2天体の共通重心の位置
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/13 07:57 UTC 版)
2つの天体が二重惑星を形成しているかどうかを判断する指針としてよく利用されるのは、2つの天体の共通重心がいずれの天体の表面よりも外側、すなわち宇宙空間にあるかどうかによって判断する方法である。まず、共通重心がいずれかの天体内部にあればその系は惑星と衛星だと判断し、共通重心を内部に持つ側の天体を母惑星、もう一方をその衛星とする。逆に共通重心が宇宙空間にあればその系は二重惑星だと判断する。 これは2つの惑星がお互いの周りを廻るという二重惑星の持つイメージと一致する判断基準である。この定義によれば、地球‐月は共通重心が地球中心から0.74地球半径しか離れていないので惑星‐衛星系となり、冥王星‐カロンは共通重心が冥王星中心から約2.0冥王星半径離れた宇宙空間にあるため二重惑星となる。 しかしこの定義の場合、2つの天体間の距離が判断基準に影響を与えることになる。例えば、地球と月の距離は現在も少しずつ離れつつあるが、地球と月の距離があと1.35倍遠ざかれば共通重心は地球外に出てしまう。つまり2天体の共通重心の位置による定義に従うと、地球と月自体には何の変化もないにもかかわらず、距離の変化のみによって惑星・衛星系から二重惑星系に変わってしまう。 さらにこの定義は主惑星の密度にも依存する。仮に地球の質量はそのままで密度が2.45倍になれば、地球の半径が小さくなるため地球と月の共通重心は地球外に出てしまう。つまりこの定義に従うと、密度が高い惑星は二重惑星となりやすく、密度が低い惑星は二重惑星になりにくいことになる。 またこの定義は、主惑星の自転速度にも依存する。静水圧平衡の状態にある天体が自転すると、赤道付近が膨らんだ回転楕円体(扁球)となる。仮に冥王星が非常に高速で自転し、その赤道半径が2010年現在に予想されている値の2倍を超えると、カロンとの共通重心が冥王星内に入ってしまう。 以上のように「2天体の共通重心の位置がどちらの天体内にもない」という基準は、二重惑星が持つ「質量が似通っている」というイメージに必ずしも合致する基準ではないことがわかる。
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