貯蓄と投資
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 16:44 UTC 版)
モデルでもあらわされるように、総貯蓄の増加分と総投資の増加分は同額になる。これは、現実の経済からすると一見誤りであるように思われる。例えば100円の貯金をしたとしてもタンスにしまえば、銀行へ預金する場合と違って融資もされず、投資に向かわないはずである。 マクロ経済学においては、この貯蓄と投資の因果関係がほぼ逆になる。総投資が存在する場合は、総貯蓄は0にはならない。仮にある年の総貯蓄を0にしようとして所得の全てを消費するような社会(その年の限界貯蓄性向=0)を考えてみた場合、新規に追加的投資をおこなえば乗数過程により無限に所得と消費を生み出すことになる。 現実にはこのような社会はありえず、これは前提とした条件(限界貯蓄性向=0)になんらかの論証上の矛盾が含まれていることを意味している。また国民経済フロー式に物価(P)を考慮したより高度な分析によれば、これはその年の名目での国民所得だけが無限に増大しハイパーインフレーションが発生していることとなる。このようにマクロ経済で見た場合はある年の総投資の存在が、その年の総貯蓄の発生理由となる。 たとえばアメリカ経済(世界同時不況以前)は家計による消費、企業・政府の投資意欲は旺盛である。このように総投資に見合った総貯蓄(=Y-C:所得-消費)が存在しない場合、経常収支が赤字となる(貯蓄投資バランスを参照)。ある経済の経常収支の赤字は、黒字である外国経済が、その経済において貯蓄をしていると解釈される。また世界経済の枠組みにおいては、アメリカ経済も一つの国民経済に過ぎず、世界全体で見た総投資と総貯蓄は等しくなる。
※この「貯蓄と投資」の解説は、「乗数効果」の解説の一部です。
「貯蓄と投資」を含む「乗数効果」の記事については、「乗数効果」の概要を参照ください。
- 貯蓄と投資のページへのリンク