診断上の意義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/03 16:58 UTC 版)
「チロキシン結合グロブリン」の記事における「診断上の意義」の解説
甲状腺ホルモンの濃度が高くなったり低くなったりする原因を調べる為に、甲状腺結合グロブリン検査が行われる事がある。これは、放射線標識された甲状腺ホルモンの樹脂への結合(標識された甲状腺ホルモンが遊離している時にのみ起こる)を測定する事で行われる。 患者の血清と標識された甲状腺ホルモンを混合し、次に混合物全体に樹脂を加えて、遊離の標識甲状腺ホルモンの量を測定する。例えば甲状腺ホルモンの濃度が低い患者が本当に甲状腺機能低下症で、TBG濃度が正常であれば、総甲状腺ホルモン濃度が低いので、TBGに結合できる部位が多く空いている。その為、標識ホルモンを添加すると、殆どがTBGに結合し、樹脂に結合する分子は殆ど残らない。一方、甲状腺ホルモンの濃度が高い患者が患者が本当に甲状腺機能亢進症で、TBG濃度が正常な場合は、患者の内因性ホルモンがTBGの結合部位をより飽和させ、標識ホルモンの入る余地が少なくなる為、樹脂への結合がより多くなる。 本当に甲状腺機能低下症や甲状腺機能亢進症である患者では、TBG検査はあまり役に立たない。しかし、症状を伴わないのに総甲状腺ホルモン濃度が甲状腺機能低下症や甲状腺機能亢進症を示している場合は、TBG検査の有用性がより明らかになる。何故なら、TBGの産生はエストロゲン濃度、副腎皮質ホルモン濃度、あるいは肝不全などの他の因子によって変化する可能性が有るからである。例えば、エストロゲン高値に伴ってTBG濃度が高い場合、TBGはより多くの甲状腺ホルモンと結合し、血液中で利用可能な遊離ホルモンを減少させ、TSHが刺激され、より多くの甲状腺ホルモンが産生される事になる。この場合、総甲状腺ホルモン値は高くなる。そこに標識ホルモンを添加すると、TBGが非常に高いので、内因性甲状腺ホルモンと標識ホルモンの結合の平衡が得られれば、樹脂に取り込まれる遊離の標識ホルモンが少なくなる。逆に、TBG濃度を下げる副腎皮質ホルモンの存在下では、血中の総甲状腺ホルモン(結合型と遊離型)が少なくなる。このように、標識ホルモンを添加すると、血中のTBGは非常に少ないので、平衡状態になった後、僅かにしかTBGと結合せず、樹脂に取り込まれる標識ホルモンが多くなる。
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