1,1'-ビ-2-ナフトールとは? わかりやすく解説

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1,1′‐ビナフタレン‐2,2′‐ジオール

分子式C20H14O2
その他の名称β-Dinaphthol、β-ジナフトール、1,1'-Binaphthalene-2,2'-diol、ビノール、BinolBINOL、2,2'-ジヒドロキシ-1,1'-ビナフチル、(RS)-1,1'-ビ-2-ナフトール(S)-1,1'-ビ-2-ナフトール、1,1'-Bi[naphthalene]-2,2'-diol、1,1'-Bi-2-naphthol、(S)-BINOL、1,1'-Bi(2-naphthol)、1,1'-Bi[2-naphthol]、(RS)-1,1'-Bi-2-naphthol、(S)-1,1'-Bi-2-naphthol、1,1'-Bi[naphthalen-2-ol]、2,2'-Dihydroxy-1,1'-binaphthyl
体系名:1,1'-ビ(2-ナフトール)、2,2'-ジヒドロキシ-1,1'-ビナフタレン、1,1'-ビ[ナフタレン-2-オール]、[1,1'-ビナフタレン]-2,2'-ジオール、1,1'-ビ[2-ナフトール]、1,1'-ビナフタレン-2,2'-ジオール、1,1'-ビ[ナフタレン]-2,2'-ジオール、1,1'-ビ-2-ナフトール


1,1'-ビ-2-ナフトール

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2014/11/01 14:32 UTC 版)

1,1'-Bi-2-naphthol
識別情報
CAS登録番号 [602-09-5 Racemic: [602-09-5]]
(R)-(+): [18531-94-7],
(S)-(-): [18531-99-2]
PubChem 11762
特性
化学式 C20H14O2
モル質量 286.32 g/mol
融点

205-211 °C

特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

1,1'-ビ-2-ナフトール (BINOL)は、遷移金属触媒を用いた不斉合成にしばしば用いられる有機化合物である。BINOLは軸不斉を持つため、二つの光学異性体があり、それらは光学分割することができ、通常、ラセミ化は起こらない。各々の光学異性体の旋光度は+/- 35.5°(c=1 in THF)である。BINOLは重要な不斉配位子であるBINAPの原料でもある[1]

合成方法

BINOLを合成すること自体はそれほど難しくは無いが、それぞれの光学異性体を分離するのは困難である。 例えば、BINOLのラセミ体は2-ナフトールから塩化鉄(III)を酸化剤として用いて合成することができる。反応は、2-ナフトールのヒドロキシ基で鉄と錯体を生成した後に、2-ナフトールの環がラジカル的にカップリングすることで起こる。この際、鉄は3価から2価に変化する。

また、(S)-BINOLは、塩化銅(II)と(+)-アンフェタミンを用いた2-ナフトールの不斉酸化カップリングによって直接作ることができる[2]

光学活性なBINOLはラセミ体のBINOLの光学分割によっても得ることができる。ひとつの例として、アルカロイドの一種であるN-ベンジルシンコニヂニウムクロライドと、結晶性の包接化合物を形成させる方法がある。BINOLのS体の包接化合物はアセトニトリルに溶解するのに対して、R体は溶解しないことから、それぞれを分離することができる[3]

もうひとつの方法は、BINOLをペンタン酸クロリドの様なカルボン酸塩化物と反応させてジエステルとした後に、ウシ膵臓由来のコレステロール エステラーゼの様な酵素を加える方法である。S体のジエステルのみが加水分解し、R体は加水分解しないため[3]、二つを分離することができる[4]

また、キラルな固定相を持つHPLCを使って分離することもできる。[5]

BINOL化合物

BINOL化合物はBINAPなど多くの種類がある。そのうちアルリビス(ビナフトオキシド)と呼ばれる化合物は水素化アルミニウムリチウムとBINOLの反応によって合成される[6]

シクロヘキセノン英語版マロン酸ジメチルとともに不均斉マイケル付加英語版)に利用されている。

脚注

  1. ^ "Binap: An industrial approach to manufacture"
  2. ^ Brussee, J.; Jansen A. C. A. (1983). “A highly stereoselective synthesis of s(-)-[1,1′-binaphthalene]-2,2′-diol”. Tetrahedron Letters 24 (31): 3261–3262. doi:10.1016/S0040-4039(00)88151-4. 
  3. ^ a b "RESOLUTION OF 1,1'-BI-2-NAPHTHOL", Dongwei Cai, David L. Hughes, Thomas R. Verhoeven, and Paul J. Reider, in Organic Syntheses Coll. Vol. 10, p.93; Vol. 76, p.1
  4. ^ "(S)-(−)- AND (R)-(+)-1,1'-BI-2-NAPHTHOL", Romas J. Kazlauskas in Organic Syntheses, Coll. Vol. 9, p.77; Vol. 70, p.60
  5. ^ Landek, G.; Vinković M., Kontrec D. and Vinković V. (2006). “Influence of mobile phase and temperature on separation of 1,1 '-binaphthyl-2,2 '-diol enantiomers with brush type chiral stationary phases derived from L-leucine”. Chromatographia 64: 469–473. doi:10.1365/s10337-006-0041-5. 
  6. ^ A practical large-scale synthesis of enantiomerically pure 3-[bis(methoxycarbonyl)methyl]cyclohexanone via catalytic asymmetric Michael reaction Tetrahedron英語版, Volume 58, Issue 13, 25 March 2002, P.2585–2588 Youjun Xu, Ken Ohori, Takashi Ohshima, Masakatsu Shibasaki doi:10.1016/S0040-4020(02)00141-2

関連項目

外部リンク


1,1'-ビ-2-ナフトール(BINOL)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/13 19:12 UTC 版)

不斉補助剤」の記事における「1,1'-ビ-2-ナフトールBINOL)」の解説

軸不斉を持つ、1,1'-ビ-2-ナフトールBINOL)は、1985年から不斉補助剤として利用されている。 山本尚は、(R)-BINOL不斉補助剤として用いて、リモネンの不斉合成行った(R)-BINOL片方ヒドロキシ基のみエーテル化され化合物を、(R)-BINOLにモノシリル化とアルキル化を行うことにより得た。この化合物有機アルミニウム化合物還元することにより、d-リモネンが低収率29 %)、中程度鏡像体過剰率64% ee)にて得られた 。 京都大学化学研究所冨士薫らは、(R)-BINOL不斉補助剤として用いてグリシン誘導体アルキル化行い種々のエナンチオリッチな非天然型アミノ酸合成成功した異な求核剤用いると、ジアステレオマー過剰率は6984 % de変化する(R)-BINOLによって保護されフェニルグリオキサールは、グリニャール試薬とジアステレオ選択的に反応し対応する[ラクトアルデヒド]誘導体保護体を高い収率、ジアステレオ過剰率にて与えた

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