CASA 2.111とは? わかりやすく解説

CASA 2.111

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/17 02:58 UTC 版)

2.111 / C-2111

飛行する2.111B (1968年撮影)

2.111は、スペインCASA(カーサ)社でライセンス生産されたHe 111派生の中型爆撃機である。

この2.111は、外観上は第二次世界大戦中のHe 111Hと本質的に同じ機体そのものを使用していたが、重武装や果てにはロールス・ロイス社のマーリンエンジンを装備したように後に細部がかなり異なっていった機体であった[2]。スペイン軍ではC-2111との呼称で呼ばれた。

設計と開発

スペイン内戦中の1937年ナショナリスト軍空軍は、ドイツから多数のHe 111Bの引き渡しを受けた。この引き渡しは改良型のHe 111Dに始まり、内戦終結後のHe 111Eまで続いた。より近代化された機体への要望があったため、1940年にCASAはハインケル社とセビリアで新型のHe 111 H-16を200機生産する契約の交渉を行った[2]第二次世界大戦の最中であったためドイツ側からの援助はほとんど受けられず、生産準備の進捗は緩慢としたものであった。

スペインはフランス国内にユンカース ユモ 211F-2エンジンの保管場所を手配し、これにより130基のユモ・エンジンを完成させることができた(但し、部品取りエンジンが必要だったため実際に納入できたのは117基のみ)[3]。このようにして完成した機体には、中型爆撃機の2.111A、偵察爆撃機の2.111C、複式操縦装置付き練習機の2.111Fという3種類があった[4]

運用

最初のCASA製の機体は1945年5月23日に初飛行を行った[5]

大戦が終了するとドイツ産のユンカース製エンジンの入手が困難となり、CASAはこれをロールス・ロイス マーリン 500に換装することにした。1956年4月に173基のマーリンエンジンが発注され、元々はロールス・ロイス社がボーファイター IIのために開発し、後にアブロ ランカスター機にも使用されたクラフティ式ナセルに装着された[要出典]。新たにマーリンエンジンを与えられた爆撃機と偵察爆撃機は、あるものはエンジンを換装され、あるものは新造機として各々2.111Bと2.111Dになった。9名が搭乗可能な輸送機型の2.111T8も開発されて製造された[4]。スペインの2.111 は、1960年代まで現役を務め、輸送機型は1970年代初めまで使用された。多くの機体は1960年代には退役したが、ハインケル He111との外観上の近似性から『空軍大戦略』や『パットン大戦車軍団』といった映画で退役後も活用された。

CASA 2.111は1957-1958年のイフニ戦争において近接航空支援の任務で実戦に使用された。

諸元

2.111B

出典: Jane's All The World's Aircraft 1953–54[6]

諸元

性能

  • 最大速度: 440 km/h (238 kn) 273 mph
  • 航続距離: 1,950 km (1,053 nmi) 1,212 mi
  • 実用上昇限度: 7,800 m (25,591 ft)

武装

  • ブレダ [[SAFAT>ブレダSAFAT機関銃]]12.7㎜機銃×1

MG157.92㎜機銃×2

ないし10kg爆弾×28発 ないし8kg爆弾×32発

使用されている単位の解説はウィキプロジェクト 航空/物理単位をご覧ください。

派生型

2.111A
ユンカース ユモ 211 エンジンを搭載したHe-111H-16のライセンス生産
2.111C
偵察機
2.111F
練習機
2.111B
エンジンをロールス・ロイス マーリン 500-29に換装
2.111D
マーリンエンジン搭載の偵察機型
2.111E
輸送機

現存する機体

型名   番号 機体写真     国名 所有者 公開状況 状態 備考
C-2111B 005 ドイツ ジンスハイム自動車・技術博物館[1] 公開 静態展示 [2]
C-2111B 025 ドイツ ドイツ博物館 シュライスハイム航空館[3] 公開 静態展示 [4]
C-2111B 053 イギリス ダックスフォード帝国戦争博物館[5] 公開 修復中
C-2111F 108 スペイン スペイン航空宇宙博物館[6] 公開 静態展示
C-2111D 123 フランス ル・ブルジェ航空宇宙博物館[7] 公開 静態展示 [8]
C-2111B 125 ドイツ ベルリン・ガトウ空港軍事歴史博物館[9] 公開 静態展示 [10]
C-2111D 145 ドイツ ピーター・ユニォア飛行機展示場[11] 公開 静態展示
C-2111B 150 オーストリア 不明 不明 不明
C-2111B 152 写真 アメリカ 国立アメリカ空軍博物館[12] 非公開 保管中 [13]
C-2111E 155 アメリカ キャヴァナー飛行博物館[14] 公開 静態展示 [15]
C-2111B 167 写真 イギリス サウスエンド航空機博物館[16] 公開 静態展示 [17]
C-2111B 169 イギリス ヴァルカン・ウォーバーズ社
(Vulcan Warbirds Inc.)
公開 静態展示

出典

脚注

  1. ^ "He 111." Deutsches Museum. Retrieved: 13 January 2007.
  2. ^ a b "Heinkel He 111." EADS N.V. Retrieved: 17 January 2007.
  3. ^ Cruz 2000, pp. 49–50.
  4. ^ a b Wilson, Randy. "It's a Heinkel: the Luftwaffe's workhorse Heinkel 111 bomber." The Dispatch, Volume 12, Number 4, Winter 1996. Retrieved: 25 February 2007.
  5. ^ Cruz 2000, pp. 48–49.
  6. ^ Bridgman 1953, p. 185.

参考文献

  • Cruz, Gonzalo Avila. "Homegrown 'Pedros': Spanish-Built Heinkel He 111s: Part One-Jumo Variants". Air Enthusiast, No. 90, November/December 2000, pp. 48–53. Stamford, UK:Key Publishing. ISSN 0143-5450.
  • Cruz, Gonzalo Avila. "Homegrown 'Pedros': Spanish-Built Heinkel He 111s: Part Two-Merlin Variants". Air Enthusiast, No. 91, January/February 2001, pp. 8–18. Stamford, UK:Key Publishing. ISSN 0143-5450.
  • Lambert, C.M. "Handling the Spanish Heinkel 111". Flight, 17 August 1956, pp. 247–248.

外部リンク


CASA 2.111

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/09 07:36 UTC 版)

ハインケル He111」の記事における「CASA 2.111」の解説

CASA 2.111は、スペイン航空機メーカーコンストルクシオネス・アエロナウティカス S.A.社(CASA)がライセンス生産したHe 111である。 詳細は「CASA 2.111」を参照 He 111 H-16が基となっている。1945年5月23日初飛行1956年までに236機が製造された。 初期機体エンジンは、オリジナル同じくユモ 211 F-2(1,350hp)を搭載した。しかし、ドイツ敗戦により製造元ユンカース軍用品製造禁止されたため、消耗部品調達ができずにエンジン整備困難な状況陥った。そのため、1953年より製造され機体からは、部品入手容易なロールス・ロイス製の民間用エンジンマーリン 500-20(1,500hp)を搭載するようになったエンジン変更により、エンジンカウルとエアインテーク形状変わった実戦では、1957年 - 1958年に、モロッコとのイフニ戦争近接航空支援として投入された。 1973年全機退役した退役した機体中には第二次世界大戦題材とした戦争映画にHe 111として、ドイツ空軍塗装変更されたうえで撮影使用されているものもある。

※この「CASA 2.111」の解説は、「ハインケル He111」の解説の一部です。
「CASA 2.111」を含む「ハインケル He111」の記事については、「ハインケル He111」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「CASA 2.111」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「CASA 2.111」の関連用語

CASA 2.111のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



CASA 2.111のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのCASA 2.111 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaのハインケル He111 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS