自由エネルギーによる表現
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/16 05:53 UTC 版)
「化学反応」の記事における「自由エネルギーによる表現」の解説
以上で述べたように系の変化傾向はエントロピーによって記述できるものの、エントロピーは直接測定可能な物理量ではないので、化学ではギブズの自由エネルギーを使って系の変化傾向を記述する事が多いのでMF2(p386)。本節ではこの記述方法について述べる。なお本節では、ギブズの自由エネルギーやエンタルピーといった熱力学ポテンシャルの基本的知識を仮定する。 まず、反応系に対して以下の2つの仮定を課す: 反応系の温度は常に一定である 反応系の温度と外部の温度は常に等しい 1つ目の仮定は、化学変化で反応系に発生した熱が系の外部に全て放出できるのであれば満たされる。2つ目の仮定は外部が十分広く、反応系から放出された熱の影響をほとんど受けないのであれば満たされる。以下、反応系の温度=外部の温度をTと書く。 一般に与えられた系のギブズの自由エネルギーGとエンタルピーHはその系のエントロピーS、温度Tにより、 G = H − S T {\displaystyle G=H-ST} という関係式を満たすので、前述の仮定のもと、 d G s y s = d H s y s − T d S s y s {\displaystyle \mathrm {d} G_{\mathrm {sys} }=\mathrm {d} H_{\mathrm {sys} }-T\mathrm {d} S_{\mathrm {sys} }} が成立するMF2(p395)。 また反応系の外部の合計の内部エネルギーUtotal、圧力Ptotal、体積Vtotalは d H t o t a l = d U t o t a l + V t o t a l d P t o t a l {\displaystyle \mathrm {d} H_{\mathrm {total} }=\mathrm {d} U_{\mathrm {total} }+V_{\mathrm {total} }\mathrm {d} P_{\mathrm {total} }} という関係式を満たすが、エネルギー保存則から第一項は0であり、第二項も全体に対する圧力変化dPtotalは存在しないとみなしてよいから、結局 d H t o t a l = 0 {\displaystyle \mathrm {d} H_{\mathrm {total} }=0} となる。ここで 反応系の外部では化学ポテンシャルや圧力変化、その他の示強変数(例えば分極や磁化による電磁場)が無視できる という仮定を課すと、 d H s u r r = T d S s u r r {\displaystyle \mathrm {d} H_{\mathrm {surr} }=T\mathrm {d} S_{\mathrm {surr} }} が成立するので、 d H s y s = d H t o t a l − d H s u r r = 0 − T d S s u r r {\displaystyle \mathrm {d} H_{\mathrm {sys} }=\mathrm {d} H_{\mathrm {total} }-\mathrm {d} H_{\mathrm {surr} }=0-T\mathrm {d} S_{\mathrm {surr} }} なので、 d G s y s = d H s y s − T d S s y s {\displaystyle \mathrm {d} G_{\mathrm {sys} }=\mathrm {d} H_{\mathrm {sys} }-T\mathrm {d} S_{\mathrm {sys} }} = − T d S s u r r − T d S s y s = − T d S t o t a l {\displaystyle =-T\mathrm {d} S_{\mathrm {surr} }-T\mathrm {d} S_{\mathrm {sys} }=-T\mathrm {d} S_{\mathrm {total} }} が成立する。 したがって以上の仮定のもと、全体のエントロピー増大は、反応系のギブズ自由エネルギー減少を招く。よって以下の結論が得られる: ΔGsys<0のとき、系は状態BからAに自発的に変化するMF2(p395) ΔGsys>0のとき、系は状態AからBに自発的に変化するMF2(p395) また反応系のギブズ自由エネルギーが時刻変化しない場合は、その系は平衡状態にあるMF2(p395)。
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