通信動作
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/01/18 13:45 UTC 版)
動作原理チップ(半導体のダイ)の配線層を工夫して作り込まれた小さなコイル同士は、電磁結合によって信号をやり取りする。不要な磁界は配線層による金属の遮蔽板で遮断できる。図ではコイル間は離れて描かれているが、互いの間隔はコイルの直径程度である。 積層チップ間での信号の流れ高速通信を低消費電力で行なうには、コイルは小さな方が良く、数十枚のチップを上下に貫通するだけの磁界を生み出せる大きなコイルよりも、小さなコイルをジグザグに配置してリレーを行った方が効率的となる。図は下向きの通信であるが、同じコイルで送信回路と受信回路が切り替わり、上向きの通信も行なえる。 コイル 送信/受信 配置と遮蔽 送信コイルと受信コイルの対は上下のチップで対面する必要があり、チップごとの電源線や制御線をワイヤ・ボンディングする領域を確保しながら、単一のチップ・レイアウトで数十枚のチップを上下に接続するための工夫として、重ねたチップ同士を奇数番目のチップと偶数番目のチップで180度向きを変えて少しずらして重ねる。また、2枚ごとに90度方向に少しずらす。こうすることで1枚のチップを間に挟んで送信コイルと受信コイルの対が対向することになる。ただ、このままではコイルの対が上下に多数が連なり、送信方向が一方に向けられなくなるので、送信コイルの下、又は上に金属板による遮蔽板を設ける。この磁界遮蔽金属膜は通常のボンディング・パッドと同じものでよく、コイルの間に挟まれたチップ上に適切に配置する。このような配置を行なうことで、単一のチップ・レイアウトでも上下4枚のチップが1組となって同じように連なり、ジグザグに上方向(アップリンク)や下方向(ダウンリンク)での信号の流れが作られる。 このような複雑な配置を採らずに、多くのチップへ一度に信号を送れるようコイルを一直線に配置する方法も考えられるが、上下方向の最大通信距離がほぼコイルの直径程度であるため、数十枚のチップの厚み分の磁界を作るにはそれだけコイルが大きくなり、コイルの占有面積が拡大してしまう。また、コイルの遮蔽をコイル直近に置くと渦電流によって送信出力が削がれるため、コイル対の間に1枚のチップが挟まれる配置をとり、その間のチップに遮蔽板を設けることで有効な送信出力を得ている。 例えば1mm以下で向き合ったコイル間では40GHzの電磁波の近接場になり、コイル間はトランスのように磁界結合によって信号が送られる。コイルの直径程度の近接場から離れた電磁波は距離の3乗に比例して急速に減衰するので、チップ同士のコイルを並べておくだけで縦方向に対向するもの以外の互いの混信は極めて少なくてすむ。直列に対向していても遮蔽板によって結合を遮断できる。
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