農村土地法の特殊構造
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/05 22:03 UTC 版)
「中華人民共和国物権法」の記事における「農村土地法の特殊構造」の解説
農村の土地について本法が定める秩序は旧ソ連にもなかった独特なものである。まず、農村の土地の所有権は農村集団構成員による集団所有に属するものとし(第58条)、集団構成員たる農民は、集団との間で土地請負契約を締結して期限付きの土地の用益物権を取得する(第125条)。耕地の場合、期限は30年とされ期限満了後も契約更新が可能としている。土地請負経営権は一定の範囲で譲渡が許されるが、許可なく非農地に転用することや、荒蕪地などを除き抵当権を設定することは認められていない(第128条、第133条)。農民の居住用の住宅用地については、宅地使用権という用益物権を用意し(第152条)、それは土地管理法等にもとづき行政的な手続きにより配分され、市場で自由に流通することは想定されていない。農民集団が土地所有権をもつと言っても、国家による収用を除いては、それを他に処分することを想定していない(第132条)。加えて、建物を建てるための用益物権である建設用地使用権は、国有土地に限ってのみ設定でき(第153条)、集団所有のままでは、建物建設のための土地利用権を設定して、それを売り出すことはできない。毛沢東の中国革命は、「耕す者に土地を」をスローガンとし、建国の前後には全国で土地改革を行い、地主から土地を取り上げ、小作農に無償で分配した。その結果、1950年代始めには中国の農民は土地を所有する自作農となった。しかし、程なく土地所有の集団化運動が展開され、1958年には人民公社にまで規模が拡大された。この過程で農民たちは「自主的に」農地を現物で出資し、合作社、高級合作社、人民公社による土地の集団所有という枠組みができた。本法が規定する土地の集団所有権および請負経営権、宅地使用権は、かつての現物出資者のなれの果てと解される。農地の非農地への転用、そして直接的な譲渡の可能性を奪われた土地所有権には経済的なうま味は乏しく、放出による利益がほとんど国に転がり込む仕組みになっている。
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