超潤滑
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/11/06 09:07 UTC 版)
「トライボロジーでいう超潤滑とは、摩擦が消失した状態のことで、ナノスケール物質どうしの接合で起きることがある」。 ナノスケールでは摩擦は異方性を持つ傾向がある。格子構造が互いに不整合な二つの表面が接していると、すべての原子が異なる方向に異なる大きさの力を受けることになる。このような場合、力が互いに打ち消し合って実質的な摩擦力はほぼゼロとなる。二つの接触面の格子構造が同じであっても、相対的な角度によって整合・不整合は入れ替わるので、方位によって摩擦の特性が変わることになる。この現象は超高真空走査トンネル顕微鏡(UHV-STM)による測定ではじめて実証された。格子どうしが不整合であれば摩擦は見られず、整合であれば摩擦力が生まれることが確かめられている。このような原子レベルでのトライボロジー的挙動が超潤滑のもとになっている。 黒鉛、二硫化モリブデン(MoS2)、チタンシリコンカーバイド(Ti2SiC2)などの固体潤滑剤はその実例である。これらの物質は層状構造を持つため、層間のせん断に対する抵抗が弱いことが潤滑性の原因だと考えられる。巨視的なスケールで見れば、摩擦には多くの微視的な接触が関与しており、それぞれ異なるサイズと方位を持っているとしても、前記の実験によれば接触部の大部分は超潤滑状態にあると推定される。したがってこれらの物質では平均摩擦力が大幅に削減されて潤滑効果を発揮すると説明される。 LFMを用いた別の実験では、負の垂直荷重を印加したときにはスティックスリップ現象が現れないことが示された。探針はなめらかに滑り、平均摩擦力は見かけ上ゼロであった。
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