非循環的電子伝達系
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/29 04:23 UTC 版)
光化学反応の非循環的電子伝達系は水の光分解を行い、植物のみならず地球科学的にも非常に重要な反応を担っている。しかしながら、いくつかのタンパク質複合体が関与する複雑な反応系の一つでもあり、その詳細が今でも明らかになっているとは言いがたい。しかしながら、光化学反応の最初の研究でもあるヒル反応が観察された1939年以降、光化学系複合体の反応中心粒子の立体構造が明らかになり、その電子伝達過程が極めて短い時間内におきていることも明らかになっている。以下に、光化学反応を担当するタンパク質複合体および個々の電子伝達反応について述べる。 光化学反応は以下のタンパク質複合体により行なわれる。 光化学系複合体II(光化学系II) シトクロムb6/f複合体 光化学系複合体I(光化学系I) CFo-CF1ATP合成酵素 上記のタンパク質複合体は全て葉緑体のチラコイド膜に配置しており、構造解析は困難を極める。 非循環的電子伝達系を単純化すると、以下の段階に分けられる。 光化学系IIにて光エネルギーを吸収し、色素分子が励起されて複合体全体で酸化還元反応が起き、水が分解されて電子が引き出される。この時に、発生するプロトンはそのままプロトン濃度勾配となる。 光化学系IIで供与された電子はプラストキノンを通じてシトクロムb6/f複合体に伝達され、プロトンポンプおよびスカラー反応が起き、プロトン濃度勾配が形成される。 電子はシトクロムb6/f複合体からプラストシアニンを通じて光エネルギーを受けて励起した光化学系Iに伝達される。 光化学系Iで再び電子は光エネルギーを受けて励起され、酸化還元電位の低いフェレドキシンに伝達される。 還元型フェレドキシンは、光化学系Iに含まれるフェレドキシン-NADP+レダクターゼ (FNR) で触媒され、光化学系の最終的な還元物質NADPHが生産される。 1.および2.で発生したチラコイド内腔側に発生するプロトン濃度勾配を利用してCFo-CF1ATP合成酵素でATPのリン酸化が行なわれる(光リン酸化)。 5.および6.で合成されたNADPHおよびATPは、カルビン - ベンソン回路にて炭酸固定に用いられる。なお、非循環的電子伝達系の収支式は以下の通りである。 12H2O + 12NADP+ → 6O2 + 12NADPH + 12H+in 72H+in + 24ADP + 24Pi(リン酸) → 72H+out + 24ATP
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