覇権国の台頭
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/10/08 04:07 UTC 版)
国民国家が覇権国の水準へと台頭するために、十分な地政学的な安全を持たなくてはならない。多くの覇権国は、地理的にいえば半島国あるいは島国であり、この地理的な条件がより高い安全を提供している。また軍事力を展開する能力としての海軍力が不可欠である。 覇権国が半島国もしくは島国ではない場合もある。しかし、たとえばアメリカ合衆国は、事実上の島国である。第一に、二つの長い海岸線を持ち、第二に、隣国と同盟関係にあり、第三に核戦力および優れた空軍力が高度な安全を提供しているため、世界中のどの国よりもぬきんでた地位にある。 このような地政学的な状況だけが覇権国の要件ではない。覇権国は指導する意思、つまり覇権的レジームを創設する意思を持たなくてはならない。米国がリーダーシップの発揮を考えていた第一次大戦後、国内の政治圧力によって孤立主義的な対外政策を生んだ。 覇権国はまた指導する能力、つまりシステムのルールを執行する能力を持たなくてはならない。第一次大戦後の大英帝国は指導する意思を有していたが、指導するために必要な能力を欠いていた。国際システムに安定性をもたらす能力がなければ、大英帝国に世界恐慌や第二次大戦の勃発を防ぐためにできることはほとんどなかった。 最後に、覇権国は、ほかの大国や重要な国家アクターにとって相互に互恵的だとみなされる必要のあるシステムに関与しなくてはならない。 覇権国としての国家の能力を考えるとき、三つの属性が一般に必要とされる。 第一に、覇権国は巨大で成長する経済を持っていることが絶対的に必要である。これは、中華人民共和国が覇権国として米国を継承すると、多くの研究者や政策立案者たちが考える理由のひとつである。しかし、経済成長は持続可能な成長でなくてはならず、また中国はその成長を維持できるかどうかについていまだに懸念がある。 第二に、支配的な経済だけでは十分ではない。通常、すくなくとも主導的経済あるいは技術部門の一つにおいて圧倒的な優位が必要とされる。 最後に、覇権国は政治的強さ、つまり覇権国のレジームを支える新しい国際法や国際組織を創設する能力、および強力な軍事力を持たなくてはならない。政治的強さを通した国際法を促進する能力は遠方展開可能な軍事力によって支えられる。優れた海軍、あるいは空軍が必要とされる。
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