阪急2000系電車(2代)とは? わかりやすく解説

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阪急2000系電車 (2代)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/27 06:53 UTC 版)

阪急2000系電車 (2代目)
阪急2000系 2000F
(2025年3月23日 石橋阪大前駅
基本情報
運用者 阪急電鉄
製造所 日立製作所笠戸事業所[1][2]
製造年 2024年 -[1][2]
運用開始 2025年2月24日
投入先 神戸線宝塚線能勢電鉄妙見線日生線 [3]
主要諸元
編成 8両編成(4Ⅿ4T)
軌間 1,435 mm標準軌
電気方式 直流1,500 V
架空電車線方式[2]
最高運転速度 100 km/h(宝塚線)
設計最高速度 130 km/h[1][2]
起動加速度 2.6 km/h/s[1]
減速度(常用) 3.7 km/h/s[1]
減速度(非常) 4.2 km/h/s[1]
編成定員 1,008名[1]
車両定員 先頭車 : 117名[1]
中間車 : 129名[1]
全長 19,000 mm[1]
全幅 2,770 mm[1]
全高 4,095 mm[1]
車体 アルミニウム合金オールダブルスキン[1]
台車 ボルスタ付きモノリンク台車[1][2]
M車:FS579M[1]
T車:FS579T[1][2]
主電動機 全閉外扇永久磁石同期電動機
SEA-561[1][2]
主電動機出力 190kW × 4台 / 両[1][2]
駆動方式 WN駆動方式[1]
歯車比 5.33 (96:18)[1]
編成出力 3,040 kW
制御方式 フルSiC適用MOSFET素子
VVVFインバータ制御装置[1]
制御装置 東芝インフラシステムズ製 SVF121-A0[1][2]
制動装置 HRDA-1RB 電気指令式電空併用(電力回生優先制御)[1]
保安装置 阪急型ATS
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阪急2000系電車(はんきゅう2000けいでんしゃ)は、2025年より運行を開始した、阪急電鉄(阪急) 神戸線宝塚線神宝線)の通勤形電車である。

本項では個々の編成を表す場合は大阪梅田方先頭車の車両番号で代表し、「F」を付けて編成呼称とする。

概要

1000系の後継として、2024年7月に運行開始した2300系の要素を取り入れた神宝線向け車両である。2023年の発表当時は2024年夏頃より運転を開始すると報道されていた[4]が、実際には当初の計画よりも落成が遅れたため、天皇誕生日振替休日となった2025年2月24日に営業運行を開始した[5][6][2]

2000系の名称は初代に次ぐ2代目である。

車両概説

車体

アルミニウム合金によるオールダブルスキン構造であり[1]、衝突安全性対策として運転室側入口横までダブルスキン構造とされ[1]、また運転室前面の板厚を増すことで[1]車体強度を向上させている[1]。従来の神宝線車両と同様、車体幅は 2,770 mm、連結面間距離は 19,000mm[1] とされている。

床面高さは 1,150 mm[1] とされ、プラットホームとの段差を最小限としている[1]。側窓は3連または2連のユニット式連窓[1]で、空調が動作不可能な際の換気対策[1]として扉横の窓を開閉可能とした[1]

車外の種別・行先表示器はフルカラーLED[1]である。

車内

伝統の木目調化粧板やゴールデンオリーブ色の座席表地を継承[1]しつつ、安全性や利便性の向上を図ったものとしている[1]

座席

座席はすべてロングシートである[1]

端部の袖仕切りは衝突安全性確保のため大型化されている[1]。また中間仕切り部分にも縦手すりが新設された[1][2]。これは阪急では初採用となった[2]

座席のモケットは、一般席は緑系[1]のゴールデンオリーブ色[2]、優先座席は赤系[1]のマゼンタ色[2]であり、どちらも従来車と変わらない。

窓には、開放的な空間演出のため半透明ガラスを用いている[1]。その半透明ガラスにはUVカット機能を持っている関係上、緑色に着色されている[2]

設備

天井部は淡いベージュ系の化粧板とされ[1]LEDによる直接照明[1]と共に開放感のある車内空間を演出している[1]

車内案内表示装置は32インチハーフサイズ液晶ディスプレイ[1][2]で、千鳥状に配置されている[2]

車いす・ベビーカースペースは、8000系以来標準の全車両1か所[1]に設置され、利用客が集中しやすい両先頭車ではスペースを拡大している[1]。また、壁面手すりの2段化[1]、非常通話装置[1]や車椅子固定器具[1]の設置により車椅子利用者の安全性確保を図った[1]

車いす・ベビーカースペースと優先座席付近は吊革の高さを下げ[1]、またスリープを赤色[1]とすることで一般席エリアとの区別を図っている[1]

防犯カメラは各車両3台設置している[1][2]。設置場所は側扉鴨居部である[2]

戸閉装置はナブテスコ製DPV-40BU-HP1[1](電磁ロック装置付き)で、戸挟み・引き込みを検知した際に自動的に開閉力を弱める装置を搭載している[1]

車両情報制御システム (TCMS) 採用により乗務員室の機器が増大した[1]ため、運転席直後に座席と側窓が設置されていない[1]。乗務員室と客室の仕切扉は車掌台側に配置されている[1]

運転台

2000系(2代)の運転台

運転台は無接点回路式ワンハンドルマスコン東芝インフラシステムズ[7])とグラスコックピットを採用した[1]

コンソールデスク中央には緊急時操作スイッチを新設した[1]。コンソールデスクにはモニターが2面設置されているが、将来の機器増設を考慮し、運転台デスクの右袖部を拡幅した上で増設スペースを確保した形状としている[1][2]

主要機器

制御伝送指令を用いた[1]車両情報制御システム(TCMS、東芝インフラシステムズ[7])を採用した[1]。走行制御や車両搭載機器の指令制御、監視・記録、演算を行う制御・モニタ系[1]と、案内情報表示、カメラの制御を行う情報系[1]に大別される。

制御・モニタ系は各車両に伝送装置2台を設置[1]、編成で100BASE-TXのリングネットワークを構成[1]、両先頭車には中央装置、各車には入出力装置を設置[1]、冗長性確保のためそれぞれ二重系としている[1]。情報系は各車に伝送装置1台を設置[1]、編成で100BASE-TXのバス形ネットワークを構成[1]、案内表示・カメラ関連機器を接続させている[1]

制御装置は東芝インフラシステムズ[7]で、フルSiCパワーモジュール[1]適用MOSFET素子VVVFインバータ制御(SVF121-A0[1]、4 in 1×2群構成[1])を2500形、2550形に搭載する[1]

補助電源装置は2代目2300系と同一[2]とし、神宝線初の東洋電機製造製の静止形インバータ(RG4109-A-M[1][2]、容量180 kVA[1])で、3レベルIGBT素子のものを2600形、2650形に搭載する[1]。待機二重系ならびに並列運転方式とすることで冗長性を確保している[1]

主電動機は、東芝インフラシステムズ製[7]永久磁石同期電動機(PMSM、SEA-561[1]、1時間定格190 kW)[2]で、各電動車に4基搭載する[1]。1000系のSEA-538Aをベースに、高効率化とフレームレス構造の採用による低損失化を図ったものとされている[1]。駆動方式は神宝線標準のWN継手式中実軸平行カルダン駆動方式[1]、歯車比は96:18 (5.33) [1]であり、これは2代目2300系と同一としている[2]

集電装置は、東洋電機製造製PT71[1]系のPT7105-C-M[2]で、2500形、2550形に2基搭載する[1]。集電装置脇に設置されている避雷器は音羽電機製のGL-DC15A2である[2]

電動空気圧縮機は、2代目2300系と共通化した[2]ため、神宝線初の三菱電機製(阪急全体での初採用は2代目2300系)で[8]、URC2000HD-Iを両先頭車に搭載する[1][2]9300系以降標準のスクロール式だが、潤滑油が不要なオイルフリー形[1]となった点が異なる。

制動装置は、電気指令式のHRDA-1RB作用装置と受信装置を各車に設置[1]、また台車中継弁を設置することで空気制動の応答性向上を図っている[1]

冷房装置はセミ集中式東芝インフラシステムズ[7]RPU-6044H[1][2](インバータ制御方式[1]、能力27.9 kW)を各車2基搭載し、車内温度・車内湿度・車外温度・乗車率・カレンダー機能の情報を基にした自動制御機能とAI(人工知能)を用いた学習・予測制御機能を有する[1]。暖房装置は座席下の吊り下げ式としている[1]

台車は電動台車がFS579M[1][2]、付随台車がFS579T[1][2]で、いずれも1000系と同じである。

先頭車の屋根上には、列車無線アンテナ(日本アンテナ製WH-2UV-EV2[2])の他、それに隣接してWi-Fiアンテナ(車両機器搭載システムに関係したもの)とGPSアンテナも装備しているが、このうちGPSアンテナの方は大阪梅田方と宝塚新開地方の先頭車とで設置個数が異なっている(前者は3個・後者は1個設置)[2]

編成

4M4Tの8両編成[1]で、以下の4形式により組成される。

Tc2000形 / 2000形・2100形 (Tc)
制御車。床下に電動空気圧縮機蓄電池を搭載[1]。2000形は大阪梅田方、2100形は宝塚・新開地方の先頭車となる。
M2500形 / 2500形・2550形 (M)
パンタグラフ付き電動車。床下にVVVFインバータ制御装置、屋根上に集電装置2基を搭載[1]。2500形は大阪梅田駅方から2両目、2550形は6両目に連結される。
M2600形 / 2600形・2650形 (M')
電動車。床下にSIV装置を搭載[1]。2600形は大阪梅田駅方から3両目、2650形は7両目に連結される。
T2050形 / 2050形・2150形 (T)
付随車。主要機器類の搭載はない[1]
← 大阪梅田
宝塚・新開地 →
所属路線
Tc M M' T T M M' Tc
2000 2500 2600 2050 2150 2550 2650 2100 宝塚線

運用

2024年に2000Fが導入され、翌2025年2月24日に宝塚線で営業運転を開始した[6]。また、神戸線では2001Fが同年秋頃に運行を開始する予定である[9]

脚注

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj ak al am an ao ap aq ar as at au av aw ax ay az ba bb bc bd be bf bg bh bi bj bk bl bm bn bo bp bq br bs bt bu bv bw bx by bz ca cb cc cd ce cf cg ch ci cj ck cl cm cn co cp cq cr cs ct cu cv cw cx cy cz da 長谷川 et al. (2024), pp. 62–69.
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag 前里 & 来住 (2025), pp. 4–13.
  3. ^ 2000系 車両図鑑 阪急電鉄
  4. ^ 新型車両2300系・2000系を2024年夏より導入します』(PDF)(プレスリリース)阪急電鉄、2023年10月6日。オリジナルの2023年10月7日時点におけるアーカイブhttp://web.archive.org/web/20231007130952/https://www.hankyu-hanshin.co.jp/release/docs/ff140cb722dfcbc0d5f8628afd6fb8e24e4ae61a.pdf2023年10月9日閲覧 
  5. ^ 新型通勤車両2000系 2025年2月24日(月)から運行開始!!”. 阪急電鉄 (2025年1月20日). 2025年2月25日閲覧。
  6. ^ a b 阪急2000系が宝塚線で営業運転を開始”. 鉄道ファン公式サイト(railf.jp) (2025年2月24日). 2025年2月25日閲覧。
  7. ^ a b c d e 阪急電鉄新型車両向け電気品納入開始について ~3.3kV All-SiC素子採用のPMSM駆動システムなど最新システムを採用~”. 東芝インフラシステムズ株式会社. 2025年2月27日閲覧。
  8. ^ 阪急の車両における三菱電機製品の採用もこれが初となる。
  9. ^ 新2000系・2300系記念ヘッドマークの掲出とグッズ発売について”. 阪急電鉄 (2025年2月21日). 2025年2月27日閲覧。

参考文献

  • 長谷川, 裕高、板木, 重人、藤田, 洋一、川元, 昌夫、則武, 孝英「新車ガイド 阪急電鉄2300系・2000系」『鉄道ファン』第64巻第10(通巻762)号、交友社、2024年10月1日、pp.62-69。 
  • 前里, 孝、来住, 憲司「MODELERS FILE 阪急電鉄 2000系電車 宝塚線にも登場の阪急新世代電車」『月刊とれいん』通巻603号(2025年3月号)、エリエイ、2025年3月1日、pp.4-13。 

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