DNA修復速度の変化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/29 13:52 UTC 版)
DNA損傷の頻度が増加し、その修復能力を超過するようになると、遺伝情報の誤りが蓄積して細胞はそれに耐えられなくなり、結果として、老化、アポトーシスあるいは癌化する。DNA修復機構の欠損による遺伝病は、早期老化(例えば、ウェルナー症候群など)や発癌性物質に対する感受性の増加(例えば、色素性乾皮症など)を引き起こす。動物における研究でも、DNA修復遺伝子機能発現を阻止したところ、同様の症状を示すことが知られている。 他方、DNA修復機構が強化された生物、たとえば、放射線照射耐性細菌デイノコッカス・ラディオデュランス (Deinococcus radiodurans: 「最も放射線に強い細菌」としてギネスブックに記載されている)などは顕著な放射線耐性を有するが、これは、DNA修復酵素の修復速度が格段に速く、放射線により誘起された損傷に追いついていけることと、遺伝子のコピーを4〜10個ほど持っている(例えば、デイノコッカス・ラディオデュランスはゲノムを環状DNAとして、多量体となった染色体の形で保持している)ことなどによる。 ヒトに関する研究において、百歳以上の日本人では、ミトコンドリアの遺伝子型はDNA損傷を受けにくい型のものが一般的であることが分かっている。また、喫煙家での研究では、強力なDNA修復遺伝子hOGG1の表現型が劣性となるような変異を持つ人の場合、肺やその他の喫煙に関係する癌に対し脆弱になっている事が知られている。 この変異に関連している一塩基変異多型 (SNP) は臨床的に検出することができる。
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