養蜂における影響
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/14 09:34 UTC 版)
オオスズメバチが日本産亜種であるニホンミツバチを含むトウヨウミツバチ (Apis cerana) の巣を襲撃した場合、オオスズメバチの集団攻撃が始まるまでにこの単独のオオスズメバチが撃退されなければ、オオスズメバチはミツバチの巣を占拠できる可能性が非常に高くなる。集団攻撃より前の撃退とは、オオスズメバチの働き蜂が単独で偵察している(集合フェロモンにより同じ巣の働き蜂を集結させる前の)段階で、ミツバチが集団で敵を押し包む行動によって作られる蜂球で蒸し殺されることをいう。蜂球の内部はオオスズメバチの致死温度(44 - 46 ℃)に近い46 ℃になり、かつ蜂球内の二酸化炭素濃度が3-4%ほどまで上昇し、相対湿度が90%以上に向上することで、オオスズメバチの致死温度を下げることがわかっている。 セイヨウミツバチ (A. mellifera) は基本的に蜂球を作らないが、2・3回、オオスズメバチを提示すると、蜂球を形成することが実験で確認されている。トウヨウミツバチとセイヨウミツバチの共通祖先がすでに蜂球行動をしていた可能性がある。また、セイヨウミツバチは、大群で相手の腹の周りを圧迫して呼吸を阻害し、約1時間かけて窒息死させる窒息スクラムという対抗手段を持っている。しかし、これはモンスズメバチ以下の敵しか想定していないため、オオスズメバチに対抗する方法にはならず、養蜂家による庇護がなければ高確率での全滅を余儀なくされる(数十匹ほどのオオスズメバチが、4万匹のセイヨウミツバチを2時間ほどで殲滅できるという)。このことが、飼育群からの分蜂による野生化が毎年あちこちで発生しているにもかかわらず、セイヨウミツバチが日本で勢力拡大するのを防ぐ要因になっていると考えられる。実際、オオスズメバチの生息していない小笠原諸島ではセイヨウミツバチの野生化群が増加し、在来のハナバチ類を圧迫して減少させていることが確認されており、これらのハナバチ類と共進化して受粉を依存している固有植物への悪影響が懸念されている。
※この「養蜂における影響」の解説は、「オオスズメバチ」の解説の一部です。
「養蜂における影響」を含む「オオスズメバチ」の記事については、「オオスズメバチ」の概要を参照ください。
- 養蜂における影響のページへのリンク