系統と分類の問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/11/05 14:12 UTC 版)
この動物の分類上の位置については、現在も議論が多い。 その一つはこの動物が刺胞動物(それ以前には腔腸動物)に所属する、との判断である。文献でも表題に「Cnidarian Parasite(刺胞動物の寄生体)」を取ったものが数多くある。これはその形態からの判断であり、特に刺胞を持つことが重視され、古くから定説とされた。例えばLipinは1925年に鉢虫綱 Schyphozoaに含まれるとの判断を出し、あるいはBerrillは1950年に剛クラゲ目 Narcomedusaeの1つとの判断を示していた。他方で刺胞動物ではあるが独立の群、Polypodiozoa とする判断もあった。ただし自由生活の成体の形態を見ると、それは確かに刺胞動物らしく思われるものの、それがクラゲとポリプのどちらに当たるものかははっきりしない。この仮説は20世紀末になされた形態とリボソームRNAの塩基配列に基づく分岐分類的解析でも支持され、この動物は刺胞動物のクレードに収まった。ただしこのときの結果では明らかに刺胞動物ではないセンモウヒラムシもここに収まってしまい、問題があることも明かだった。 もう1つの仮説はこの動物が粘液胞子虫の姉妹群ではないか、というものである。粘液胞子虫とは魚介類に被害を与える病原微生物として発見され、古くは原生動物の胞子虫類とされた。特徴はその胞子に刺胞に似た長い糸の入った袋である極嚢を持つことであり、また単細胞の状態が生活の中心でありながら生殖細胞には複数細胞からなる構造を作る例がある。近年の分子系統から単細胞生物ではあるが後生動物が起源と考えられるようになったものである。この類とポリポジウムが姉妹群をなす、との判断は18s rRNA を用いた分子系統の研究から出された。ただしポリポジウムも粘液胞子虫も、いずれもが18s rRNA の塩基配列が通常より高い塩基置換率を持つことから、ロングブランチアトラクションによって正しい結果が得られない恐れが高いと複数者からの指摘がある。 現時点では刺胞動物に含まれるとする判断が支持されている。この動物が刺胞動物であるとすれば、唯一の細胞内寄生性の刺胞動物ということになる。
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