転落実験
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/19 05:33 UTC 版)
「別府3億円保険金殺人事件」の記事における「転落実験」の解説
江守教授は、まず実物の10分の1の模型を用いた実験を繰り返した後、1982年(昭和57年)9月2日から3日間をかけて別府国際観光港で実車を用いた転落実験を行った。江守教授は事故車両の左前部が大きく変形していることに注目し、これは岸壁から斜めに飛び出したことで「左車輪が、右車輪より先に、地面からの反力を失ったため」左にローリングして着水時の車両の傾きを生じたと考えた。模型実験でこれを確認した江守教授は、実車での転落実験でも25度斜めに飛び出させた。実車での転落実験には事故車両と同年代の車3台と男女のダミー人形を用意し、「事故」当日と同じ潮位になる時間を選んで1日1台ずつスタントマンに運転させて転落させた。男性のダミー人形は体重70キログラム、女性のダミーは体重50キログラムである。実験の様子は、陸上に4台、車内に1台、水中に1台のビデオカメラで記録し、万が一に備えて海中にダイバー5人、陸上に救急車を待機させた。 約700万円をかけ、やじ馬100人超が見守った実験の結果は以下のようになった。 江守教授による転落実験運転席助手席転落速度着水後沈没までフロントガラススタントマンの脱出経路1号車スタントマン 女性ダミー 42 km/h 73秒 割れず 運転席のガラス窓を下げて脱出 2号車女性ダミー 30 km/h 50秒 割れず ハンマーでフロントガラスを割って脱出 3号車男性ダミー 40 km/h 15秒 ダミー頭部が破壊 割れたフロントガラスから脱出 いずれの場合も離岸から着水まで約0.6秒で着水時に衝撃が加わる時間は0.5秒であり、着水時の衝撃は約4Gであった 3号車の男性のダミー人形の頭部がフロントガラスを割ったが、1・2号車の女性のダミー人形はダッシュボードに衝突したもののフロントガラスには届かなかったため割れなかった 運転席にいたスタントマンは、衝撃に備えて手と足をハンドルと床につけて突っ張っていたため全く負傷しなかった 運転席・助手席とも後部座席の乗員の衝突によって背もたれが破壊され、さらに助手席については着水時の衝撃で留め金も破壊される 沈没するまでの時間は、フロントガラスが割れるか割れないかで大きく変わるが、いずれもスタントマンは車が海底に沈む前に脱出できた 実験後、江守教授は「予想どおりの結果が出た」と話した。
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