裁判所の判決における判断
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/24 15:04 UTC 版)
「受動喫煙症」の記事における「裁判所の判決における判断」の解説
横浜地方裁判所『平成29年(ワ)第4952号損害賠償請求事件』令和元年11月28日判決において、受動喫煙症の診断を根拠として、「原告らについて,その診断名が前提とする体調不良(身体的,情緒的症状)ないし神経系や免疫系の異常をはじめとする様々な健康影響といった症状が前記各診断時点において存在したことが認められる。なお,作田医師は,原告A娘について,「受動喫煙症レベルⅣ,化学物質過敏症」と診断しているが,その診断は原告A娘を直接診察することなく行われたものであって,医師法20条に違反するものと言わざるを得ず,・・・が,このことは,前記認定を左右するものではない。」と判示された。また、同判決では「その基準が受動喫煙自体についての客観的証拠がなくとも,患者の申告だけで受動喫煙症と診断してかまわないとしているのは,早期治療に着手するためとか,法的手段をとるための布石とするといった一種の政策目的によるものと認められる。」「原告らに受動喫煙があったか否か,あるいは,・・原告らの体調不良との間に相当因果関係が認められるか否かは,その診断の存在のみによって,認定することはできない」と判示された。 その控訴審である東京高等裁判所令和2年10月29日判決では、「同診断基準においては,受動喫煙自体についての客観的な裏付けがなくとも診断が可能なものとされている。・・・この点については,患者を治療するという医師の立場での診断方法としては理解しうるところではあるが,一方で,診断の前提となっている受動喫煙に関する事実については,あくまで患者の供述にとどまるものであり,そこから受動喫煙の原因(本件では、被控訴人宅からの副流煙の流入)までもが,直ちに推認されるものとまでは言い難い。」と判示された。作田医師が直接問診せずに診断書を作成した点については、「他の診断書を観た上での専門家としての参考意見として見るにとどめるべき」と判示された。地裁判決による「一種の政策目的」「医師法20条違反」との判示は、高裁判決では維持されなかった。 結論として、この裁判では、受動喫煙症の診断書は、症状の存在を認定するための証拠にはなるが、受動喫煙の原因(被告宅から原告宅へのタバコ煙の流入)を認定する証拠としては不十分であるとされた。
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