鼈(すっぽん)
*関連項目→〔亀〕
『東海道中膝栗毛』(十返舎一九)2編上「三島」 三島宿の手前で、2~3人の子供が大きなすっぽんをつかまえて遊んでいた。弥次・喜多は、子供たちからすっぽんを買い取り、藁苞(わらづと)に包んで、「今夜、宿屋で食べよう」と提(さ)げて行く。ところが、夜、彼らが女郎と寝ている間に、すっぽんは藁苞を食い破って這い出し、弥次郎兵衛の指に噛みついたので、大騒ぎになる。翌朝、喜多八は「よね(=女郎)たちと寝たる側(そば)には泥亀(すっぽん)も恥づかしいやら指をくはへた」と狂歌を詠んで、弥次郎兵衛をからかった。
★2.三足の鼈。
『和漢三才図会』巻第46・介甲部「能鼈(みつあしのすっぽん)」 明代の『本草綱目』に言う。昔、ある人が三足の鼈を手に入れ、婦(つま)に命じて烹(に)させ、食べ終わって臥した。しばらくすると、その人は形を失い血水と化して、髪だけが残った。隣人は、婦が夫を謀殺したかと疑い、官に訴えた。知県の黄廷宣が婦を尋問したが要領を得ないので、もう1度、婦に三足鼈を烹させて、死刑囚に食べさせる。すると彼も血肉になってしまった。
★3.亀と鼈の遊び。
『暗夜行路』(志賀直哉)後篇第四の5 小学生時代、要(かなめ)は、従妹の直子と近所の女の児を誘って、「亀と鼈」という遊びをした。円硯(まるすずり)を庭に隠しておき、子供役の女の児がそれを探し出す。女の児は障子の外から「お母さん、亀を捕りました」と云い、お母さん役の直子が「それは亀ではありません」と答える。その時、要が大きな声で「鼈(すっぽん)」と怒鳴る、という遊びだ。この遊びは下男から教えられた。その卑猥な意味は、要にだけはいくらかわかっていた。3人は幾度かこの遊びを繰り返した。
『和漢三才図会』巻第46・介甲部「和尚魚」 西海の大洋中に海坊主がいる。身体は鼈、人面で頭髪がない。大きなもので5~6尺。漁人は「海坊主を見るのは不祥」とする。捕らえて殺そうとすると、海坊主は両手を胸の前に組み、泪を流して救いを乞う。「助けてやるから、今後、私の漁を妨げるな」と言うと、了承のしるしに西へ向かい天を仰ぐ仕草をする。いわゆる和尚魚とはこれである。
鼈と同じ種類の言葉
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