総合芸術と青騎士
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/09 14:34 UTC 版)
芸術における通奏低音の探究を目指した青騎士においては、絵画や音楽といった個別的表現を超えた総合、統合が希求された。その意味で、ワーグナーの総合芸術観は、青騎士に多大な影響を及ぼしている。しかしワーグナーによる総合の原理は、個別の表現要素を外面的に結びつけて荘重な効果を狙うだけのものであった点に、諸芸術の枠を超えて魂の振動が共鳴しあうことを目指す青騎士の理念とは差異があった。カンディンスキーは『青騎士』を、音楽と色彩と舞踏とが共鳴しあう独自の舞台構想である『黄色い響き』で締めた。こうしてカンディンスキーは青騎士において、ワーグナーの外面的必然性に依拠する総合理念を乗り越えたのである。しかし舞台化の予定はあったものの、結局この作品はカンディンスキーの生前には上演されなかった。 芸術における諸分野の総合、という理念はその後のヨーロッパにおいて幾度も現れる。青騎士と同時代19世紀末のアール・ヌーヴォーやユーゲント・シュティルは美術と工芸、芸術家と職人のヒエラルヒーをなくそうとするものであり、またバウハウスの創立理念や、構成主義が提唱したデザインによる芸術と生活の融合もまた総合的である。その後もメゾン・キュビストたちや未来派、チューリヒおよびベルリン・ダダ、メルツバウといった諸運動にも総合的性格があるといえる。
※この「総合芸術と青騎士」の解説は、「青騎士」の解説の一部です。
「総合芸術と青騎士」を含む「青騎士」の記事については、「青騎士」の概要を参照ください。
- 総合芸術と青騎士のページへのリンク