阪急2300系電車_(2代)とは? わかりやすく解説

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阪急2300系電車 (2代)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/26 07:43 UTC 版)

阪急2300系電車(2代)
阪急2300系電車
(2025年4月27日 十三駅 - 南方駅間)
基本情報
運用者 阪急電鉄
製造所 日立製作所笠戸事業所 [1]
製造年 2024年 -
製造数 96両(予定)[2]
運用開始 2024年7月21日[3][4]
投入先 京都線
主要諸元
編成 8両編成(4M4T)
※本系列単独の編成のとき
軌間 1,435 mm標準軌
電気方式 直流1,500 V架空電車線方式
設計最高速度 130 km/h[4]
起動加速度 2.6 km/h/s[4]
減速度(常用) 3.7 km/h/s[4]
減速度(非常) 4.2 km/h/s[4]
編成定員 884名
車両定員 先頭車:112(37)名[4]
中間車(一般車):124(48)名[4][5]
中間車(PRiVACE):41(40)名[4]
自重 2300形:30.5 t[4]
2350形(一般車):26.3 t[4]
2350形(PRiVACE):28.7 t[4]
2800形:36.1 t[4]
2900形:33.5 t[4]
全長 18,900 mm[4][5]
車体長 18,380 mm[4]
全幅 2,830 mm[4][5]
車体幅 2,780 mm[4]
全高 4,095 mm[4][5]
車体 アルミニウム合金[2][5]
台車 ボルスタ付きモノリンク式空気ばね台車
電動台車:FS579M[4][5]
付随台車:FS579T[4][5]
主電動機 かご形三相交流誘導電動機
東洋電機製造製 TDK8129-A
主電動機出力 190 kW[4]
駆動方式 TD平行カルダン駆動方式
歯車比 5.33
制御方式 ハイブリッドSiC IGBT素子VVVFインバータ制御[6]
制御装置 東洋電機製造
RG6054-A-M
制動装置 全電気指令式電磁直通空気ブレーキ
電力回生優先ブレーキ付き)[4][5]
備考 特記なき限り出典は[7]による
2024年度
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阪急2300系電車(はんきゅう2300けいでんしゃ)は、阪急電鉄(阪急)の特急形車両である。

概要

9300系以来となるセミクロスシートの京都線用特急車両として導入される[7]。阪急で初となる座席指定サービス「PRiVACE」用の回転リクライニングシート車両を一部編成に連結しており[7]、一部は本系列の増備が進むまで、機器等の調整を施したうえで「PRiVACE」車両のみを暫定的に9300系に組み込んで運用する形態がとられている[2]

「2300系」の名称は1960年(昭和35年)から2015年(平成27年)まで在籍した車両にも使用されており、本系列では1300系に続いて過去の車両と同一の形式名が付された。中間車には、過去に在籍した2800系に付されていた2800番台の番号の車両もある。

2350形「PRiVACE」車両は、2024年令和6年)度グッドデザイン賞を受賞した[8][9][10]

構造

外装

前頭部の各部配置は過去の車両を踏襲しつつ、本形式は「疾走感」を意識したデザインとし、前面窓に曲線を取り入れている[11]。車外表示器はLEDを基本とするが、「PRiVACE」車両ではガラス一体型の液晶ディスプレイ(LCD)を側面窓内に設けている[4][7]。車外表示器の点滅周波数は1000系後期車や8000系リニューアル車などと同等だが側面のものは他社と同様に一定速度に達すると自動消灯する仕様となった[4]

外装色は伝統の阪急マルーンをベースに車体上部をアイボリーとしたもので、「PRiVACE」車両ではさらに裾部にライトブラウン[12]金色と表現する文献もあり[13])の帯を配し、ドアの左右に「PRiVACE」のロゴを掲げる[7]

客用扉は一般車両が片側3か所であるのに対して、「PRiVACE」車両では中央の両開き扉1か所のみとなっており、扉の窓形状はひし形としている[7]。また、客室内の窓は1列につき1つの小窓である[7]。一般車両の側窓は、車端部が2連・扉間が3連(車内側は、中央部がカーテンレールでさらに2分割され見かけ上は4連)の連続窓であり、車端部は2枚とも、扉間は両端の窓が開閉可能である[14]

乗務員室の寸法が拡大された影響で、乗務員室後部は側窓が設置されていない[15]

内装

一般車両はドア間を転換クロスシート(一部固定)、車端部をロングシートとしており、各車両のロングシート部に優先席車椅子スペースが設けられる[7]。先頭車両では乗務員室直後の座席が省略されており、車椅子スペースが中間車よりも拡大されている[7]。これまでの車両と同様に化粧板は木目調、モケットはゴールデンオリーブ色とした[7]。車内ディスプレイは32インチハーフサイズのLCD表示器で、各ドア上に千鳥状に配置し各車両3基設けた[4][7]。鴨居部の化粧板は、第1編成の2300Fでは天井と同色のアイボリーであるが、第2編成以降は2000系(2代)同様、木目調に変更される予定である[16]

「PRiVACE」車両では、2+1配列の回転リクライニングシート(座面スライド機構付き)を扉を挟んで7列ずつ設置しており、2つの客室で2人掛け側と1人掛け側の左右が逆転する千鳥配置となっている[4][7]。うち各1列では1人掛け側の座席を省略し、一方の客室では車椅子スペースを、もう一方の客室では荷物置き場を設置している[4][7]。各座席には読書灯、コンセント、インアームテーブルがあり、枕部分および2人掛け席の肘掛け部にはパーテーションを備える[7]。客室内のモケットは一般車両と同様である一方、床面はカーペット敷きとなり化粧板の木目も一般車両とは異なる柄を採用し、鴨居部も木目調としている[17]。デッキは床面も木目調で、壁面上部は大理石調とした[7]。車内ディスプレイは32インチのLCD表示器で、客室・デッキ間の各ドア上に1つずつ、計4基を搭載している[4][7]

客室内防犯カメラは各車両に3台ずつ設けている[4][7]

運転台はワンハンドル式で、モニタ装置を2つ搭載している[7]。また1300系の車両情報統合システムから大きく機能を拡張させた車両制御システム(TCMS)を採用することで[4]、同社で初めて制御転送指令[注 1]を実現した[18]。自動放送装置についても車掌台に設置のタッチパネル式の装置が廃止され、運転台上のモニタ装置に内蔵されている。

走行機器

電動車には主電動機(出力190 kW)を1両につき4台搭載し、うちM車はシングルアームパンタグラフ2台とVVVFインバータ制御装置を、M'車は静止型インバータ装置(SIV)を装備する[7]。制御装置はハイブリッドSiCモジュールによるVVVFインバータ制御である[7]。台車は1300系に続いて電動台車はFS579M、付随台車はFS579Tを採用している[7]

補助電源装置には、東洋電機製造の容量180 kVA・供給電圧 交流440 VのSIVを採用した[4]。また待機二重系や編成内SIVの並列運転により冗長性を確保している[4][18]

形式

4M4Tの8両編成で、以下のとおり組成される[7]。形式名については、新形式呼称(数字の先頭にアルファベットを付加した形式)を用いる媒体もある[19]

  • 2300形・2400形(Tc)/ Tc2300形
制御車。床下に電動空気圧縮機蓄電池を搭載。2300形は大阪梅田駅方、2400形は京都河原町駅方の先頭車となる。新形式呼称では、両先頭車ともTc2300形となる。
  • 2800形・2850形(M)/ M2800形
パンタグラフ付き電動車。床下にVVVFインバータ制御装置、屋根上にシングルアーム式パンタグラフ2基を搭載。2800形は大阪梅田駅方から2両目、2850形は6両目に連結される。
  • 2900形・2950形(M')/ M2900形
電動車。床下に静止形インバータを搭載。2900形は大阪梅田駅方から3両目、2950形は7両目に連結される。
  • 2350形・2450形(T)/ T2350形
付随車。2350形は「PRiVACE」車両となり、車体側面の窓配置が異なる。2350形は大阪梅田駅方から4両目、2450形は5両目に連結される。

運用

2024年(令和6年)7月21日京都線で運行を開始し、同日より「PRiVACE」サービスも提供されている[3][4]。将来的に12編成を導入し、京都線の特急車両は本系列に統一される計画となっている[2]

2024年度は編成単位では1編成のみの導入となり、「PRiVACE」のサービス開始用にこれとは別に2350形6両(2356 - 2361)が単独で製造された[20]。単独で製造された2350形「PRiVACE」車両は、当面は9300系6編成に暫定的に組み込む形で運用される[2]

以降はまず8両編成×5本を増備して「PRiVACE」運行本数の拡大を図り[21]、その後7両編成×6本を増備して9300系組み込み車両を新製編成に組成する計画となっている[22][21]

編成表

2025年(令和7年)4月1日現在[23]

凡例
  • :「PRiVACE」車両
  • :女性専用車両(平日の通勤特急運用時のみ)
2300系のみの編成
← 大阪梅田
京都河原町 →
2300
1号車
(Tc)
2800
2号車
(M)
2900
3号車
(M')
2350
4号車
(T)
2450
5号車
(T)
2850
6号車
(M)
2950
7号車
(M')
2400
8号車
(Tc)
竣工[24] 備考
2300 2800 2900 2350 2450 2850 2950 2400 2024/07/05
2301 2801 2901 2351 2451 2851 2951 2401 2025/02/28
2302 2802 2902 2352 2452 2852 2952 2402 2025/03/21
9300系との混成編成
斜字の形式・車両番号は9300系)
← 大阪梅田
京都河原町 →
9300
1号車
(Mc1)
9850
2号車
(T1)
9870
3号車
(T2)
2350
4号車
(T)
9890
5号車
(T2)
9860
6号車
(T1)
9800
7号車
(M1)
9400
8号車
(Mc2)
竣工[24]
(2350形)
備考
9307 9857 9877 2356 9897 9867 9807 9407 2024/07/08
9308 9858 9878 2357 9898 9868 9808 9408
9303 9853 9873 2358 9893 9863 9803 9403
9304 9854 9874 2359 9894 9864 9804 9404
9305 9855 9875 2360 9895 9865 9805 9405
9306 9856 9876 2361 9896 9866 9806 9406

脚注

注釈

  1. ^ 力行・ブレーキ等を伝送によって行うこと。

出典

  1. ^ 新型車両2300系のデビューまでの裏側をレポート!:阪急沿線おしらべ係 - 阪急電鉄(2024年10月24日閲覧)
  2. ^ a b c d e 阪急電鉄「PRiVACE」9300系に組み込む車両も2300系、今後の計画は」-『マイナビニュース』、マイナビ(2024年4月21日)
  3. ^ a b 阪急2300系が営業運転を開始〜有料座席指定サービス「PRiVASE」も開始〜」-『railf.jp(鉄道ニュース)』、交友社(2024年7月21日)
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag 則武孝英(阪急電鉄 都市交通事業本部 技術部 車両計画)「車両紹介:阪急電鉄 京都線新型特急車両「2300系」及び神戸・宝塚線新型通勤車両「2000系」の概要」-『SUBWAY』2024年11月号、PP.30-38
  5. ^ a b c d e f g h 2300系:車両図鑑 - 阪急電鉄(2025年7月24日閲覧)
  6. ^ 新型車両2300系・2000系を2024年夏より導入します (PDF) - 阪急電鉄(2023年10月6日)
  7. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v 『鉄道ファン』2024年7月号、PP.80-83
  8. ^ 阪急電鉄株式会社 2300系 座席指定サービス「PRiVACE」用車両:GOOD DESIGN AWARD - 日本デザイン振興会(2025年7月24日閲覧)
  9. ^ 「阪急電鉄2300系座席指定サービス『PRiVACE』用車両」が2024年度グッドデザイン賞を受賞! (PDF) - 阪急電鉄・日立製作所(2024年10月16日)
  10. ^ 阪急電鉄、座席指定サービス「PRiVACE」用車両がグッドデザイン賞」-『マイナビニュース』、マイナビ(2024年10月16日)
  11. ^ 阪急電鉄、新型車両2300系&「PRiVACE」公開 - 7月導入、写真99枚」-『マイナビニュース』、マイナビ(2024年4月26日)
  12. ^ 『とれいん』2024年9月号、PP.5・22
  13. ^ 『大手私鉄サイドビュー図鑑16 阪急電車』、P.8
  14. ^ 『鉄道ジャーナル』2024年10月号、PP.17-18
  15. ^ 『大手私鉄サイドビュー図鑑16 阪急電車』、PP.6・8
  16. ^ 『とれいん』2025年3月号、P.9
  17. ^ 『私鉄車両年鑑2024』、P.8
  18. ^ a b 『鉄道ファン』2024年10月号、PP.62-69
  19. ^ 『RM MODELS』2024年7月号、PP.26-29、ネコ・パブリッシング
  20. ^ 『私鉄車両年鑑2024』、P.14
  21. ^ a b 『鉄道ジャーナル』2024年10月号、P.16
  22. ^ 阪急の豪華な座席指定車の“最終形”とは? 既存車両への組み込みは「あくまで一時的」」-『乗りものニュース』、メディア・ヴァーグ(2024年7月21日)
  23. ^ 『阪急電鉄鉄道ファンクラブ会報』Vol.112、阪急電鉄
  24. ^ a b 『私鉄車両編成表2025』、P.202

参考文献

関連項目

外部リンク




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