金管楽器の弱音器
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/09 07:03 UTC 版)
金管楽器の弱音器は、管の吹き口とは逆の端の、最も太くなっている、ベル(朝顔)と呼ばれる部分に、ベルから出てくる音を塞ぐようにして、ベルの中に押し込むような形で取り付けられる。主として金属で作られる。さまざまなものが作られ、音色によって使い分けられる。 ストレートミュート (straight mute) 音色にあまり変化を与えずに音強を落とすことを目的として作られた弱音器であるが、強奏すると、鋭い音色が得られる。ジャズなどの曲によく使われることが多い。 カップミュート (cup mute) カップをかぶせたような形になるのでこの名がある。音色の変化を目的とした弱音器である。 プランジャー・ミュート (plunger mute) ゴム製のカップ型の弱音器。トイレの清掃具であるプランジャーのカップ部分を使用したことに由来する。ベルに近づけると抑えた音になり、遠ざけると開いた音になる。グレン・ミラー楽団等のスイング・バンドで多用されたことで有名。 ワウワウミュート (wah-wah mute) 穴があいており、穴を開けたり閉めたりすることで音色に変化が与えられる。開け閉めするとワウと言った音がするのでこの名がある。 バケットミュート (bucket mute) 中に綿が入っており、こもった、非常に柔らかい音がする。着脱に時間がかかるミュートであり、各社様々な装着方法を開発している。 ハーマンミュート (harmon mute) ワウワウミュートから内部管を抜いたもので、独特の寂れた音色が特徴。著名なジャズ奏者マイルス・デイヴィスによって愛用されたため広く知られるようになった。フランス語でスルディーヌ・ロバンソンsourdine Robinsonと表記する例もある(アンリ・デュティユー「メタボール」など)。ハーマンとは、この弱音器を作っているメーカーの名前である。ハーマン社製の物が特に有名なので、この弱音器の代名詞ともなっている。よって他社製のこの弱音器をハーマンミュートと呼ぶのは正確には間違いである。チーチーミュートと言う一般的な呼称がある。 ゲシュトップフトミュート(移調ミュート) stopping mute (transposing mute) ホルン(フレンチホルン)特有のミュートで、鋭い金属的な音色を特徴とする。ホルンのゲシュトップフト奏法の音色を模倣するために開発された。ゲシュトップフト奏法の困難な低音域や弱音でのゲシュトップフト奏法が要求される場合、しばしば真性のゲシュトップフト奏法の代わりにこのミュートを用いられる。このミュートを使用すると、ゲシュトップフト奏法同様、楽器の音高がミュートなしの状態に比べておよそ半音から半音半高くなる。このため移調ミュートとも呼ばれる。なお、音高を変化させないゲシュトップフトミュートも開発されている。 プラクティスミュート (practice mute) 形状はストレートミュートと同様であることが多いが、練習の為の音が周囲に迷惑を及ぼすのを防ぐために装着するものであり、ほとんどの音を遮断し発せられる音は極小となる。また、ヘッドフォンを接続し演奏者のみは音を聞くことができるように設計されたものもある。このヘッドフォンのための出力端子をリバーブさせスピーカーに繋ぐと、大ホールや教会の中で響くような長いエコーを得ることが出来る。現代音楽やジャズのシーンで用いられている。代表的製品としてヤマハ製のサイレントブラスシリーズがある。
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