階差の手法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/14 07:26 UTC 版)
階差機関の原理は差分商のニュートン補間である。多項式の初期値(とその有限差分)をある値 X について何らかの手段で計算できれば、階差機関を使ってその値を出発点として「有限差分法」と呼ばれる手法で多項式の値を次々と計算できる。以下では小さな例でその原理を示す。 次の二次多項式を考える。 p ( x ) = 2 x 2 − 3 x + 2 {\displaystyle p(x)=2x^{2}-3x+2} この多項式の数表を、xの値の増分が1の場合の、p(0), p(1), p(2), p(3), p(4) といった値について作成する。下記の表の作成方法は次の通りである。まず左のカラムは多項式の値が入っている。中央のカラムは左のカラムの上下に隣り合う2つの値の下から上を引いた差分である。そして右のカラムは中央のカラムの上下に隣り合う2つの値の下から上を引いた二階差分である。 xp(x) = 2x2 − 3x + 2diff1(x) = ( p(x+1) - p(x) )diff2(x) = ( diff1(x+1) - diff1(x) )0 2 -1 4 1 1 3 4 2 4 7 4 3 11 11 4 22 右のカラムの値が一定になる。N次多項式では、N階導関数が定数であるのと同様にN階差分は定数になる。この重要な事実により、以下に示すようにこの手法がうまく機能する。 我々はこの表を左から右へ作っていったが、二階差分が求まるp(2)よりも先は右から左に作業して、さらに多項式の計算結果を求めていく事ができる。それによって階差機関は動作する。 p(5) を求めてみよう。それには上の表の一番下の斜めのマスに入っている数値群を使用する。まず、右端のカラムの定数値4を使い、それを下の空いているマスにコピーする。次に隣のカラムの一番下の値11にその4を加え、15を得る。さらに隣のカラムの一番下の値22にその15を加える。従って p(5) は 22+15 = 37 となる。p(6) を計算するには p(5) を求める際に得られた各カラムの最新の値を使い、同様に計算すればよい。つまり、15に4を加えて19、37に19を加えて56となる。これが p(6) の値である。 必要な範囲をxの増分により必要な間隔で続けられ、好きなだけ値を求めることができる。差分機関はただ加算が出来ればよいので、多項式の値が乗算を使用せずに得られる。この例ではループするたびに2つの値を覚えておく必要がある(左のカラムと中央のカラムの一番下の値)。N次多項式の表を作るにはN個の数値を保持する機構が必要である。 バベッジの階差機関二号機は1991年に完成したが、8個の数値を31桁保持することが出来るようになっており、7次多項式の数表を作成する能力がある。ショイツの作った最も大規模なものでも 4つの15桁の数値までしか保持できなかった。
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