造形と形式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/12/29 06:15 UTC 版)
絵画にしろ彫刻にしろ、頂相は禅僧にとって師の現身そのものであり、師僧の特徴を正確に捉えるのは勿論のこと、像主の高い精神性や性格をも写し取った造形に特色がある。そのため、描き手はまず像主と向き合い、その顔を小さな紙にデッサンする。この下絵を「紙形」といい、この紙形制作が頂相を作る上で最も重要で、1枚だけでなく数枚、時には10枚以上描かれることもあった。そして、像主がその中から一番気に入ったものを選び、それに基づき本画が制作される。なお、素材は絹を用いることが多い。 頂相の形式は全身坐像が最も多く、法被を掛けた曲録(椅子)に、袈裟を着け法衣を垂らして座す。手には竹篦(弟子を指導する際、迷いを打ち叩くのに用いる道具)や払子を持ち、足元には沓床とその上に沓が描かれるのが一般的である。彫刻の場合も、頂相画に倣って法衣の裾を長く垂らして座る全身像で表されるが、衣に包まれた体部はやや形式的に単純に表し、写実は面貌に集中する表現法が確立している。 一方、画像では腰から上だけを描き、衲衣と袈裟を着て手を胸前で合わせる半身像や、円の中に描かれる円相図、座禅中の脚の疲れを取り睡魔を払うため、立って静かに歩行しながらを落ち着かせる所作をしている経行(きんひん)図、屋外に座る姿を描いた作例なども見られる。これらは単独で制作されたものであるが、複数の頂相を一揃いのセットとして制作した列祖像という形式もある。 特に鎌倉時代から南北朝時代にかけては優品が作られ、多くは国宝や重要文化財に指定されている。
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