閉店後における保安管理の怠慢
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 22:45 UTC 版)
「千日デパート火災」の記事における「閉店後における保安管理の怠慢」の解説
千日デパート管理部では、各テナントが閉店後の夜間に宿直することを認めていなかった。これは同デパートの保安係員が各テナントの商品や店舗に対する安全管理の責務を担っていることを意味していて、各テナントとの間に保安管理契約が存在することは明らかであった。またその履行も為されなければならないところ、保安係員は火災当日夜の閉店後に3階で電気工事が行われているにも関わらず、その工事に立ち会わなかった。その結果、同階で火災が発生した直後に防火区画シャッターを閉鎖し、消火器や消火栓などを用いて初期消火を行うことができず、さらには7階で営業中のプレイタウンに対して火災発生を知らせずに人的被害を拡大させ、その保安管理体制の杜撰さが露呈した。またテナントに対する保安管理契約の存在が明らかであるのに、工事の立会や喫煙管理などの防火管理をテナント(ニチイ)に丸投げしていたことも問題点として挙げられる。出火元となった3階ニチイ千日前店は、賃貸契約時のデパート管理部との取り決めで、同店が出店している3階と4階の階段A、C、E、F(AとFは4階のみ)の階段出入口に設置してある防火扉と防火シャッターおよび4階エスカレーターの防火カバーシャッターの閉鎖は、ニチイ社員が閉店時に実施することで合意を結び特約していた。ところが売場内の防火区画シャッターの閉鎖については双方の間で取り決めはなされておらず、普段から閉鎖されていなかった(他のテナントも同様)。デパート管理部は、各テナントが閉店後の店内で残業する場合は、同管理部に届けを出すことを義務づけていた。ただしニチイ千日前店の残業は例外で、届け出なしに23時まで行うことができた。残業が終わったあとは、階段出入口の防火シャッターとエスカレーター防火カバーシャッターを閉鎖し、照明などの電源を切り、客などの居残りを確認し、従業員通路(D階段出入口)を施錠をしたうえで同管理部に引き継ぐことになっていた。このようにニチイは千日デパートの中では管理について特約を持つほどのキーテナントであり、工事の立会いについて一定の責務があると考えられた。しかしながら、テナントが工事に立ち会う場合は工事の進捗状況などを確認するのが主たる任務になるので、火災防止などの防災面を監督するのはビル管理者である日本ドリーム観光の役目であると考えられた。しかも出火元の3階にはニチイ以外のテナントが数店舗出店していて、それらに対する保安管理義務が生じることは明らかであり、その意味で日本ドリーム観光が火災当日にニチイがおこなった店内工事に保安係員を立ち合わせる義務があった。閉店時に売場内の防火区画シャッターを閉鎖したうえで保安係員が工事を監督していたなら、火災の発生およびその拡大を防止できたことは明らかである。
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