮膚表面の角質層を食べられるヒトにとっては、ついばまれる際の小刻みな刺激や振動が、皮膚の代謝を促進させる「マッサージ効果」及び「リラクゼーション効果」が期待できる[4]。これ以外に乾癬など皮膚病の一部に治療効果があるともされ、このため「ドクターフィッシュ」の通称で知られる[4]。また、野生の魚に触れる体験という意味において「自然のピーリング効果」が期待される[4]。臆病なはずの小魚がヒトに寄って来るため、心の弱ったヒトにも効果があるのではないかと言われる[3]。ただし皮膚病の場合、角質の除去のみでは治癒しないため、皮膚病のメカニズムに働きかける通常の医療は継続しなければならない。さらに、アトピー性皮膚炎に至っては、皮膚表面の角質層などの破損によるバリアとしての機能低下が問題となるため、皮膚病の種類によっては不向きの可能性がある。

皮膚病の病態にもよるが、ドイツやトルコではドクターフィッシュによる治療が、保険適用の医療行為として認められている。なお、ドクターフィッシュによる治療はトルコで古くから行われてきたが、中華人民共和国の業者は、この手の治療法のアイディアは中国起源だと主張している[2]

ドクターフィッシュは多数の地域で利用されているが、一部では異なった対応が見られる。アメリカ合衆国では、14の州でエステティックサロンによるフィッシュセラピーが、エステティック組合により禁止された[5][6]。さらに、アブダビ首長国では全面禁止となった[6]イギリスでは、不特定多数が水槽を利用するため、イギリス健康保護局英語版により、感染症であるHIVHCVなどの感染率は非常に低いがゼロではないとして、各施療所に水の取り換えなどの衛生に関する指導が実施されている[7][6]

日本での取り扱い

ガラ・ルファは、日本列島において自然状態では分布していない。ただし水族館・動物園などの博物館で、ドクターフィッシュを展示した施設が見られる[注釈 1][8][9]

本来は日本列島に存在しない魚だが、水族館などが、ガラ・ルファの繁殖に成功した[9]。そんな中、日本ではドクターフィッシュのレンタル業者も現れた。そこで博物館以外にも、37℃もの高水温に耐えられる特性をいかし、日帰り入浴施設で「フィッシュセラピー」などと銘打って、ドクターフィッシュに触れられるサービスが提供された事例もある[4]。ガラ・ルファは適応力の高い比較的丈夫な魚かつ取り扱いも容易なため、日本では児童施設で取り扱われたこともある[注釈 2]。その一方で、水の汚れには弱く、それが原因で死ぬ場合もあるとして[9]、飼育の際は水の取り換えを充分に実施するように推奨される[10][9]

画像

他種の魚が「ドクターフィッシュ」と呼ばれる事例

日本近海にも棲息するホンソメワケベラは、淡水魚とは全く異なる系統であるベラ科に属する。しかし当該魚は、英語での俗称で「ドクターフィッシュ」とも呼ばれる。ホンソメワケベラは、他の大きな魚の身体に宿る寄生虫などを食糧とする掃除魚に分類される。つまり「魚のための医者」である。

他種の魚を「ドクターフィッシュ」と詐称した事例

ガラ・ルファと同様に古くなった角質を食べるナイルティラピアなどのカワスズメ科の魚を、その安価さから「ドクターフィッシュ」と称し、サービスに使用する業者が見られる[5]。ガラ・ルファと違い、この魚は微小な歯を持つため、肌が傷付くトラブルが報告された[5]。そのほか、ガラ・ルファと異なる習性として、大きくなると魚同士で戦う[11]

詐称されてはいないが、日本近海に棲息するゴンズイにも、ヒトの角質をついばむ習性が存在する[12]。ただし、毒刺を持つゴンズイはセラピーに向かない[12]

脚注

注釈

  1. ^ 期間限定の展示も含めれば、須坂市動物園草津熱帯圏サンピアザ水族館新江ノ島水族館のとじま臨海公園水族館しながわ水族館大洗水族館越前松島水族館、高千穂峡淡水魚水族館、下田海中水族館マリンピア松島水族館さいたま水族館蒲郡市竹島水族館魚津水族館八景島シーパラダイスなど、数多くの施設を羅列できる。
  2. ^ ドクターフィッシュ 歩廊 miyanichi e press 2012年09月28日。宮崎市の大淀川学習館の例。

出典

  1. ^ ドクターフィッシュ 豆事典」『うんちく:福井新聞』福井新聞。2023年12月1日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g ドクターフィッシュの生態学 (日経サイエンス2007年8月号)」『日経サイエンス』日本経済新聞、2007年。2023年12月1日閲覧。
  3. ^ a b Mademoiselle・H(マドモワゼル・アッシュ) (2011年8月5日). “連載「夜の地球の歩き方」より”. ZAKZAK. 2011年8月5日閲覧。
  4. ^ a b c d 淡水魚が皮膚をついばみ代謝促進? 万葉の湯「ドクターフィッシュ」話題に」『博多経済新聞』博多経済新聞、2009年7月27日。2009年7月27日閲覧。
  5. ^ a b c Philip SHISHKIN (2009年3月23日). “Ban on Feet-Nibbling Fish Leaves Nail Salons on the Hook”. wsj.com. 2013年4月10日閲覧。
  6. ^ a b c ドクターフィッシュでエイズ感染の恐れ!気持ちはいいが…-政治・社会”. ZAKZAK (2011年10月19日). 2012年1月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年4月10日閲覧。
  7. ^ "Guidance on the Management of the Public Health Risks from Fish Pedicures".” (英語). Health Protection Agency(イギリス健康保護局). p. 9 (2012年9月11日). 2012年9月11日閲覧。
  8. ^ 地上高273メートルの「空中すいぞくかん」 ドクターフィッシュが人気」『ヨコハマ経済新聞』ヨコハマ経済新聞、2009年8月27日。2009年8月27日閲覧。
  9. ^ a b c d ドクターフィッシュ繁殖に成功 のとじま水族館 体験展示拡大へ (2010年1月8日03時37分 北國・富山新聞 石川のニュース)」『北國・富山新聞』2010年1月8日。2010年1月8日閲覧。「水の汚れで死ぬ場合も有るとする出典。」
  10. ^ 宇部のインターネットカフェで「ドクターフィッシュ」 山口県初登場」『山口宇部経済新聞』2009年9月7日。2010年1月8日閲覧。
  11. ^ Frequently Asked Questions”. Doctor Fish Spa. 2013年4月10日閲覧。
  12. ^ a b ニセ!ドクターフィッシュ登場!?(S.K) 蒲郡市竹島水族館 スタッフ日誌(2006年10月16日15:58)”. blog.livedoor.jp (2006年10月16日). 2006年10月16日閲覧。

関連項目

  • 掃除魚 - 大型魚のための「ドクターフィッシュ」とも呼ばれる。
  • マゴットセラピー - 壊死した生体組織の部分だけを、無菌的に繁殖させたウジに食べさせて取り除く治療法。痛みは少ない。
  • デブリードマンドイツ語: debridement) - 傷や傷付近の付着物などを、人為的に除去する治療法。強い痛みを伴うことある。
  • グルーミング - サルなどで見られる体表部に寄生したダニなどを取り除く行為。

外部リンク


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