ASRAAM_(ミサイル)とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > ASRAAM_(ミサイル)の意味・解説 

ASRAAM (ミサイル)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/09/30 05:21 UTC 版)

AIM-132 ASRAAM
ILA 航空ショーで展示される模擬弾
種類 短距離空対空ミサイル
設計 MBDA
就役 1998年
性能諸元
ミサイル直径 16.6cm
ミサイル全長 2.9m
ミサイル全幅 45cm
ミサイル重量 87kg
射程 300m-15km[1](最大25㎞以上[2][3](50㎞前後[4][5]))
推進方式 固体燃料ロケット
誘導方式 中途航程:INS+COLOS
終末航程:赤外線画像(IIR)
飛翔速度 M3.5
テンプレートを表示

ASRAAMAdvanced Short Range Air-to-Air Missile、アスラーム)は、イギリス赤外線誘導空対空ミサイル

経緯

1980年代NATO加盟諸国は、次世代の空対空ミサイルの開発について覚書を結んだ。それは、アメリカ合衆国が中心となり、AIM-7 スパローに代わるAIM-120 AMRAAM中距離空対空ミサイルを開発し、イギリスドイツを中心にAIM-9 サイドワインダーに代わるASRAAM短距離空対空ミサイルの開発分担を行うというものであった。

1992年よりASRAAMの本格開発が開始されたが、1990年代初期にドイツ再統一によって旧東ドイツ空軍から受け継いだMiG-29戦闘機に搭載されたR-73(AA-11 アーチャー)がもたらされると共同開発に亀裂が生じた。それまでNATOによる評価が低かったR-73は広視野角シーカーや推力偏向機構を持ち機動性に優れたミサイルである事が判明、これに感銘を受けたドイツはASRAAMにR-73と同等かそれ以上の機動性を求めて再設計を行おうとしたが、一方のイギリスは機動性は限定的なまま抵抗減と高速化によりサイドワインダーよりも大幅に射程を伸ばす案を支持した。ドイツとイギリスは合意に達することができなかったため、最終的にドイツは資金と技術的問題によりASRAAM プロジェクトを離れ、IRIS-Tの開発に取りかかった。

ASRAAMの設計に関するイギリスとドイツの長い検討に起因する開発の遅れに、アメリカは待ちきれずサイドワインダー(AIM-9X)の改良を開始した。イギリスはASRAAMのシーカーにヒューズ社のフォーカル・プレーン・アレー(Focal Plane Array)を選択した。皮肉にもサイドワインダーとASRAAMの双方ともヒューズ社が開発した赤外線画像シーカーを使い、ヒューズ社はサイドワインダーのために使用した同じ技術で双方の選定に勝利した。レイセオン社も双方に提案を出したが、ヒューズ社に敗れてしまった。しかし、レイセオン社はヒューズ社を買収し、最終的にASRAAMとAIM-9X サイドワインダーのシーカー製造はレイセオン社となった。

ASRAAM プログラムが再開することで、アメリカはASRAAMを短距離空対空ミサイルの候補にすると考えられたが、機動性に対する認識からイギリスと合意することはなかった。なお、アメリカ軍はASRAAMを採用していないものの、AIM-132の名称をミサイルに与えている。

特徴

シーカーにはヒューズ社が開発した多素子化されたフォーカル・プレーン・アレー(FPA、解像度128x128ピクセル)が採用されていて、赤外線画像(IIR)誘導方式となり、感度はAIM-9Mの400倍に向上した。このシーカーは長距離捕捉、高度な抵抗対策、おおよそ90度のオフボアサイト・ロックオン能力などがあり、他にも目標とした航空機コックピットエンジンといった特定の部分を指定する機能をもっている。 また、射程に関してもミサイル本体の幅がサイドワインダーやIRIS-Tなど(127mm)よりも広く、これにより、他の同様のミサイルと比較して、遥かに長くロケットモーターを燃焼できることから初期の運用コンセプト通りの高い射程を有している。[4]

LOAL(発射後ロックオン)能力も備えており、将来的にF-35 ライトニング IIウェポンベイに搭載する際の強みとなる。 しかし、現在(2021年)では将来の選択肢としては残っているものの、計画としては外側の翼のパイロンに搭載するのみという考えである。

戦闘機への搭載にあたっては、サイドワインダーとの電気的互換性を有する。

今後の展開

2007年9月のDSEi会議で、英国国防省が短距離防空用レイピアミサイルシステム個艦防空用シーウルフミサイルの代替品を調査するためのMBDAによる研究に資金を提供していることが発表された。共通モジュール式対空ミサイル(CAMM)はASRAAMとコンポーネントを共有することになる。[6]一般的なコンポーネントには、ROXEL S.A.S.社製の非常に低シグネチャのロケットモーター、弾頭、タレス社製の近接信管などがある。[7]CAMMは優れたレーダーシステムを使用して、海上または陸上の脅威を追跡し、データリンクを使用してミサイルを脅威の場所まで修正して、十分に近づくとレーダーアクティブ・レーダー・ホーミングに切り替えることができ、これにより陸上では射手が発射した位置から素早く移動することができ、海上では終末誘導に火器管制レーダーを使用せずに誘導できるため、同時に対処できるミサイルの量が増加するといったメリットがある。

ASRAAMブロック6は2022年タイフーンで、2024年F-35 ライトニング IIでの運用開始される予定でこれには、ピクセル密度を高めた新世代のシーカーや組み込みの極低温冷却システムなど、新しく更新されたサブシステムが組み込まれており、特に、この新しいシーカーはイギリスのボルトンで製造されており、これにより完全に米国の国際武器取引規則(ITAR)の対象から外れての輸出が可能となり、アメリカの反対によって中止されていたミサイルをサウジアラビアに販売する計画が復活する可能性がある。[8]

運用国

イギリス空軍トーネードハリアーIIタイフーン1998年より配備開始。
イギリス海軍F-35 ライトニング IIイギリス空軍との共同運用ではあるが機材と人員は第617飛行隊に組み込まれている。
インド空軍Su-30MKI
カタール空軍[9]
アラブ首長国連邦空軍F-16E/F

脚注

参考文献

関連項目

外部リンク


「ASRAAM (ミサイル)」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ASRAAM_(ミサイル)」の関連用語

ASRAAM_(ミサイル)のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ASRAAM_(ミサイル)のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのASRAAM (ミサイル) (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS