1490年代の絵画作品
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「レオナルド・ダ・ヴィンチ」の記事における「1490年代の絵画作品」の解説
レオナルドが1490年代に描いた絵画作品のなかで最も有名な作品は、ミラノのサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ修道院の食堂にある壁画『最後の晩餐』である。この作品にはキリストが捕縛、処刑される直前に、12名の弟子たちとともにとった夕餐の情景が描かれており、キリストが「あなたがたのうちのひとりが、わたしを裏切ろうとしている」と口にした瞬間が描写されている。レオナルドは、このキリストの言葉によって12名の弟子たちが狼狽したという『ヨハネによる福音書』の一場面をこの壁画に描き出したのである。 レオナルドの同時代人のイタリア人著述家マッテオ・バンデッロ(1480年頃 - 1562年)は、レオナルドがこの『最後の晩餐』の製作中には、数日間夜明けから夕暮れまで食事も採らずに絵画制作に没頭し、その後3、4日は全く絵筆を取らなかったとしている。この制作手法は修道院長には理解し難いものであり、レオナルドがミラノ公ルドヴィーコ・スフォルツァに苦情を申し立てるまで、上級幹部たちはレオナルドに迅速な作業を要求した。ヴァザーリは、レオナルドが『最後の晩餐』に描くキリストと裏切り者ユダの顔の表現に苦労しており、修道院長をモデルにするかもしれないとルドヴィーコに語ったと記している。 完成した『最後の晩餐』は、構成、人物表現ともに非常に優れた作品だと評価されたが、急速に状態が劣化していき、完成の百年後には「完全に崩壊した」といわれるようになった。レオナルドはこの壁画を制作するにあたって信頼の置けるフレスコ技法ではなく、ジェッソを主材料とした下塗りの上からテンペラを用いたため、作品表面にカビが生じ、顔料の剥落を招いてしまったのである。このような非常に大きな損傷を被っているとはいえ、『最後の晩餐』は最も模写や複製などが制作された絵画作品の一つであり、絵画だけではなく絨毯やカメオなど、様々な媒体に複製されている。
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