ATP合成酵素の一分子観測
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 07:45 UTC 版)
「ATP合成酵素」の記事における「ATP合成酵素の一分子観測」の解説
回転触媒説を実証したこの実験は、アイディアに富んだ面白い実験である。以下にプロセスを示す。 ヒスチジンタグを付けた組み換え F1 部位を作成する。 ヒスチジンタグを特異的に吸着するガラス表面に タグ付きのF1 部位を固定する。 F1 部位のγサブユニットに蛍光標識したアクチンフィラメントをストレプトアビジンを用いて接着する。 溶媒中にATPを添加する。 蛍光顕微鏡でガラスの表面を観察する。 アクチンフィラメントの回転がATPの加水分解によって引き起こされる現象が観察できる。 少々乱暴ながらも比喩的に説明すると、回転していると思われる部分に、回転方向と水平方向に顕微鏡で動画が観測できる大きさの細長い付箋を貼り付けて、その付箋が回転しているかどうかを観測したのである。この方法を用いると回転のみならず、アクチンの長さを変化させることによって発生トルクも測定することができる。この方法で測定したATP合成酵素は、生体内で毎秒100回転していることがわかった。またエネルギー変換効率は 100% 近く、これほど効率の高いATP利用系は生物体内ですらこの他に見つかっていない(例えばミオシンは 20%、ダイニンは 50% 程度)。
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