風上の重要性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/12 04:45 UTC 版)
風上をとるということは戦術的に重要なポイントとなった。風上を取った提督は戦闘の主導権を握った。風上を維持することで敵を叩くことも回避することもできた。風下の艦隊はさらに風下に逃げることはできたが、戦いを挑むことは出来なかった。2つの船隊が接近していて風下に向かえば後ろを襲われる危険性が高いような場合は、風下に撤退することすら難しかった。風下にいることの2つめの欠点は、弱風以外の時に接近戦を演じていると、風圧で風下に傾き船底を敵の砲の前にさらけ出してしまうことである。通常は水面下にある船体の一部に穴を空けられれば、逆の傾きになった時に浸水し、さらに沈没さえしてしまう危険性がある。このことは「風と水の間の船殻("hulled between wind and water")」として知られる。もう一つ、風上の船から流れてくる硝煙は当然風下に向かって視界を悪くする。提督が敵の風上を取ろうとして何日も操船に費やすような戦いがよく行われた。例えば、1778年のウェサン島の海戦、1780年のセントルシア海峡の海戦、1794年の栄光の6月1日の海戦などである。 強風が吹く場合にのみ、風上に不利が生じる。風下側に傾き低くなった砲門が波に洗われるので、浸水のリスクを避けるには低層甲板の開口部を閉じておかねばならないからである。そのため、風上から攻撃する艦は下層甲板に装備した重砲を使うことができないのに対し、一方風下の敵艦は風上側の砲が船の傾斜で持ち上げられるのでそのような問題がない。この理由から、荒天で行われた1780年のサン・ビセンテ岬の月光の海戦では、ジョージ・ロドニー提督は指揮下の艦にスペイン艦隊を風下から攻撃するよう命じた。
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