豊富な固有種
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 09:28 UTC 版)
バイカル湖は寒冷で栄養素に乏しいにもかかわらず、世界屈指の生物多様性を持つ場所である。チョウザメ、オームリ(バイカル・オームリ)や、サケ科などの魚類、バイカルアザラシ(サイマー湖、ラドガ湖のワモンアザラシは海水と淡水の両方に生息するため、淡水のみに生息する種としてはアザラシ科では唯一。)など約355属1334種が生息する。うち1017種は固有種であり、全体の70%、生物量では80-90%が相当する[出典無効]。鳥類も、2種の固有種が存在する。本格的な調査は1980年代後期に始まったばかりであり、未確認の固有種も少なくないと予想される。 ヨコエビ類の端脚類が適応放散で多数の種になっていることが知られ、淡水産の種が全世界で1000種ほどあるうちのほぼ四分の一にあたる259種が棲み、その中の98%が固有種に当たる。カジカなど魚類は29種がおり、このうち27種が固有種である。ほとんどの種は海から孤立した際に取り残された海生生物が淡水に適応したものであると見られ、安定した気象条件や深部まで溶在酸素があること、湖底の複雑な構造などが生存に寄与し、またそれぞれの深度に適応したヨコエビ類とこれを捕食するカジカが多様な種の分岐を果たしたものと考えられる。このような中、一部のカジカは遊泳性を強めた生態を持つようになり、かえってバイカル湖生態系の頂点に当たるバイカルアザラシに捕食されやすくなったものもいる。 バイカルアザラシも海生から淡水に順応したもので、その起源には2つの説がある。一つは1000-1200万年前に南西ヨーロッパから続くパラテチス海盆を辿って棲み付いたものがその後に陸封されて適応したとするもの。もう一つは250-300万年前に地球が温暖化した影響から北極海が北緯61度程度まで海進したと考えられ、その時にアザラシの亜種が分布したという説である。 微生物(原生生物)の中にも固有種がおり、ペリディウム、ギムノディニウム、アステリオネラ、タベラリアなどは水質を浄化させる。バクテリア・プランクトンはバイカル湖の透明性に寄与している可能性が指摘されるが、そのメカニズム解明には至っていない。
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