3. 官爵の登用を重んぜらるべき事
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/08 08:03 UTC 版)
「北畠顕家上奏文」の記事における「3. 官爵の登用を重んぜらるべき事」の解説
現存第3条は、「可被重官爵登用事」(「官爵の登用を重んぜらるべき事」)で、官爵の登用を慎重に行うべきことを主張している。 この条項で、顕家の思想に特徴的なのは、「能力」と「成果」を切り分け、おのおのの長所を混同せず、別の種類の報奨である「官位」と「恩賞」をそれぞれ与えよ、と考えていたことである。つまり、能力のある人には官位を与えて朝廷に任官登用し、たまたま成果はあげたものの能力はそれほどでもない人物には土地と俸禄を恩賞として与えよ、官位と恩賞は同列に扱ってはならない、と指摘している。 重ねて、近年、資格のない成り上がり者や武士が文官になることを許されているが、これは国家の乱れのもとである、とも警告している。顕家は自身が敵対視する「成果は上げたが官人としての才能はない人物」の具体名を列挙していないが、足利尊氏は無論、元弘の乱の成果で高い官職を得た左中将新田義貞や、後醍醐天皇の寵臣「三木一草」(結城親光・名和長年・楠木正成・千種忠顕)らを含め、本質的には元弘の乱の功績によって建武政権で官位を得た全ての人間が、顕家の批判対象であったろう。父の北畠親房も顕家と同様、『神皇正統記』で、後醍醐天皇が「恩賞としての官位」政策を押し進め尊氏に(従二位参議など)きわめて高い官位を与えたことを批難している。ただし、現実の施策上は、親房自身、その後半生では、武士からの求心力を集めるために「恩賞としての官位」を最も積極的に配布した人物の一人となっている。
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