鎖状化合物におけるCDW伝導
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/02/04 10:06 UTC 版)
「電荷密度波」の記事における「鎖状化合物におけるCDW伝導」の解説
擬一次元導体に関する初期の研究を刺激したのは、ある種の鎖状高分子が高い超伝導臨界温度 Tc を持つという1964年の予言である。その根拠となるのは、隣り合う分子鎖にそれぞれ属する伝導電子と非伝導電子とが相互作用して超伝導BCS理論でいう電子のペアリングを引き起こすというアイディアであった。これに対し、従来型超伝導で電子ペアリングを引き起こすのはフォノン、すなわちイオンの振動である。重いイオンの代わりに軽い電子がクーパー対を作るのだから、特性振動数、ひいてはエネルギースケールと Tc が増大すると予測されたのである。この観点から1970年代にはTTF-TCNQのような有機物質が実験・理論両面から研究された。しかしその結果判明したのは、これらの物質が超伝導転移ではなく金属-絶縁体転移を起こすということである。後にこれらはパイエルス転移の最初の観測例だということで決着がついた。 遷移金属トリカルコゲナイドなどの無機鎖状化合物でCDW伝導が起きることを1976年に実証したのはMonceauらである。彼らはNbSe3に強い電場 E をかけると電気伝導度 σ が上昇することを発見した。この σ の E に対する非線形性をランダウ=ツェナートンネリングの特性式 ~exp(-E0/E) (ランダウ=ツェナーの公式を見よ)でフィッティングする試みがなされたが、常伝導電子がパイエルスギャップを乗り越えてツェナートンネルを行っていると見るには「ツェナー電場」 E0 の実測値があまりにも小さすぎた。続く実験ではシャープなしきい電場の存在が示された。またノイズスペクトルにピーク(狭帯域ノイズ)が現れ、その振動数はCDW電流に比例していた。これらの実験など(一例は)から、電場がしきい値を超えるとCDWが集団的に電流を担うこと、その電流が間欠的であることが確かめられた。
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